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ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード(6MT)/アプリリアRS660リミテッドエディション(6MT)/モト・グッツィV100マンデッロS(6MT)

やっぱりイタリアが面白い! 2023.05.15 試乗記 宮崎 正行 軽快でスタイリッシュな「ドゥカティ・スクランブラー」に、全米選手権を制した「アプリリアRS660」、温故知新のハイテクツアラー「モト・グッツィV100マンデッロS」。JAIA二輪輸入車試乗会で、伝統と情熱が宿るイタリアンモーターサイクルの魅力に触れた。

難しく考えないで楽しもう!
ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード

恥ずかしながら、ただの一度も乗ったことがなかったのがドゥカティの現行スクランブラー。デビューの2015年からすでに8年。なぜなのかどうしてなのかオレがわるいのか、試乗のチャンスにまったく恵まれなかった。タイミングと言ってしまえばそれまでだけど、「ここまで来たらフン、意地でも乗ってやるもんか」と斜に構えたのもつかの間、今年のJAIA会場でいきなり引き合わされてしまったのである。得てして出会いとはそういうもの……なのか? 求めよさらば与えられんじゃないのか?

話をスクランブラーに戻そう。ざっくりアウトラインを記せばドゥカティが1960~70年代に生産していた同名モデルを意識しつつ、53年のときを経て新たなストリートバイクとして現代によみがえらせたのが実質第3世代となるスクランブラーシリーズだ。委細ははしょるが、ポップでコンパクトなボディーはいかにもとっつきやすそうで……なんだよ、やっぱりコレってオレ向きドゥカティじゃん(笑)。あまりに速すぎていかんともしがたい前傾必須マシンばかりが目立つドゥカティにあって、こっちを向いてくれている数少ない穏当なモデルのスクランブラーは想像していた以上に優しきナイスガイだった。

まず涙が出るほど足つきがいい。ちょっとだけステップが邪魔だけど、両足がベッタリと着地している。トラッカーらしさにあふれた幅広ハンドルは「100%フツーのバイクにはしませんよ、ドゥカティなので」というアピールを感じるし、むしろそのおかげで元気なイタリアンモトを操っているという自意識もしっかり高揚させてくれる。高めのハンドル位置と乾燥重量180kgが相まって取り回しも楽チン。ドゥカティ十八番の荒っぽいVツイン感はしっかりと丸められ、滑らかで扱いやすいフラットトルクの空冷L型2気筒エンジンには気難しいところはほとんどない。積載はそれほど期待できなさそうだけれども、スクランブラーの主戦場はロングライドよりもショートレンジ、街乗りやワンデーツーリングとなる気がする。

スクランブラーシリーズは派生モデルが多すぎて、それぞれのキャラの区切りを見つけるのが簡単じゃない。今回試乗した「アーバンモタード」に架装されるのはストリートっぽいグラフィック、前後17インチスポークホイール、ピレリ製の「ディアブロ ロッソ3」、そしてゼッケンプレート風サイドカバーなどなど。だけど、その立ち位置は正直言ってよく分からなかった。でもそれでいいじゃない。スタイリングとカラーリングが気に入れば総じてOK! そんな軽めのスタンスがスクランブラーらしさなのだから。

(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード
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ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード(6MT)/アプリリアRS660リミテッドエディション(6MT)/モト・グッツィV100マンデッロS(6MT)【試乗記】の画像拡大
 
ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード(6MT)/アプリリアRS660リミテッドエディション(6MT)/モト・グッツィV100マンデッロS(6MT)【試乗記】の画像拡大
 
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陽気で気安い七頭身美人
アプリリアRS660リミテッドエディション

さて、このクラスで2気筒のライバルたちはどのあたりの車種になるのか? 車名を挙げていけば「ヤマハYZF-R7」「カワサキ・ニンジャ650」……と、あれれ、これだけ? 意外と少ないな。R7もニンジャ650もシュッとしたシリアスな外装をまとっているけれど、一方このRS660だけがグッと陽気だ。いまどきのミドルクラスは大半のモデルが使い切れないほどの十二分なパフォーマンスを最初から持っているが、それでもリッタークラスのSS(スーパースポーツ)にまたがるときよりもずっと気構えが少なくて済む。九頭身美人が七頭身美人になってちょっとだけフレンドリーになった、そんな感じ?

「もっと激しく攻めて!」(責めてじゃないよ)と言っているような扇情的なフォルムはRS660も国産2車も同じだけど、ハンドルの上に手を置きタンクの上に伏せてみれば、それほど「ムリです」な感じがしないのは3車に共通しているところかもしれない。このあたりがミドルSSの矜持(きょうじ)なのか。身長172cmの筆者の両足はつま先立ちだけれども、スリムな車体のおかげか不安はさほどではない。上半身はギュッとコンパクトになる「いざサーキットへ」なファイティングポーズ、わるくないキブン。

1万0500回転で100PS。Vツインエンジンに似たサウンドを響かせる並列2気筒はめちゃくちゃパワフルだった。が、どうにもならないほどではないことがしんみりとうれしい。お互い打ち解けるには時間が足りなかったけれど、過敏すぎないハンドリングや減速しやすいコントローラブルなブレーキなど、“手だれ”でなくとも「なんとかなるかも」と思わせてくれるのはRS660の美点と言っていいはず。乾燥重量169kg。これもナイスだ。

アメリカ、2021年の国内選手権。初参戦したデビューイヤーにチャンピオンシップをとってしまったなかなかのツワモノがこのアプリリアRS660、ということらしい。知らなかった。メモリアルのための限定仕様としてリリースされたRS660リミテッドエディションのたたずまいを見て思う。スターズ&ストライプスのあけすけなグラフィックが自分に似合うかどうかはさておき、明るくスカッとしていて爽やかで、カッコいいぞ! なんの衒(てら)いもなくタバコメーカーのスポンサーカラーを身にまとった1980~90年代のレーサーレプリカたち。その“直情さ”がRS660の向こうに透けて見えたような気がした。そしてそれらが峠でフルバンクする様を懐かしく思い出しては、ニンマリするオジサンがここにいる。

(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

アプリリアRS660リミテッドエディション
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ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード(6MT)/アプリリアRS660リミテッドエディション(6MT)/モト・グッツィV100マンデッロS(6MT)【試乗記】の画像拡大
 
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意固地なヤツほど面白い
モト・グッツィV100マンデッロS

このV100マンデッロSのフォルムを見て、すぐさまかつての「ヤマハTDM」シリーズを思い出したあなたはきっとオーバーフォーティーズおじさん、もとい年かさのベテランライダーに違いない。そんなあなたのノスタルジーを誰が否定しようか! ここ大磯のJAIA会場で対面したモト・グッツィの新型スポーツツアラーには“らしくない”ほどのたくさんの最新装備が盛られていて、「がんばってるなあ」と筆者は……なぜかちょっとだけ上から目線(笑)。でもね、それでも車体の真ん中にうやうやしく収まっている縦置きVツインエンジンが発する「ブルンブルンッ」に、これこれ、コレだよね! の滋味を感じてしまったのは本心。

結論を言ってしまえばこのV100、モト・グッツィらしさと真っすぐに向き合っている旧来の最新モデルである。「旧来の最新って、なんじゃそりゃ?」の声が聞こえてくるし、偉そうに語れるほどたっぷり試乗できたわけではないけれど、それでもやっぱり唯一無二のいいバイクだなあと胸が震えたのである。

どこがステキか。上質感のある内外装類は実に大人っぽくて、色気あり。ヒカリモノに頼って高級そうに見せる手法ははなから捨てていて、他車ではなかなか見られない色味と質感のペイントがアップライトなフォルムを隅々まで包んでいる。モト・グッツィとしてはかつてないほどふんだんにマウントされたハイテク(!)装備にも感心した。この「S」にはセミアクティブサスペンションやクイックシフター、グリップヒーターなどが加えられている。一番面白かったのは標準モデルにも搭載されている「アダプティブエアロダイナミクス」というやつで、タンク両サイドに備えられた空力フラップが電子制御で自動開閉し、ライダーを風圧から守ってくれるのだ。そして最後はやっぱり水冷縦置きVツインエンジン。過去のどの空冷モデルよりも“左揺れ”は少なく感じるし、駆け出しの編集者だった自分が初めてインプレ記事を書いた「V11コッパイタリア」とは比較にならないほど乗りやすくなっていて隔世の感がある。233kgの車体はちょっと重いけれど、クラッチは驚くほど軽くなっていた。そしてなにより、親しみやすい。シチュエーションを選ばないオールラウンダーに仕上げられていた。

そうそう。モト・グッツィ社は一昨年の2021年に創業100周年を迎えたという。イタリアンブランドといえばドゥカティの名をまず挙げる人は多いだろう。でもね、筆者はモト・グッツィのほうがよりイタリアらしいと感じてしまう。なぜだろう。それはたぶん、意固地なところ。パンテオンもコロッセオもざっくり2000年モノ。執着しないと持ちませんぜ、2000年。意固地万歳、縦置きバンザイ!

(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

モト・グッツィV100マンデッロS
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ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード
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テスト車のデータ

ドゥカティ・スクランブラー アーバンモタード

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1436mm
シート高:805mm
重量:180kg(乾燥重量)
エンジン:803cc 空冷4ストロークV型2気筒SOHC 2バルブ(1気筒あたり)
最高出力:73PS(53.6kW)/8250rpm
最大トルク:66.2N・m(6.8kgf・m)/5750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.2リッター/100km(約19.2km/リッター、WMTCモード)
価格:142万9000円

アプリリアRS660リミテッドエディション
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アプリリアRS660リミテッドエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1995×745×--mm
ホイールベース:1370mm
シート高:820mm
重量:169kg(乾燥重量)
エンジン:659cc 水冷4ストローク直列2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:100PS(73.5kW)/1万0500rpm
最大トルク:67N・m(6.83kgf・m)/8500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:165万円

モト・グッツィV100マンデッロS
モト・グッツィV100マンデッロS拡大
 
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モト・グッツィV100マンデッロS

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1475mm
シート高:815mm
重量:233kg
エンジン:1042cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:105HP(78.3kW)/8700rpm
最大トルク:105N・m(10.7kgf・m)/6750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:264万円

 
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宮崎 正行

宮崎 正行

1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。

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