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バイクのAT化が加速中! ヤマハとホンダの自動変速に注目せよ

2024.08.12 デイリーコラム 宮崎 正行
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バイクの2大メーカーが本腰

バイクの、こと“自動変速”が今回のテーマ。「そんなの20年近く前にヤマハが『FJR1300AS』で出してたじゃん!」というアナタ、その記憶はかなり鮮明です。同モデルに搭載されていたメカニズムである「YCC-S(ヤマハ電子制御シフト/2006年)」の時点でクラッチレバーはなかった、つまり、一連のクラッチ操作からは解放されていた。そのことを忘れつつあるバイク好きもきっと多いと思う。YCC-S搭載車は、現在ではなくなってしまったが、いったん慣れさえすればイージーライドだったことはハッキリ覚えている。

ではなぜいま急に、自動変速の話なのか? それは2024年7月26日にヤマハが新技術を発表したからだ。その名も「Y-AMT」。ヤマハのオートマチックなMTということらしい。ホンダの「Honda E-Clutch」(2023年)への“返す刀”かと思ったが、ことはそんなに単純じゃなさそうだ。

ここでちょっとおさらい。

自動変速の技術としては先駆けだったといえるヤマハのYCC-Sの変速は、シフトペダルと左ハンドルにあるハンドシフトレバーのいずれでも操作ができ、またオン/オフ可能なSTOP MODEシフト(停止時に自動的に1速になる仕組みで、シフトダウン操作そのものが不要)も装備していた。簡単に言うとシフトアップは任意で、シフトダウンは任意とお任せがチョイスできる。

実際に走らせれば、最初はシフトアップ時にスロットルのオン/オフのタイミングが合わずにギクシャクしたものの、変速の時にスロットルをわずかに戻すとスムーズになった。その感触をひとたびつかめば操作の問題はなくなったし、そもそも重いクラッチレバーを引く動作や発進時の半クラも不要というだけで、ありがたみは十分あった。

ヤマハが2024年7月26日に発表した、新開発の自動トランスミッション「Y-AMT」のイメージ。発進や変速などの操作が自動化されるため、AT限定免許での運転が可能となる。
ヤマハが2024年7月26日に発表した、新開発の自動トランスミッション「Y-AMT」のイメージ。発進や変速などの操作が自動化されるため、AT限定免許での運転が可能となる。拡大
「Y-AMT」搭載車では、ハンドルバーの左側スイッチボックスに備わるシフトレバーで変速を行う。ヤマハによれば、変速に要する時間は0.1秒。
「Y-AMT」搭載車では、ハンドルバーの左側スイッチボックスに備わるシフトレバーで変速を行う。ヤマハによれば、変速に要する時間は0.1秒。拡大
「Y-AMT」のAT/MTモード切り替えスイッチ。ATモード選択時には、プロライダーがクイックシフターを駆使して走るのと同等の加速性能を実現するという。
「Y-AMT」のAT/MTモード切り替えスイッチ。ATモード選択時には、プロライダーがクイックシフターを駆使して走るのと同等の加速性能を実現するという。拡大
クラッチ操作不要でギアチェンジが可能なYCC-S(ヤマハ電子制御シフト)を搭載した、ヤマハのスポーツツアラー「FJR1300AS」。写真は2022年に発売された最終モデル「20th Anniversary Edition」。
クラッチ操作不要でギアチェンジが可能なYCC-S(ヤマハ電子制御シフト)を搭載した、ヤマハのスポーツツアラー「FJR1300AS」。写真は2022年に発売された最終モデル「20th Anniversary Edition」。拡大

ATといってもさまざま

そんなヤマハのYCC-Sからホンダの「DCT」(「ゴールドウイング」や「アフリカツイン」などすでに搭載車6種!)を経て、次代のHonda E-Clutch、ヤマハのY-AMTへ。

にわかに活気づく二輪の自動変速システムを年次順で整理してみよう。

●ヤマハ「YCC-S」 2006年市販化(現在搭載車なし)
・クラッチレバーなし、シフトペダルあり、シフトスイッチあり
・STOP MODEシフト オン時はシフトダウンが自動で行われ、また停止時には自動的に1速になる

●ホンダ「DCT」 2010年市販化(現在6種8台に搭載)
・クラッチレバーなし、シフトペダルなし、シフトスイッチあり
・AT/MTモードのいずれか選択可能。MTモードの場合、シフトアップ/ダウンの操作は手元のスイッチにて行う

●ホンダ「Honda E-Clutch」 2024年市販化(現在2種に搭載)
・クラッチレバーあり、シフトペダルあり、シフトスイッチなし
・システム起動時はクラッチレバーの操作が不要で、シフトペダルでのアップ/ダウンは必要。システムをオフにするとクラッチレバー操作が可能になる

●ヤマハ「Y-AMT」 2024年市販化
・クラッチレバーなし、シフトペダルなし、シフトスイッチ(レバー)あり
・AT/MTモードがいずれか選択可能。MTモードの場合、シフトアップ/ダウンの操作は手元のシフトレバーにて行う

上記を並べてみてわかるのは、すべての技術が運転の安楽さやフールプルーフ(死語?)だけを求めているわけではなさそうなこと。それでも開発コンセプトが企図しているものがそれぞれビミョーに違う。“FUN”へのアプローチが違う、自動変速車4台をずらり並べて乗り比べしてみたい。

四輪の世界でも知られるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を、ホンダは2010年に世界で初めて二輪に採用した。写真はその搭載車種のひとつ、アドベンチャーバイクの「X-ADV」。
四輪の世界でも知られるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を、ホンダは2010年に世界で初めて二輪に採用した。写真はその搭載車種のひとつ、アドベンチャーバイクの「X-ADV」。拡大
ホンダの新たな自動変速システム「Honda E-Clutch」は、クラッチコントロールの自動制御により、クラッチレバーを操作することなくスムーズな発進、変速を可能とした電子制御技術。シフトペダルの操作は必要だ(写真は構造を示すカットモデル)。
ホンダの新たな自動変速システム「Honda E-Clutch」は、クラッチコントロールの自動制御により、クラッチレバーを操作することなくスムーズな発進、変速を可能とした電子制御技術。シフトペダルの操作は必要だ(写真は構造を示すカットモデル)。拡大

MTに限る! とは言ってられない

MT命の俺にはカンケーないね! と決め込むライダーはさておき、それでも時代は確実に変遷しているようだ。ホンダ、ヤマハ、それぞれのメーカーの広報担当者から興味深い話を聞くことができた。

「『NC750X』や『レブル1100』、アフリカツインなどにタイプ設定されているDCTに関しては、半数以上の約6割のお客さまにDCT搭載車を選んでいただいています。またHonda E-Clutchをタイプ設定した『CB650R』と『CBR650R』については、販売店の受注状況としてすでに約8割がE-Clutch搭載車となっているなど、自動変速の新機構への関心が徐々に高まっていることがうかがえます」(ホンダモーターサイクルジャパン・広報)

「Y-AMTは、2006年に登場したYCC-Sから続いている系譜。2013年には第2世代のYCC-Sである電子制御スロットルをFJR1300ASに搭載し、さらに2017年には『ROV』(四輪バギー)への展開も行いました。ヤマハにはこのように、いち早く市場へ導入したことと継続して研究開発してきたATの技術に一日の長があると自負しています。スポーツ走行を楽しんでいただくための提案のひとつとして今回、『MT-09』にY-AMTを搭載しました」(ヤマハ発動機販売・マーケティング課)

ATとMT、どっちが楽しいか? そりゃもうライディングプレジャーの観点からいったら断然MTでしょう! なんて、反射的に口走ってしまうわれらエイティーズおじさんたち(筆者ね)。強固な本音を簡単には覆すつもりは今のところ……ない。ないけれど、それでも新しい変速技術が「かなりスゴいことになっていそう」なことも少なからず想像できる。守旧派、ちょっとピンチ。

そしてその答えは、2024年8月末に開催されるY-AMT搭載車のメディア向け試乗会で、案外スッと出てしまうのかもしれない。そもそもAT的でもMT的でもない、第3のトランスミッションという可能性もあるしね!

(文=宮崎正行/写真=本田技研工業、ヤマハ発動機/編集=関 顕也)

最新の「CBR650R」において、受注の約8割を占めるという「CBR650R E-Clutch」。車重は「Honda E-Clutch」搭載車のほうが2kg重くなる。
最新の「CBR650R」において、受注の約8割を占めるという「CBR650R E-Clutch」。車重は「Honda E-Clutch」搭載車のほうが2kg重くなる。拡大
「CBR650R E-Clutch」とともに、初の「Honda E-Clutch」搭載車として2024年6月に発売された「CB650R E-Clutch」。108万9000円という価格は、Honda E-Clutch非搭載車に対して5万5000円高となっている。
「CBR650R E-Clutch」とともに、初の「Honda E-Clutch」搭載車として2024年6月に発売された「CB650R E-Clutch」。108万9000円という価格は、Honda E-Clutch非搭載車に対して5万5000円高となっている。拡大
ヤマハは2024年内に「Y-AMT」搭載モデル「MT-09 Y-AMT」(写真)を発売予定。以降、同じ900ccのエンジンや、700ccのエンジンを搭載したモデルへの展開を計画しているという。
ヤマハは2024年内に「Y-AMT」搭載モデル「MT-09 Y-AMT」(写真)を発売予定。以降、同じ900ccのエンジンや、700ccのエンジンを搭載したモデルへの展開を計画しているという。拡大
宮崎 正行

宮崎 正行

1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。

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