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BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ(FF/7AT)/メルセデス・ベンツB180(FF/7AT)

主戦場ではないけれど 2023.06.16 試乗記 鈴木 真人 「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」と「メルセデス・ベンツBクラス」は、どちらのブランド内でも珍しい、ファミリーユースに軸足を置いた背高なハッチバックだ。それぞれの最新モデルを連れ出し、走りや使い勝手を比べてみた。
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コレジャナイ対決

ドイツのプレミアムブランドが誇る2台の対決である。メルセデス・ベンツとBMWは、日本でも圧倒的な人気のブランドだ。ともに長い歴史があり、好敵手として互いを認め合っている。高級セダンのジャンルで覇権を争い、多くの自動車ファンから熱い支持を受けてきた。今回は、メルセデス・ベンツから「B180」、BMWから「218iアクティブツアラー」をセレクトし、徹底比較しようという趣向である。

コレジャナイ、と言いたくなるのは分からないでもない。期待されているのは「Sクラス」VS「7シリーズ」や「GLC」VS「X3」といった組み合わせだろう。どちらのブランドもFRのセダンに強みを持っていることでプレミアム性をアピールしてきたし、SUVでも着実に実績を残してきた。Bクラスと2シリーズは、FFのコンパクトなハッチバックである。メインストリームとは言い難いのだ。

FR専業と目されていたメルセデス・ベンツが、初のFFモデルを世に問うたのは1997年。「Aクラス」である。当初はエルクテストで転倒のおそれがあると指摘されるなど、経験不足が露呈した。しかし、そこはメルセデス、全力で技術開発を進めてクオリティーを向上させ、世界的に好評を博すようになる。派生モデルとして2005年に登場したのがBクラスだ。最初はホイールベースを伸ばして室内空間を広くしていたが、現モデルでは同寸である。スポーティーさを強調するAクラスに対し、全高を上げて使い勝手に配慮しているのがBクラスという図式だ。

BMW 2シリーズはFRの「クーペ」が先に登場したが、2014年に追加されたアクティブツアラーはまったく異なるプラットフォームを採用した。BMWとしては初となるFFモデルである。とはいえ、BMWは2001年からMINIブランドでFFのメカニズムを手がけており、アクティブツアラーにもその経験が生かされている。

「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」と「メルセデス・ベンツBクラス」を比較。どちらもブランド内では少数派のFFモデルであり、ユーティリティー性を重視した背の高いハッチバックスタイルだ。
「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」と「メルセデス・ベンツBクラス」を比較。どちらもブランド内では少数派のFFモデルであり、ユーティリティー性を重視した背の高いハッチバックスタイルだ。拡大
「メルセデス・ベンツBクラス」はマイナーチェンジされた最新モデルが2023年2月に日本上陸。今回の試乗車は1.3リッター直4ガソリンターボエンジンを搭載した「B180」。
「メルセデス・ベンツBクラス」はマイナーチェンジされた最新モデルが2023年2月に日本上陸。今回の試乗車は1.3リッター直4ガソリンターボエンジンを搭載した「B180」。拡大
「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」は2代目となる新型が2022年6月に日本でも発売に。今回の試乗車は1.5リッター直3ターボエンジンを搭載した「218i Mスポーツ」。
「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」は2代目となる新型が2022年6月に日本でも発売に。今回の試乗車は1.5リッター直3ターボエンジンを搭載した「218i Mスポーツ」。拡大
オプションも含めた総額は「B180」が586万3000円で「218i Mスポーツ」が549万円。まさにがっぷり四つの構えである。
オプションも含めた総額は「B180」が586万3000円で「218i Mスポーツ」が549万円。まさにがっぷり四つの構えである。拡大
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似たようなサイズ感とパワーユニット

試乗車2台を並べてみると、サイズ感やたたずまいがよく似ていることが分かる。ディメンションの数字も近く、全長とホイールベースではB180が、全幅と全高では218iが少しだけ上回る。B180は「ローワードコンフォートサスペンション」の装着によって15mm車高が下げられ、立体駐車場の利用も可能になっている。エンジンは218iが1.5リッターターボで最高出力は156PS、B180は1.3リッターターボで136PS。ただ、218iは3気筒だがB180は4気筒である。トランスミッションはともに7段だ。

似た者同士の2台から、まずはB180を選んだ。現行モデルは2019年に登場した3代目で、2023年2月にマイナーチェンジを受けている。外観では、フロントグリルやバンパー、ライトなどのデザインが変更された。試乗車には「AMGラインパッケージ」のオプションが付いていて、「スターパターンフロントグリル」が採用されている。ドットではなく小さなスリーポインテッドスターによって構成されていて、オーナーのプライドをくすぐる意匠なのだろう。

内装ではセンターコンソールのタッチパッドがなくなっている。代わりにステアリングホイールに備えられたタッチセンサーによって操作する仕組みだ。ダッシュボードやドアトリムに使われている素材はしっとりとしていて、優雅な空気感がある。仕込まれたアンビエントライトがエモーショナルだ。

ただ、昼間はよかったのだが、夜になると紫色の妖しい光が過剰にアダルトな印象になる。前に乗った誰かの仕業だろう。タッチパネルでカラー設定のパートを見つけてノーマルな色に戻すのに無駄な苦労を強いられた。

全長×全幅×全高は「B180」が4430×1795×1550mmで「218i Mスポーツ」が4385×1825×1565mm。B180はオプションの「AMGラインパッケージ」に含まれる「ローワードコンフォートサスペンション」によって一般的な機械式駐車場が利用可能な全高に収まっている(標準は1565mm)。
全長×全幅×全高は「B180」が4430×1795×1550mmで「218i Mスポーツ」が4385×1825×1565mm。B180はオプションの「AMGラインパッケージ」に含まれる「ローワードコンフォートサスペンション」によって一般的な機械式駐車場が利用可能な全高に収まっている(標準は1565mm)。拡大
スエード調素材を多用した「B180」のインテリアは、地味なカラーリングながら優雅な雰囲気がある。着座位置が高く前方視界は良好。
スエード調素材を多用した「B180」のインテリアは、地味なカラーリングながら優雅な雰囲気がある。着座位置が高く前方視界は良好。拡大
メーターパネルのテーマは「スポーティー」や「クラシック」などをラインナップ。ステアリングスイッチで簡単に設定できる。
メーターパネルのテーマは「スポーティー」や「クラシック」などをラインナップ。ステアリングスイッチで簡単に設定できる。拡大
シフトセレクターはステアリングコラムの右側に生えている。前進と後退を繰り返す駐車時などに持ち替えが少ないというメリットがある。
シフトセレクターはステアリングコラムの右側に生えている。前進と後退を繰り返す駐車時などに持ち替えが少ないというメリットがある。拡大

十分なパワーと巧みな演出

運転席に座ると、カーボン調の素材をあしらったダッシュボードとシルバー加飾がスポーティーな気分を盛り上げる。ステッチを施されたソフトパッドと組み合わされているので、ほどよいバランスが保たれているのが上品だ。センターコンソールが思いのほか高くなっているのは、下部にサブバッテリーが収納されているからだという。

2枚の横長液晶パネルが目の前に広がっているのは、最近ではよく見る光景だ。ドライブモードの設定で、メーターの色やデザインが変わるようになっている。デフォルトは「コンフォート」で、そのまま走りだした。1.3リッターという排気量から想像するより、力強く加速していく。このエンジンを搭載したクルマに、最近試乗したことがあった。「ルノー・カングー」である。ルノー・日産・三菱アライアンスとダイムラーによって共同開発されたエンジンなのだ。

カングーよりも少しだけハイチューンになっていて、軽量ボディーには十分以上のパワーを供給する。低速でのコントロールはしやすく、実用性を重視した設定になっているようだ。車内は静かではあるが、エンジン音が聞こえないわけではない。ボンネット裏にはインシュレーターがなかったのだが、エンジンの存在感を完全には隠さないようにしているのだろうか。

音が大きいのは、パワーの演出であるようにも感じた。ドライブモードを「パワー」に切り替えると、それがよく分かる。野太いサウンドが響いてきて、大排気量のクルマに乗っていると錯覚してしまいそうだ。演出は音だけであり、実際には強烈なパワーが得られるわけではない。高速道路での追い越しでは必要な加速力を発揮するが、それ以上ではなかった。主観的な満足を得られることが大切であり、安全性が優先されている。

エンジンの最高出力は「B180」が136PSで「218i Mスポーツ」が156PS。どちらも必要十分な加速力を生み出す。
エンジンの最高出力は「B180」が136PSで「218i Mスポーツ」が156PS。どちらも必要十分な加速力を生み出す。拡大
「B180」のシートはオプションの「AMGラインパッケージ」に含まれるレザーとスエード調素材のスポーツシート。座面も背もたれもたっぷりとしている。
「B180」のシートはオプションの「AMGラインパッケージ」に含まれるレザーとスエード調素材のスポーツシート。座面も背もたれもたっぷりとしている。拡大
後席の足元はご覧のとおりに広々としている。前席の着座位置が高いため、シートの下につま先どころか足首まで入る。
後席の足元はご覧のとおりに広々としている。前席の着座位置が高いため、シートの下につま先どころか足首まで入る。拡大
後席用のUSBポートは1つのみ。前席用には3つが備わっている(すべてタイプC)。
後席用のUSBポートは1つのみ。前席用には3つが備わっている(すべてタイプC)。拡大

充実した先進機能

「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」がアップデートされていることもマイナーチェンジのポイントだ。ステアリングホイールのタッチスイッチを使い、メーターパネルのデザインやアンビエントライトのカラー、車両コンディションなどの設定を行える。もちろん、「ハイ、メルセデス」と呼びかけて音声コントロールすることもできる。

ナビゲーションシステムでは「MBUX AR(Augmented Reality=拡張現実)」を採用。カメラで撮影された映像がリアルタイムにナビゲーション画面に映し出され、直感的に進む方向を把握できるのだ。短い試乗ではすべての機能を試すことはできなかったが、オーナーになれば最新システムの利便性を存分に利用できるだろう。当然ながら、安全運転支援システムも充実していて、マルチパーパスカメラとレーダーセンサーがまわりの状況を認識し、適切なアシストを行ってくれる。

ハンドリングは穏やかで確実なフィールで、過敏な動きに悩まされるようなことはない。意外だったのは乗り心地で、ファミリーカーとして使うには硬めの設定だった。不快な衝撃というほどではないが、段差を乗り越える際にはコツンと突き上げるような動きもある。ドライバーはさほど気にならなくても、後席の乗員からは文句が出るかもしれない。

218iに乗り換えると、やはり似たようなサイズ感で着座位置もあまり変わらない。メーターパネルが横長液晶パネル2枚で構成されているのも同じで、これがトレンドなのが分かる。同じジャンルなのでいろいろな面で共通点があるのは自然なのだが、乗っていると多くの相違点に気づかされることになった。

(後編に続く)

(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

マイナーチェンジによって「MBUX」も最新バージョンにアップデート。各種の設定画面を呼び出しても画面がいちいち切り替わらず、マップ表示の上にウィンドウが重なるようになった。
マイナーチェンジによって「MBUX」も最新バージョンにアップデート。各種の設定画面を呼び出しても画面がいちいち切り替わらず、マップ表示の上にウィンドウが重なるようになった。拡大
改良前はタッチパッドが備わっていた部分は小物用のトレーに置き換わっている。ただしへりが低いため置くものを選ぶ。
改良前はタッチパッドが備わっていた部分は小物用のトレーに置き換わっている。ただしへりが低いため置くものを選ぶ。拡大
荷室の容量は455リッターで、後席の背もたれは40:20:40の3分割式。デッキボードはもっと下でも固定できる。
荷室の容量は455リッターで、後席の背もたれは40:20:40の3分割式。デッキボードはもっと下でも固定できる。拡大
後席の背もたれをすべて倒したときの荷室容量は1540リッター。床面は見事なまでにフラットになる。
後席の背もたれをすべて倒したときの荷室容量は1540リッター。床面は見事なまでにフラットになる。拡大
BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ
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BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ/メルセデス・ベンツB180(前編)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1825×1565mm
ホイールベース:2670mm
車重:1530kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:156PS(115kW)/5000rpm
最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1500-4600rpm
タイヤ:(前)205/60R17 97W/(後)205/60R17 97W(ハンコック・ヴェンタス プライム3)
燃費:14.1km/リッター(WLTCモード)
価格:447万円/テスト車:549万円
オプション装備:ボディーカラー<ストームベイ>(16万円)/ヴァーネスカレザー<オイスター/ブラック>(0円)/テクノロジーパッケージ(41万円)/ハイラインパッケージ(27万9000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(17万1000円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1920km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:324.6km
使用燃料:30.4リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:10.7km/リッター(車載燃費計計測値)/11.5km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデス・ベンツB180
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BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ/メルセデス・ベンツB180(前編)【試乗記】の画像拡大

メルセデス・ベンツB180

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4430×1795×1550mm
ホイールベース:2730mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/1460-4000rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:14.9km/リッター(WLTCモード)
価格:537万円/テスト車=586万3000円
オプション装備:メタリックカラー<イリジウムシルバー>(9万5000円)/AMGラインパッケージ(39万8000円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:804km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:460.2km
使用燃料:33.7リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:13.7km/リッター(車載燃費計計測値)/13.7km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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