名前が変わっただけじゃない! 新しい「MINIカントリーマン」に注目せよ
2023.12.11 デイリーコラムそもそもマニア向けじゃない
これまで「MINIクロスオーバー」として販売されてきたMINIブランドのSUVが、3代目へのモデルチェンジを機に、日本国内でも海外同様「MINIカントリーマン」に車名変更のうえ発表された(発売は2024年第1四半期)。
初代MINIクロスオーバーの発売は、13年ほど前のこと。当時は、「MINIシリーズ過去最大のサイズがもたらす居住性や実用性の高さが見どころ」とされていただけでなく、MINIブランドとして初の4ドア車であり、初の4WD設定車でもあった。それらの要素は現在はもう、MINIブランドにとってかなり普通のものになっているのだから、クロスオーバーの功績大なり。
“クロスオーバー”という車名は、国内での商標登録の関係で決まったものだが、オリジナルの“カントリーマン”のほうが、マシュマロマンみたいで親しみが湧きませんか? MINIというブランドはオシャレゆえ、どこか気取ったイメージがあるが、カントリーマンは「私は気取ってませんヨ~!」と言ってるみたいで好感が持てる。
そもそも、従来のMINIクロスオーバーは、ディープなクルマ好きにはあまり食指が動くタイプではなかった。マニアは保守的ゆえにオリジナルにこだわる。通常のMINI(ハッチバック系)ですら元祖から見たらメタボなのに、クロスオーバーは「こんなのぜんぜんMINIじゃないだろ!」となってしまった。結果、MINIクロスオーバーというクルマは、「MINIブランドが好きだけど、普通のMINIは狭すぎて、ファミリーカーとして使えないから」と割り切れる、こだわり薄めの層が購入していた……ような気がする。
“脱MINI”こそがポイント
MINIは6年連続で、輸入車の車名別販売台数第1位に輝いているが、これは一般層も買うからこそであり、本物のMINIファンは主に3ドア(ハッチバック)を買っているはず。それで狭ければ国産ミニバン等を買い足すというのが正しい姿勢で、クロスオーバーは邪道だった(私見です)。
ところが新型MINIカントリーマンの画像を見ると、従来のMINIのデザインから適度に離れているので、マニアでもイケそうな気がする。MINIとは別のクルマになっていれば、デカくても、デブでも許せる。
具体的には、まずヘッドライトがよりカクカクした形になった。MINIといえば丸目が基本だから、これだけで大きな変化だ。フォルムはキープコンセプトだが、全体に直線基調になり、こちらも従来のイメージから微妙に脱却。「MINIの気配が残るSUV」に仕上がっている。それでいてリアの気品ある丸みには、ロールス・ロイスやレンジローバーなどの英国貴族の香りも漂い、小さな高級SUVの風格アリだ。
ボディーサイズは先代よりさらに若干拡大されたが、MINIとは別のクルマならもう文句をつける筋合いはない。ついでにリアマルチリンクサスを簡素化して、後席やラゲッジルームをもっと拡大してくれたらなおよかった、というのは個人的な意見です。
いずれはこれが主役になる!
今回日本で発表されたのはカントリーマンだけだが、本国では本家のハッチバックもフルモデルチェンジを受け、EVモデルのみが発表されている。しかし日本ではEVの販売はまだ低調。そこで本家のモデルチェンジは先送りされ、内燃エンジンが先行追加されたカントリーマンが、単独で発表されたという流れだ。
今や欧州ではSUVの販売比率が約5割。日本同様、室内に余裕があるクルマが求められている。MINIブランドではまだハッチバック優勢だが、いずれはカントリーマンが主役になるだろう。将来の主役がいつまでもMINIの傍流じゃいけない。今回のデザインイメージ変更は、カントリーマンに独立したモデルとしての地位を確立させよう! という狙いではないだろうか?
パワーユニットは1.5リッター直3ターボ(最高出力156PS)、2リッター直4ディーゼルターボ(同150PS)、2リッター直4ターボ(同204PS)、2リッター直4ターボ(同317PS)の4種類。1.5リッターを除き、ベースとなった「BMW X1」と同じラインナップで、従来と比べると190PSディーゼルターボが抜けて204PSのガソリンターボが加わっている。
MINIは2030年代初めまでにEV専業ブランドとなることを宣言しており、内燃エンジンに特に目新しさはないが、MINIとして初めてのハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能搭載や、車載カメラを使用した全方向記録可能なドライブレコーダーの標準装備など、時代に合わせて先進機能を進化させた点が、メカ的なキモだろう。
(文=清水草一/写真=BMW/編集=関 顕也)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」 2025.12.19 欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。
-
次期型はあるんですか? 「三菱デリカD:5」の未来を開発責任者に聞いた 2025.12.18 デビューから19年がたとうとしている「三菱デリカD:5」が、またしても一部改良。三菱のご長寿モデルは、このまま延命措置を繰り返してフェードアウトしていくのか? それともちゃんと次期型は存在するのか? 開発責任者に話を聞いた。
-
人気なのになぜ? 「アルピーヌA110」が生産終了になる不思議 2025.12.17 現行型「アルピーヌA110」のモデルライフが間もなく終わる。(比較的)手ごろな価格やあつかいやすいサイズ&パワーなどで愛され、このカテゴリーとして人気の部類に入るはずだが、生産が終わってしまうのはなぜだろうか。
-
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか? 2025.12.15 2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。
-
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ 2025.12.12 日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。
-
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
NEW
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。 -
NEW
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」
2025.12.19デイリーコラム欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。 -
NEW
第856回:「断トツ」の氷上性能が進化 冬の北海道でブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」を試す
2025.12.19エディターから一言2025年7月に登場したブリヂストンの「ブリザックWZ-1」は、降雪地域で圧倒的な支持を得てきた「VRX3」の後継となるプレミアムスタッドレスタイヤ。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて進化したその実力を確かめるべく、冬の北海道・旭川に飛んだ。 -
次期型はあるんですか? 「三菱デリカD:5」の未来を開発責任者に聞いた
2025.12.18デイリーコラムデビューから19年がたとうとしている「三菱デリカD:5」が、またしても一部改良。三菱のご長寿モデルは、このまま延命措置を繰り返してフェードアウトしていくのか? それともちゃんと次期型は存在するのか? 開発責任者に話を聞いた。












