インディアン・スカウト ローグ(6MT)/トライアンフ・ロケット3 GT(6MT)/BMW R1250RS(6MT)
この週末は旅に出よう 2023.04.29 試乗記 アウトローの香り漂う「インディアン・スカウト ローグ」に、排気量2.5リッターのモンスター「トライアンフ・ロケット3」、ボクサーツインが旅情をかき立てる「BMW R1250RS」……。JAIA二輪輸入車試乗会で、個性豊かな3台のツアラーの魅力に触れた。週末に“不良”を楽しむ大人の相棒
インディアン・スカウト ローグ
語彙(ごい)の乏しさをさらすようだけど、今回のJAIA試乗会で乗ったモデルのなかで最もヤバいヤツだった。なにしろ車名の“ローグ(ROUGE)”が悪党だのゴロツキだのならず者だのを意味するってんだから、どうにもこうにもソッチ系だ。
2000年代に入り復活を遂げた、もうひとつのアメリカンモータサイクルがインディアン。そのラインナップのなかで4種を有するスカウト・グループに属する一台が、スカウト ローグだ。エンジンのヘッドカバーからマフラーに至るまでブラックアウト仕上げとなるのはこのローグのみで、なおかつ試乗したのはフューエルタンクまで真っ黒ともなれば、これほど完璧な世界観を演出したマシンは稀有(けう)と言っていい。
別の見方をすれば、カスタム感が強いのだ。あまりにも特定の嗜好(しこう)に偏っている。だから相当に個性の強い個人の所有物以外には見えなくなる。逆説的には、そこまでパーソナライズされたモデルを市販化したインディアンの思い切りのよさに、感動すら覚える。エンジンブロックの縁の地肌をあらわにするようなエッジ加工も、ヘッドカバーまでブラックにしたことで一層さえている。これ、本当にヤバい。
一方、見た目のワル感とは裏腹に、乗り心地というか操縦感覚は驚くほど素直だ。巨大なラジエーターを備えた水冷Vツインの1133ccエンジンは、95PSという十分なパワーを持ちながら、暴力性よりはスムーズネスが勝っている。そしてまた、直線番長っぽいロングホイールベースの車体ながら、おそらく街なかで乗っても過不足なく曲がれる、低重心からくる安定したハンドリング特性も持ち合わせているように感じた。ニヤッとなったのは、ミニエイプと呼ばれるハンドルバーのセッティングだ。身長175cmのテスターにちょうどよい高さにグリップがきて、「これってオレのため?」と勘違いしそうになった。
言葉を選ばずに言えば、乗りやすい。なのに見た目がヤバい悪党。もしあなたが宿敵との抗争から逃れる手段に1台の乗り物を選ぶなら、スカウト ローグほど劇的かつ頼れる相棒はいないかもしれない。ここでの宿敵は平日の退屈としようか。週末のみ不良を楽しむ分別ある大人に、ぜひ!
(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
ボクサーツインに誘われて
BMW R1250RS
乗る前から、よくも悪くも高をくくっている。「どうせいいんでしょー」と。ひがみ? そうかもしれない。さて、誰にとってかはひとまずわきに置いておいて、ハードウエアとしてのBMWはいつも高得点だ。しかもR1250RSはBMWのラインナップのなかでひときわ“影番”的だし、わかっている人がチョイスする選択肢としてほぼ間違いのない「RS」直系のヒストリーも、この一台が一身に背負っている。スポーツライドもロングライドも欲張るロードスターとしての立ち位置に、今も昔もブレはない。
……なーんて、ちょっと斜に構えて書き始めてしまった。早速またがったR1250RSは、遠くから見たときほど大きくは感じないし、ベッタリとはいかないものの両足もほぼ地面に届いている。ライディングポジションも強すぎない前傾で常識的だ。ありがたい。伝統のボクサーツインは搭載される新型モデルに乗るたびに「グラグラと車体を揺すっていたスロットルリアクションがこんなに小さくなっている!」と驚いてしまうが、しかし、前回乗ったときの記憶が薄くなっているだけじゃない? という指摘は半分くらい正しい。空冷ボクサーなんて今は昔(もう10年前!)。マルチシリンダーのエンジンと比べても遜色なく、今日の水平対向エンジンはシャープに吹け上がる。
初めて乗るボクサーツインがこのR1250RSだというライダーがいたとすれば、ややもすると「普通のパラレルツインとそんなに変わらないね」という本音が口をついてもそれはせんなきこと。ただし、である。乗車直後のその感想は、やがてハイスピードなロングライドを経て「ボクサーツインいいね!」にきっと変わる。今回はそこまで試せなかったが、R1250RSには驚くべき疲労の少なさと水平対向エンジンの回転フィールの心地よさ、そしてなにより優れた高速&峠道でのスポーツパフォーマンスが全部載せに違いない。潔癖症ぎみに網羅された多すぎる機能は、筆者にはちょっと使いきれなさそうだけど、このR1250RSに足りないものはほとんどないのだ。
R1250RSの公式ウェブサイトには「ハイウェイを俊足で駆けぬけるスポーツツアラー」という惹句(じゃっく)が掲げられている。ふーん、という感じである。でもリード文を読み続けると、ほらほらいいことが書いてあるじゃない。
「あなたのボクサーエンジンは、長旅であってもつかの間の走りであっても、いつでもあなた自身を前進させる原動力なのです。」
ボクサーエンジンのいわく言いがたい味。たとえて言うならそれは、「なんだか旅に出たくなっちゃう」味だ。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
根は優しくてマッチョマン
トライアンフ・ロケット3 GT
ひさしぶりの“ロケット”はかなり乗りやすくなっていて驚いた。前に乗ったのは、うーん、恥ずかしながら10年くらい前。車名もかつてはロケット3ではなく「ロケットIII」。排気量は2300ccだった。そして目の前にある現行型ロケット3の試乗車はなんと2500cc。200ccも増えてるじゃん! ダウンサイジングなんてクソくらえ、このペースでいくと、きたる未来の3型は2700ccのトリプルなのか。足し算にも程がある。好きだけど。
「2500ccもあるメガクルーザーをして『乗りやすいぜ』なんて、カッコつけんな」の声が天から聞こえてこなくもないが、それほどに筆者のライテクはたいしたことない。しかし、そんなヘタレライダーをして「イケるかも!?」と勘違いさせてくれたのが新しいロケット3だ。それは想像を超えてとっつきやすかった。
拷問ですか、精神修養ですかというくらいだった旧型の足つきだが、現行型では大幅にカイゼンされ、両足がしっかりと地面につくことで321kgを下半身で支えることができる。これがまず心理的に大きい。6種あるロケット3のラインナップは「GT」と「R」に大別できるが、こちらのGTはステップが前方にレイアウトされたフォワードコントロール仕様となっている。ワクワクドキドキでエンジンのスターターボタンを押すと、排気音は野太くも意外にサイレント。それでもスロットルを軽くあおれば股間の巨体がグラッグラッと右に傾き、これが“縦置き”のモンスターマシンであることをアピールしてくる。
ライディングモードは「ROAD」。ギアを慎重に1速に落として恐る恐るクラッチをつなぐと、巨体はスルッと走りだした。あまりの呆気(あっけ)なさは一瞬、一本で800ccを優に超える巨根ピストンのことを忘れてしまうほど。最初の関門をクリアしたものの、難所はすぐに訪れた。試乗コースのエンドにあるUターンだ。ハンドルヘビーなハーレーなどのツアラーモデルを思い出し身構えたが、素直でクセのないハンドリングでそこもすんなりとクリア。さらにギアはローのまま、怖いのを我慢してストレートでガバッとスロットルを開けたら……めちゃパワフルだけどダイジョウブじゃん! ヘビーウェイトと240/50R16の極太リアタイヤが、167PSをしっかりと受け止めてくれている。
2代目ロケットのしつけが行き届いていることに感動したショートライド。それでもまだまだ“この先”があるのでは……という底知れない畏怖(いふ)は拭えないが。さて、結論を言おう。ロケット3はなんとかなる。なんともならない、あの感じは過去のものだ。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
インディアン・スカウト ローグ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2274×995×1181mm
ホイールベース:1576mm
シート高:649mm
重量:250kg
エンジン:1133cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:95PS(70kW)
最大トルク:97N・m(9.9kgf・m)/5600rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:236万8000円~248万6000円
BMW R1250RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2200×790×1340mm
ホイールベース:1530mm
シート高:820mm
重量:252kg
エンジン:1254cc 空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:136PS(100kW)/7750rpm
最大トルク:143N・m(14.6kgf・m)/6250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:21.05km/リッター(WMTCモード)
価格:188万4000円~196万7000円
トライアンフ・ロケット3 GT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×920×1065mm
ホイールベース:1675mm
シート高:773mm
重量:318kg
エンジン:2458cc 水冷4ストローク直列3気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:167PS(123kW)/6000rpm
最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/4000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:7.1リッター/100km(約14.1km/リッター、欧州仕様参考値)
価格:289万5000円~295万5000円
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宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。

田村 十七男
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