メルセデス・ベンツGLC350e 4MATICスポーツ エディションスター(4WD/9AT)
三刀流でいこう! 2024.01.29 試乗記 2代目「メルセデス・ベンツGLC」にプラグインハイブリッド車(PHEV)の「GLC350e 4MATICスポーツ エディションスター」が登場。たまたま(でもないが)取材に同行した新型「GLCクーペ」(2リッターディーゼル)との比較を交えた試乗インプレッションをお届けする。それでスポーツのスターといえるのか?
メルセデス・ベンツが2023年の暮れに発売した新型GLCのPHEVは先代と比べて大幅な性能アップを果たしている。第1はEV走行換算距離だ。先代の46.8km(初期型は30.1kmだった)から新型では118kmへと、およそ2.5倍に伸びている。リチウムイオン電池の容量を先代の13.5kWh(初期型は8.31kWh)から31.2kWhへと、2倍以上に増やしているのだ。これにより、新型GLCのPHEV、正式名GLC350e 4MATICスポーツ エディションスターは、日常的な近距離ドライブではEVとして使用し、長距離ドライブの際にはエンジンの力を借りて給電の心配ご無用、というPHEV独自の魅力である二刀流の完成度をより高めている。お値段も、899万円から998万円となり、100万円ほど高くなっている。
もっとも、メルセデス・ベンツのユーザーにとって気になるのは、重量増のほうかもしれない。新型GLCそれ自体、全面改良時にホイールベースを15mm延ばしてボディーを若干拡大し、「Sクラス」譲りの最新インフォテインメントを搭載したぶん、重くなっている。
先代のPHEV、正式名「GLC350e 4MATICスポーツ」の車重はスタンダードで2070kg、「AMGライン」で2100kg。新型GLC 350eはスポーツ エディションスターというAMGラインと「ドライバーズパッケージ」(AIRMATIC+リアアクスルステアリング)を足したようなスペシャル仕様のみで2310kg。先代350eスポーツのAMGライン比で、210kg増である。
このような重量増に対して、2リッターのガソリンエンジンと電気モーターの共同によるパワーユニット(PU)のシステム最高出力と同最大トルクは、先代の320PS、700N・m(初期型は560N・mだった)から313PS、550N・mへと控えめになっている。大問題ではあるまいか。210kgも増えているのに、システム出力とトルクは減っているのだから。それでスポーツのスターといえるのか? EV走行の航続距離が伸びているだけで、君はそれでいいのか? ということが問われている。問うているのは私ですけど。
筆者的には意外なことに、メルセデスはPHEVのPUそれ自体も刷新している。2リッターのガソリンエンジンも、先代の型式はM274で、排気量1991cc、ボア×ストロークは83.0×92.0mmだった。対して新型は83.0×92.3mmとストロークが微妙に延ばされて排気量が1997ccへと微増している。型式は254M20で、他人の関係のごとしである。最高出力は先代の211PS/5500rpmから204PS/6100rpmに、最大トルクは350N・m/1200-4000rpmから320N・m/2000-4000rpmへとピーク性能がダウンしている。♪パッパ、パヤッパ。他人の関係。金井克子。
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モーターの力はスゴい
エンジンと9段ATの間に挟み込まれたモーターもまたEM0012型からEM0017型へと変わっている。だけどこちらは、記号は同じで数字が増えただけなので、他人の関係という感じはしない。出力とトルクは122PS、440N・mから出力のみ136PSに10%アップ。電池の容量増に伴い、モーター性能を上げる。同時に、内燃機関をより高効率にして温室効果ガスの排出を少なくしようとしている、ということにちがいない。
取材は2023年師走半ばの、小雨のそぼ降る日で、筆者はメルセデス・ベンツの「GLC220d 4MATICクーペ」のAMGラインパッケージ+ドライバーズパッケージ装着車で東名高速の裾野IC方面に向かい、富士山の裾野の原っぱで今回のGLC350e 4MATICスポーツ エディションスターに乗り換えた。
GLC220dクーペの2リッターディーゼルは最高出力197PSで最大トルク440N・m。これにマイルドハイブリッドのモーターが23PSと205N・m。車重は2030kg(パノラミックスライディングルーフ付き)。GLC350eスポーツ エディションスターの試乗車は2340kgと、こちらもパノラミックスライディングルーフ付きのため、前述したカタログ値より30kg重い。その差は310kgもある。それでシステム最高出力313PS、同最大トルク550N・mである。
安心してください。やっぱりモーターの力というのはスゴい。PHEVを含むハイブリッド車というのは発進時、モーターで駆動する。最大トルクをいきなり生み出せるモーターの特性もあって、車重2340kgが抵抗するそぶりも見せず、無音でもってスムーズに走りだす。
最低地上高はGLCクーペが175mm、GLC350eは190mmと若干異なるものの、ダッシュボードの景色が同じなら、小径極太のステアリングホイールも同じだし、GLCクーペから乗り換えても、運転席に座っている限り、違うもの感がまるでない。あ。ゆいいつ、ルームミラーの眺めは全然違う。GLCクーペはファストバックなので、リアのウィンドウがめちゃんこ狭い。その点、標準ボディーはよく見える。
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豊かな低速トルク
走りだしてしばらくは、ダンパー、あるいはタイヤが冷えていたせいか、220dクーペよりも、350eのほうが脚が若干硬い……ような気もした。でも走っているうち、乗り心地に関しては確たる違いは感じなくなった。前255/45、後ろ285/40という前後異サイズの極太超偏平20インチの「コンチネンタル・エココンタクト6Q」のトレッド面の硬さはあるものの、エアサスペンションのもたらす乗り心地はしなやかで快適で、クーペとどこが違うのか、まるで分からん。
ロードノイズがちょっぴり大きいように感じるのは、EV走行による静かさのせいだろう。アクセルペダルを踏み込んで耳を澄ませていると、ヒュィィィンという電子音が聞こえてくる。2リッターディーゼルの220dより低速トルクがたっぷりある感じがする。
ステアリングホイールの奥のスクリーンには左に速度計、右に回転計とパワーメーターを兼ねたメーターが表示されている(レイアウトは変えられる)。電池のエネルギー残量は4分の3と少々あって、EV走行可能距離は88kmと出ている。エンジンは動いておらず、回転計は0を指している。山道の上りに差しかかると、突如、エンジンが静かに目覚める。電池の消費を防ぐためだろう。
2リッターのガソリンエンジンは回すと、グオオオオオオッという快音を控えめに発しながら気持ちよく回る。モーターがアシストしているのか、あるいはエンジンがモーターをアシストしているのか、この連携に違和感がない。とんでもなく速いわけではないけれど、十分な速さとスポーティネスを感じる。
モーターもエンジンも自由自在
いわゆるドライブモード、メルセデスでいうところの「ダイナミックセレクト」には「オフロード」「B」「EL」「H」「S」「I」とある。オフロードは文字どおり、Bは充電モード、ELはエレクトリック、Hはハイブリッド、Sはスポーツ、そしてIはインディビジュアル=個人で設定するモードで、エンジン、ダンパー、ステアリング、それにESPの設定を変えることができる。
アクセルペダルを深々と踏み込むと、キックダウンのスイッチのごとく、カチッという足応えのあと、エンジンが始動する。Sを選ぶと、エンジンが主体となり、快音を楽しみながらワインディングロードを駆けめぐれる。
車検証にみる前後重量配分は、前が1070kgで、220dクーペと全く同じ。電池を積むぶん、後ろは1270kgもあって、前後重量配分はトランスアクスルのスポーツセダンみたいに、46:54とリアのほうが重くなっている。加減速時の重量感はあるけれど、ステアリングの入力に対するノーズの動きはクーペと変わらない。低速で奇妙なほどによく曲がるリアアクスルステアリングの奇妙さをまったく感じなかったのはクーペで慣れていたせいかもしれない。
ゆいいつ、ブレーキのフィールは、220dクーペより減速Gの立ち上がりがちょっぴり遅い気がした。これこそボディーの重さの違いか、より強くエネルギー回生しているからか、あるいはその両方に起因しているのかもしれない。
東京までの帰路、あえてELモードで走ってみた。140km/hまでEV走行できるので、日本の道路環境では静かなクルーズを堪能できる。途中で電池のエネルギーがゼロになり、自動的にエンジンが始動した。100km/h巡航時、ロードノイズとウインドノイズによってエンジン音はかき消され、モーター駆動と変わらぬ静かな巡航を続けた。
あるときはモーター走行、あるときはエンジンが助太刀するのが二刀流だとすると、新型GLC350eはエンジンが主体となってモーターがこれを助ける第3の刀を持っている。新しい2リッター直4ターボがスポーティーなフィールで、よいのである。その意味では、あちらはV6だけれど、「ポルシェ・カイエン」のPHEVに近い、と思った。
2024年は三刀流でいこう!
(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=メルセデス・ベンツ日本)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLC350e 4MATICスポーツ エディションスター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4725×1920×1635mm
ホイールベース:2890mm
車重:2340kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/2000-4000rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)/2600-6800rpm
モーター最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)/0-2100rpm
システム最高出力:313PS(280kW)
システム最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R20 105W XL/(後)285/40R20 108W XL(コンチネンタル・エココンタクト6Q)
ハイブリッド燃料消費率:11.9km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:118km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:105km(WLTCモード)
交流電力量消費率:318Wh/km(WLTCモード)
価格:998万円/テスト車=1089万3000円
オプション装備:AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(60万9000円)/パノラミックスライディングルーフ(22万3000円)/ボディーカラー<モハーベシルバー>(8万1000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:19km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:323.0km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:16.3km/リッター(車載燃費計計測値)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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