第280回:やっぱり「S」は要らないよね
2024.03.25 カーマニア人間国宝への道地味なモデルをゲタとして転がすのがセレブ
「今度、『ポルシェ911カレラ カブリオレ』にお乗りになりますか?」
サクライ君からのメールに「乗る乗る~!」と返信しつつ、911カレラ カブリオレって何か新しくなったのかな? と思ったが、いやたぶん新しくなったんだろう、そうに違いないと納得してお布団に入って寝た。
当日夜8時。わが家にやってきたサクライ君に尋ねた。
オレ:これってなにが新しくなったの?
サクライ:いえ、年次改良はされていますが、登場時から大きな変更はありません。
へぇ~そうなんだ。いずれにせよ乗ったことなかったし、というか、911は全部911。新しいとか古いとか関係ない……とは言えないけど、それほど関係ない。特に911のカブリオレは、あんまり性能にこだわってない感じが金持ちっぽくてステキ! なかでも一番ベーシックなカレラ カブリオレは、逆に一番お金持ちっぽい気がする。本当のお金持ちはきっとこういうのをゲタとして転がすんだよね! んでガレージには別に「GT3 RS」とかあるんだよね、たぶん!
オレ:ところでこのクルマ、おいくらマンエン?
サクライ:エーと、2022年式で新車販売時の価格は1654マンエンです。(2024年3月現在の車両本体価格:1845万円)
オレ:ええっ! そんなにお安いの!?
サクライ:はい。意外とお安かったんです。ただオプションを含めると今回の仕様でだいたい2100マンエンです。
オレ:やっぱり。
んでも中古車は、オプション込みの新車価格くらいかそれ以上で売られているので、富裕層にとってはタダみたいなものですね。しみじみ。
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大谷翔平君も911に乗ってた
911カレラ カブリオレのエンジンは、3リッター水平対向6気筒ターボで最高出力が385PS。前に同じエンジンを積む「カレラT」(7段MT)に乗せてもらって大感動したが、今回のカレラ カブリオレは8段DCTだ。考えてみると、素のカレラのAT仕様に乗るのは初めてのような気もする。
初めて乗る911カレラ カブリオレは、最もベーシックなモデルとは思えない好感度抜群なヤツだった。いや逆に一番ベーシックだからこそ好感度が抜群なのだろう。ムダにパワフルすぎず、ムダにゴージャスすぎず、911の古き良き伝統を感じさせる質実剛健な雰囲気なのである。繰り返すが、こういう地味なモデルをカブリオレボディーでゲタとして転がすのが、真のセレブではないだろうか。
首都高に乗り入れ、代々木PAで幌(ほろ)を開け放ち、夜のTOKYOを疾走した。ああ、いいクルマだなぁ。このエンジンは本当にいいなぁ。ターボ付いてるけど全然ターボを感じないしなぁ。
オレ:そういえば、大谷翔平君も911に乗ってたよね!
サクライ:はい。大谷君が乗ってたのは「911タルガ4S」です。
そうか。大谷君はタルガなのか。さすがアスリート。横転してもケガしないようにってことかな。それとも頭がルーフにつっかえないようにかな。
オレ:でも、4Sってのはちょっといただけないね。大谷君には「Sはいらないでしょ」って言ってほしかった!
サクライ:ですね。
オレ:でもでも「GTS」や「ターボS」じゃないところはさすが大谷君! どんだけ大金持ちでもムダ遣いはしてないね!
サクライ:確かに。
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これが成功者気分ってヤツか?
それにしても大谷君は、ありとあらゆることに興味を持たれてしまうんだから、本当に大変だ。「911でもSは要らないでしょ」までおせっかいを焼かれてしまう。ましてや奥さんについては、日本中があれこれ勝手に注文をつけていた。
私が通っている駅前のマッサージ店では、マッサージ師さんが「大谷君の嫁には、やり投げの北口榛花選手がベストですよ!」と決めつけていた。「彼女、競技のために体重つけてますけど、痩せたらすごくかわいいですよ。性格も明るいし、運動神経抜群。大谷君となら、ものすごい子供が生まれますよ!」とまで言い切っていた。
それに対して私は、「いやあ、大谷君の嫁は池江璃花子さんしかいないでしょ! 彼女とならメチャメチャお似合いだし、日本人全員が納得するよ!」と反論したが、結局身長は北口選手、体形は池江選手に近い田中真美子さんと結婚して全人類が納得した。神業としか言いようがない。
辰巳PAに到着すると、なぜかビックリするほどすいていた。辰巳PA独り占め! って感じだ。うわーゼイタク。
辰巳のタワマンをバックに、オープンでたたずむ白い911カレラ カブリオレ。なんだかとってもアメリカみたい! これが成功者気分ってヤツかなぁ。オレのクルマじゃないけれど。
それにしても、大成功者になっても一切おごらない大谷君は本当にすごい。いったいどういう人格者なんだ。でもやっぱりカーマニアとしてちょっとだけ思う。「S」は要らないよねって。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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