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レクサスLBX“リラックス” プロトタイプ(FF/CVT)

期待の新星 2023.09.20 試乗記 渡辺 敏史 レクサスから間もなく登場するプレミアムコンパクトSUV「LBX」。高級車の概念を変える、ヒエラルキーの枠を超えた一台として開発が進められたニューモデルは、うたい文句にたがわぬ仕上がりとなっているのか? プロトタイプの試乗を通して確かめた。
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ライバルの隙を突く

2023年6月に伊ミラノで発表(参照)されたLBXは、レクサスとしては初となるBセグメント系の車台をベースとするモデルだ。ちなみに、ドイツ御三家系でBセグメントベースのコンパクトモデルを手がけるのは、「A1」と「Q2」を擁するアウディのみだが、それも台数的には物足りず、欧州のメディアではディスコンかとささやかれてもいる。

「えーっ、『SQ2』とかひそかにいいクルマなんだけどなぁ」と思うわけだが、パワートレインの変革やソフトウエアディファインドへの対応、ADASの適合など、市販車を取り巻く環境が激変しつつあるなか、プレミアムを標榜(ひょうぼう)するブランドにとって利ざやが小さいコンパクトカーで品質を追求しながら稼ぎを出すことが難しくなりつつあるのも、理解できない話ではない。同様にメルセデス・ベンツやBMWのCセグメントラインナップ縮小化を巡るうわさも聞こえるなか、レクサスはあえてそこで勝負に打って出るわけだ。

その意気込みを込め、「Lexus Breakthrough X-over」の略号としてLBXと名づけられたこのモデルのアーキテクチャーは「GA-B」。端的に言えば、ホイールベースは「トヨタ・ヤリス クロス」と同じで、全長・全高もほど近い。しかし、前後のトレッドは遠慮なく拡幅されており、全幅は60mm広い1825mmに達している。タイヤサイズも別設定で、同じ18インチで比べれば、LBXはヤリス クロスに対して10mm幅広かつ、実に30mm余りも外径が大きいタイヤを履く。現時点で最低地上高は不明だが、多少の悪路はものともしない走破性に寄与しているものと思われる。一方で、クルマの体積は確実に増すわけで、Bセグメント級のアーキテクチャーがそれをどう受け止めるかは興味深い。

ヒエラルキーを超えたクルマを標榜して開発された、レクサスの新型コンパクトSUV「LBX」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4190×1825×1560mmとショート&ワイドで、とにかく抑揚のあるデザインが目を引く。
ヒエラルキーを超えたクルマを標榜して開発された、レクサスの新型コンパクトSUV「LBX」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4190×1825×1560mmとショート&ワイドで、とにかく抑揚のあるデザインが目を引く。拡大
インテリアについては、水平基調のシンプルなインストゥルメントパネルによって開けた視界を確保。内装の仕立ては、5つのグレードに応じて大きく異なる。写真は「落ち着きと華やかさを両立する」という「リラックス」のもの。
インテリアについては、水平基調のシンプルなインストゥルメントパネルによって開けた視界を確保。内装の仕立ては、5つのグレードに応じて大きく異なる。写真は「落ち着きと華やかさを両立する」という「リラックス」のもの。拡大
ボディーカラーは写真の「ディープアズールマイカメタリック」を含む全9色。「ブラックマイカ」を除く全色に、ルーフを黒で塗り分けるバイトーンカラーも用意される。
ボディーカラーは写真の「ディープアズールマイカメタリック」を含む全9色。「ブラックマイカ」を除く全色に、ルーフを黒で塗り分けるバイトーンカラーも用意される。拡大
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クラスを超えた大胆な造形

今回のLBXの試乗記は、「LEXUS SHOWCASE」と銘打ったメディア向けイベントで得ることができた、短時間の取材機会をもとにしている。なおかつクローズドコースでの試乗ゆえ、特に乗り心地面ではわかりかねるところも多かった。レクサスとしては、新聞やテレビなど、多くのメディアに自らの短期的ビジョンを発信するのが目的のイベントゆえ、車両もプロトタイプかつ厳密な試乗とは捉えないでほしいというスタンスでもある。われわれも納得したうえでの取材ゆえ、車両の詳報や試乗の感触など、個人的な見解が入るところもあるがご容赦いただきたい。

LBXの三寸は発表値で全長×全幅×全高=4190×1825×1560mm。前述のとおり、幅広なヤリス クロスというディメンションだが、エクステリアはそういう面影をみじんも感じさせないほど、強い抑揚が側面を覆っている。前後フェンダーの肉感的な表情は、生産技術部門も巻き込んで意匠チームが我を押し込んだ、その産物だという。好みはさておき、素直にレクサスらしさを感じさせるデザインだ。

一方、今回のLEXUS SHOWCASEでは今後登場する「LM」や「GX」などにも触れることができたが、共通してちょっと気になったのは塗装の品質だ。想定されるライバルブランドに対しては、まったく見劣りしないと断言できるが、「LS」や「LC」のような圧倒的オーラを感じるほどでもない。LMは形状的にコントラストの強弱が弱く“ゆず肌”が目立ちやすいとか、コンパクトカーのLBXでどこまでそれにこだわるかというおのおのの課題もあるだろうが、レクサスといえば塗装品質というイメージも強いわけで、ユーザーをうならせる手間や工夫がもうひと声欲しいところだ。

レクサスの新しいフロントフェイス「ユニファイドスピンドル」が用いられた「LBX」。この意匠は、北米専売モデル「TX」など、レクサスの各最新モデルに取り入れられている。
レクサスの新しいフロントフェイス「ユニファイドスピンドル」が用いられた「LBX」。この意匠は、北米専売モデル「TX」など、レクサスの各最新モデルに取り入れられている。拡大
エクステリアは、タイヤの存在感を感じさせるフェンダーの張り出しと、切り詰められたオーバーハング、コンパクトなキャビンなどが特徴。リアから見ると、ワイドなスタンスが重心の低さを強調している。
エクステリアは、タイヤの存在感を感じさせるフェンダーの張り出しと、切り詰められたオーバーハング、コンパクトなキャビンなどが特徴。リアから見ると、ワイドなスタンスが重心の低さを強調している。拡大
タイヤサイズは225/60R17と225/55R18の2種類。試乗車のタイヤサイズは後者で、安定した操作性や快適な乗り心地、高い耐摩耗性と耐ハイドロプレーニング性能がうたわれる「ヨコハマ・アドバンV61」が装着されていた。
タイヤサイズは225/60R17と225/55R18の2種類。試乗車のタイヤサイズは後者で、安定した操作性や快適な乗り心地、高い耐摩耗性と耐ハイドロプレーニング性能がうたわれる「ヨコハマ・アドバンV61」が装着されていた。拡大
ラゲッジスペースは深底で、外観から想像するより広い印象。関係者いわく「小型のスーツケースなら6個積むことができる」という。
ラゲッジスペースは深底で、外観から想像するより広い印象。関係者いわく「小型のスーツケースなら6個積むことができる」という。拡大

インテリアの質感も静粛性も合格点

LBXに搭載されるパワートレインは、現状「M15A-FXE」型の1.5リッター3気筒エンジンをベースとするハイブリッドのみが公表されている。使用するバッテリーはバイポーラ型ニッケル水素というから、構成としては「トヨタ・アクア」が最も近いだろうか。走らせても、大電流の出し入れが得意でモーターの稼働域が広いというアクアの特徴は受け継ぎながら、高負荷でのエンジン稼働時のノイズや微振はしっかり抑えて上質感を高めている印象だった。物理的な遮音はもちろん、各骨格部位の高剛性化やマウント類のチューニングなどが決め手となっているのだろう。3気筒の独特な音質は評価が分かれるだろうが、パワートレインのフィーリングはレクサスに期待されるクオリティーには達しているように思える。そしてヤリスやアクアの実力を知るに、燃費は世界のトップランナーだと思っていいはずだ。

5つのテーマにそって、ファブリックからレザーまでテキスタイルを使い分けるインテリアは、価格のわからない現状では断ずることははばかられるが、Bセグメント級という定規で測るなら、しつらえの入念さや質感は破格だと思う。LBXはビスポーク的なコンフィギュレーションも売りにしていて、表皮やステッチ、シートベルトやトリム加飾など、約33万通りのバリエーションから自分だけの仕様を組み上げられるというオプションが用意されている。が、それも建て付けやはめ込みなどの基本的な質感が低ければ、元も子もない。そういう点でみても、LBXの内装は合格点を与えられる。

パワーユニットには1.5リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドを採用。登降坂やコーナーを読み取って加速・減速トルクを制御し、スムーズな走りをアシストする。
パワーユニットには1.5リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドを採用。登降坂やコーナーを読み取って加速・減速トルクを制御し、スムーズな走りをアシストする。拡大
シートにはグレードに応じて、ファブリックや合皮、ウルトラスエードと本革のコンビ等、複数の表皮を用意。試乗車の「リラックス」には、セミアニリン加工の本革が用いられていた。
シートにはグレードに応じて、ファブリックや合皮、ウルトラスエードと本革のコンビ等、複数の表皮を用意。試乗車の「リラックス」には、セミアニリン加工の本革が用いられていた。拡大
後席のスペースは必要十分といった印象。シートバックは6:4の分割可倒式。前席センターコンソールの背面には、2つのUSBポートが備わっていた。
後席のスペースは必要十分といった印象。シートバックは6:4の分割可倒式。前席センターコンソールの背面には、2つのUSBポートが備わっていた。拡大

「F」シリーズの設定にも期待したい

富士スピードウェイのショートサーキットを3周という限られた状況での、味見程度の感想にはなってしまうが、印象的だったのがボディー剛性の高さとバネ下まわりの支持の高精度ぶりだ。ヤリス クロスよりさらにひとまわり大きなタイヤを持て余さずスキッと転がしながら、ゼブラの凹凸でもバタつかせることなくピタッと追従させる。連続入力をものともしないあたりは構造見直しや材料置換、部位補強などによって得られた、ハコのかっちりした仕上がりによるものだろう。それとともに、軸ブレなく芯がきれいにそろった足まわりの精度が、動的質感にしっかり結びついていた。試乗車はトーションビームの後ろ脚を持つFFだったが、リアアクスルをモーター駆動する4WD「E-Four」の場合は独立サスとなるため、一段としなやかな動きが期待できそうだ。

旋回側の動きは、レクサスとしてはややアジリティーが強く押し出されている感もあったが、コンパクトカーの素性を肯定的に表現しようというのなら、こういうセッティングにもなるかなという許容範囲内だろう。車台的には「GRヤリス」の「G16E-GTS」エンジンの搭載も可能なわけで、それこそアウディSQ2ではないけれど、そういう方向への夢想も膨らまないわけではない。少なくともそういう素地(そじ)は整っているようにうかがえた。

(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

「クール」グレードのステアリングホイール。運転に関連する操作インターフェイスには、ステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイを連動させ、運転中の視点移動を抑えつつナビやオーディオなどの操作を可能とする「Tazuna Concept」が用いられている。
「クール」グレードのステアリングホイール。運転に関連する操作インターフェイスには、ステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイを連動させ、運転中の視点移動を抑えつつナビやオーディオなどの操作を可能とする「Tazuna Concept」が用いられている。拡大
「LBX」のアクセル/ブレーキペダル。「GA-B」プラットフォームを用いる他のモデルでは、アクセルペダルがつり下げ式となっているのに対し、LBXではオルガン式につくり変えられている。
「LBX」のアクセル/ブレーキペダル。「GA-B」プラットフォームを用いる他のモデルでは、アクセルペダルがつり下げ式となっているのに対し、LBXではオルガン式につくり変えられている。拡大
サーキット走行で確かな走りのよさを感じさせた「レクサスLBX」。まだ発売前のモデルだが、早くも「F」シリーズの設定など、先の展開が楽しみになってしまった。
サーキット走行で確かな走りのよさを感じさせた「レクサスLBX」。まだ発売前のモデルだが、早くも「F」シリーズの設定など、先の展開が楽しみになってしまった。拡大
レクサスLBX プロトタイプ
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レクサスLBX“リラックス” プロトタイプ(FF/CVT)【試乗記】の画像拡大
 
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テスト車のデータ

レクサスLBX“リラックス” プロトタイプ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1825×1560mm
ホイールベース:2580mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:--
トランスミッション:CVT
最高出力:--PS(--kW)/--rpm
最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ヨコハマ・アドバンV61)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:572km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(--)
参考燃費:--km/リッター

 
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渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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