フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIライフ(FF/7AT)
進化したメートル原器 2024.08.19 試乗記 マイナーチェンジした「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に試乗。“8.5”と呼ばれる改良進化版は、内外装のブラッシュアップとインフォテインメントシステムの強化が大きなトピック。2025年1月に予定される日本上陸を前に、ドイツでその進化を確かめた。料理はおいしいのに接客が悪いレストラン
2024年1月に、フォルクスワーゲン・ゴルフのマイナーチェンジが発表されたときには、どんな仕上がりになっているのかが楽しみだった。というのも、2019年に登場した現行の8代目ゴルフが年々進化していることを肌で感じていたからだ。特にwebCGに寄稿した「ゴルフヴァリアント」のディーゼル仕様(参照)は出色の出来で、デビュー当初に比べると乗り心地もパワートレインも大幅にリファインされていた。
いっぽうで、8代目ゴルフは導入当初、厳しい評価を受けたモデルでもある。批判の対象は主にインフォテインメントシステムで、「タッチスクリーンが操作しにくい」とか、「必要な情報がすぐに出てこない」など、使い勝手が悪かった。
つまり「走る」「止まる」「曲がる」といったクルマの基本性能は秀でているのに、インターフェイスには難があるというのが残念で、料理はおいしいのに接客が悪いレストランのようだった。
今回のマイナーチェンジで、ゴルフのインフォテインメントシステムはフォルクスワーゲングループ最新の「MIB4」にアップデートされている。これによってインターフェイスが改善され、クルマの出来のよさとデジタル技術の使いやすさがバランスしているのではないかと期待したのだ。
7月下旬、フォルクスワーゲンが本社を構えるヴォルフスブルク周辺でマイチェン後のいわゆる“ゴルフ8.5”に試乗することができた。試乗したのは1.5リッターの直4ガソリンターボエンジンと48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「ゴルフeTSI Life(ライフ)」で、日本では「Active(アクティブ)」というグレード名になる。
今回のマイチェンで1リッターの直3ガソリンターボエンジンが廃止されることから、最高出力116PSを発生するこのパワートレイン搭載車がエントリーモデルとなる。
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存在感を増したタッチスクリーン
パッと見、外観の変更はそれほど大がかりではなく、それでもじっくり観察すると前後のバンパーとヘッドランプ、リアコンビネーションランプに手が加わっていることがわかる。ただし、手を加えるといっても装飾が施されたわけではなく、シンプルな造形となっていることに好感を持つ。全体に、マイチェン前よりシャキッとした印象だ。
変化の度合いは、エクステリアよりインテリアのほうが大きい。ドライバーズシートに収まると、センターコンソールに大きなコントロールパネルがドライバーの方向に傾けられて設置されていることに気づく。サイズは12.9インチで、10インチだった従来型と比べるとひとまわり大きいことから、かなり存在感を増している。
ただ画面のサイズが大きくなっただけでなく、画面の最上段にはソフトスイッチが設けられ、ここでナビゲーションシステムやドライブモード、運転支援装置などの情報をワンアクションで呼び出せるようになった。走りながら操作するとこれがなかなか便利で、タッチスクリーンの使い勝手にまつわる不満は解消されていると感じた。
もうひとつ、画面の最下段にはエアコンの温度設定やオーディオのボリュームを調整するスライド機構がいままでどおりに残されているけれど、ここに照明が備わって夜間でも使いやすくなったことも朗報だ。
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ナチュラルな運転支援システム
1.5リッターのeTSIはゴルフの新しいパワートレインのラインナップで最も非力な仕様であるけれど、市街地からアウトバーンまで、力不足を感じるシーンはなかった。
まず市街地では、48Vマイルドハイブリッドシステムの助けもあり、発進加速からスムーズに速度を積み上げ、素早く交通の流れに乗ることができる。極低速域を得意とするモーターがしっかりと加速をサポートすることで、むやみにエンジン回転を上げなくても加速するから、室内で感じるノイズと振動は非常に低いレベルだ。信号待ちのアイドリングストップからのエンジン再始動も迅速かつ滑らかで、非常に洗練された印象を受ける。
アウトバーンに入っても洗練された印象に変化はなく、静かさと滑らかさを保ったまま、するすると速度を上げる。パワフルだとは感じないけれど、制限速度130km/hの区間でも一切のストレスを感じずに走行できるから、日本の高速道路で力不足を感じることはないはずだ。
アウトバーンで感じたのは運転支援システムの作動がマイチェン前よりも明らかにナチュラルになっていること。先行車両に追従するクルーズコントロールと車線維持機能を統括する“Travel Assist”を起動すると、軽くハンドルに手を添えるだけで安定した高速クルーズを開始する。このシチュエーションでの加減速のスムーズさと、車線をはみ出しそうになったときのハンドルに伝わる反力がごく自然で、リラックスして過ごすことができた。
1.5リッターのeTSIには気筒休止システムが備わり、負荷の低い状態では2気筒が休憩に入る。ただし2気筒と4気筒の切り替えはシームレスで、メーターパネルの表示がなければ気づかないほどだ。アクセルペダルをオフにするとエンジンの動力が切り離されるコースティングの状態になって燃費を稼ぐけれど、この切り替えも意地悪に観察しないと感知できないくらいスムーズ。ベーシックな1.5リッターeTSIでもこれだけパワートレインの出来がいいのかと、感心させられる。
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料理はもちろん接客態度も上々
試乗車にはアダプティブシャシーコントロール“DCC”が備わり、ダンパーの減衰力や電動パワステの手応えをコントロールすることができる。アウトバーンでは「NORMAL」モードでまったく問題なく、舗装が荒れた路面からの突き上げを上手にいなしながら、その後のピッチングもきちんと抑えるから、フラットな姿勢を保ったまま矢のように直進する。
いっぽう、市街地の中心部で速度が30km/h程度まで低くなると、路面からのコツコツという入力がやや気になる。ここで「COMFORT」モードを選ぶと車内に平穏が戻ってくる。“DCC”はかなり有効に作動するので、うまく使いこなしたい。ちなみにタイヤサイズは225/40R18で、銘柄はブリヂストンの「ポテンザS005」。“DCC”が備わる仕様ということで今回の試乗車は18インチタイヤを履いていたけれど、日本の速度環境での乗り心地を考えると17インチか16インチのほうが快適かもしれない。この件に関しては、日本仕様が導入されてから確認したい。
初代ゴルフのデビューが1974年だから、今年で生誕50周年。長年にわたって機能と基本性能を磨き続けてきたけれど、ここにきて、運転支援機能や電動化などの新しい技術を採り入れる必要が生じている。
少し時間がかかったけれど、ゴルフもしっかりと新しい基準にキャッチアップしたと感じた。料理がおいしいうえに接客もよくなったわけで、「実用車のメートル原器」と呼ぶにふさわしい仕上がりだった。日本では2024年9月に受注を開始、2025年1月からデリバリーが始まるという。
(文=サトータケシ/写真=フォルクスワーゲン/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIライフ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4289×1789×1483mm
ホイールベース:2620mm
車重:1332kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:116PS(85kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:220N・m(22.5kgf・m)/1500-3000rpm
モーター最高出力:--PS
モーター最大トルク:--N・m
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ブリヂストン・ポテンザS005)
燃費:5.7-5.1リッター/100km(約17.5km-19.6km/リッター、WLTPモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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