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第294回:微妙すぎるぜ! カーマニアの線引き

2024.10.07 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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乗るなら顔のイイやつ

「今度、日産の『ノート オーラ』と『ノート オーラNISMO』のどちらかに試乗できますが、いかがなさいますか」

担当サクライ君からのメールに私は、「じゃNISMOで!」と返信した。

理由はデザインだ。「ノート」はマイナーチェンジで「デジタルVモーショングリル」が採用され、いまひとつな顔になり、大好きだったノート オーラは、顔じゅうブツブツのイボイボになった。その点ノート オーラNISMOの顔は一番落ち着いている。人もクルマも顔が命。せっかく試乗するなら顔のイイやつに乗りたいので、NISMOをリクエストしたのである。

当日夜8時、サクライ君がやってきた。
オレ:オーラNISMO、どう?
サクライ:すごくいいです。

サクライ君は以前からノートが好きな様子だった。国産車なんかほとんど買ったこともなさそうな彼がこれほど入れ込むのだから、日産の「e-POWER」恐るべし。

Dレンジに入れて発進すると、出足が軽快だ。さすがリアモーターのパワー/トルクが増強されているだけのことはある。サクライ君が「NISMOモードに入れると、もっと速いですよ」と言うので首都高で試してみたが、アクセルセッティングがビンカンになるだけで、全開にすれば同じだった。

サクライ:いえ、NISMOモードは駆動力配分がリア寄りになるんです。
オレ:そうなんだ! でもそんなの、サーキットじゃないとわかんないよ。
サクライ:ですね。
オレ:それにNISMOはちょっと足が硬いね。
サクライ:でも乗り心地、悪くないでしょ。
オレ:悪くないけど、普通のオーラのほうがもっとよかったな。

2024年7月18日に発売された「ノート オーラNISMO」のマイナーチェンジモデル。注目は高性能4WDモデル「オーラNISMOチューンドe-POWER 4WD」の登場である。今回はその駿馬を駆り、夜の首都高に出撃した。
2024年7月18日に発売された「ノート オーラNISMO」のマイナーチェンジモデル。注目は高性能4WDモデル「オーラNISMOチューンドe-POWER 4WD」の登場である。今回はその駿馬を駆り、夜の首都高に出撃した。拡大
NISMO専用のリアバンパーは両サイドにエアスプリッターをレイアウト。床下からの風をきれいに流すレイヤードディフューザーも備わる。リアバンパーの中央にはお約束の「nismo」ロゴエンブレムと、バックフォグが組み込まれている。
NISMO専用のリアバンパーは両サイドにエアスプリッターをレイアウト。床下からの風をきれいに流すレイヤードディフューザーも備わる。リアバンパーの中央にはお約束の「nismo」ロゴエンブレムと、バックフォグが組み込まれている。拡大
赤と黒でコーディネートされた「オーラNISMOチューンドe-POWER 4WD」のインテリア。レッドのセンターマークとステッチが目を引くステアリングホイールが標準で装備される。
赤と黒でコーディネートされた「オーラNISMOチューンドe-POWER 4WD」のインテリア。レッドのセンターマークとステッチが目を引くステアリングホイールが標準で装備される。拡大
エクステリアデザインはFWDも4WDも共通。今回試乗した車両がまとう「NISMOステルスグレー」と「スーパーブラック」のツートンカラーは、NISMOブランドを象徴する専用色として他のNISMOモデルにも採用されている。
エクステリアデザインはFWDも4WDも共通。今回試乗した車両がまとう「NISMOステルスグレー」と「スーパーブラック」のツートンカラーは、NISMOブランドを象徴する専用色として他のNISMOモデルにも採用されている。拡大
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気恥ずかしいか気恥ずかしくないか

つまり私が推すノートのベストは、マイチェン前のオーラだ。すでに新車では買えないが、中古車がいくらでもあるので問題はない。

オレ:ところでさ、NISMO仕様って、なんだかちょっと恥ずかしくない?
サクライ:え……、恥ずかしいです。
オレ:でしょ? メーカー公認チューニングバージョンっていかにもな感じで、カーマニア的には気恥ずかしいよね!
サクライ:気恥ずかしいです。「GR」も「モデリスタ」も。
オレ:だよね! 一番気恥ずかしいのは「モリゾウエディション」かな。
サクライ:同感です。気恥ずかしくてちょっと乗れません。

私はフェラーリに関しても、「チャレンジストダラーレ」とか「430スクーデリア」とか「458スペチアーレ」には、ほのかな反感を抱いていた。どんなにデキがよくても、虎の威を借りるみたいで嫌なのだ。「360モデナ」に乗っていたときは、「自分で改造してチャレストに勝つ!」と決意し、中国製のパチモンエアロを付けるなどして激安チャレンジストラダーレ仕様に仕上げ、悦に入っていた。それがカーマニアの在野精神なのである。

オレ:でも、BMWの「M」はいいよね。
サクライ:Mはぜんぜんいいです。「AMG」も。
オレ:AMGは微妙に恥ずかしいでしょ。アーマーゲーとか言われたら赤面しない?
サクライ:絶対しますね。じゃ「ルノースポール」は?
オレ:それはOK! スバルの「STI」も。

気恥ずかしいか気恥ずかしくないかの線引きはかなり微妙だった。

さすがリアモーターのパワー/トルクが増強されているだけのことはあり、出足は軽快。NISMOは足が硬めだが、体が上下に揺さぶられるような不快さはない。もっとも、普通の「オーラ」のほうが乗り心地はもっとよかった。
さすがリアモーターのパワー/トルクが増強されているだけのことはあり、出足は軽快。NISMOは足が硬めだが、体が上下に揺さぶられるような不快さはない。もっとも、普通の「オーラ」のほうが乗り心地はもっとよかった。拡大
フロントグリルは冷却性能向上と空気抵抗低減を両立するフラッシュタイプのNISMO専用デザイン。個人的には「デジタルVモーショングリル」が採用される標準仕様車よりもこちらのほうが断然好み。
フロントグリルは冷却性能向上と空気抵抗低減を両立するフラッシュタイプのNISMO専用デザイン。個人的には「デジタルVモーショングリル」が採用される標準仕様車よりもこちらのほうが断然好み。拡大
かつて「フェラーリ360モデナ」に乗っていたときは、「自分で改造してチャレストに勝つ!」と決意し、中国製のパチモンエアロを付けるなどして激安「チャレンジストラダーレ」仕様にカスタマイズして悦に入っていた。
かつて「フェラーリ360モデナ」に乗っていたときは、「自分で改造してチャレストに勝つ!」と決意し、中国製のパチモンエアロを付けるなどして激安「チャレンジストラダーレ」仕様にカスタマイズして悦に入っていた。拡大
「オーラNISMO」には3つのドライブモードが設定されている。「エコ」「ノーマル」に加え、「NISMO」がこのモデル専用となる。エコでも基準車のスポーツモードに相当する走りが味わえる。赤いスタート/ストップスイッチもNISMO専用だ。
「オーラNISMO」には3つのドライブモードが設定されている。「エコ」「ノーマル」に加え、「NISMO」がこのモデル専用となる。エコでも基準車のスポーツモードに相当する走りが味わえる。赤いスタート/ストップスイッチもNISMO専用だ。拡大

ブランド志向はカーマニアとして恥ずかしい!

オレ:とにかく俺は、ノートならマイチェン前のオーラ推しだな。顔も一番よかったし。
サクライ:いや、マイチェン前の普通のノートで十分でしょう。
オレ:いやいや、マイチェン前のノートとノート オーラじゃオーラが違うよ! ぜんぜん高級じゃん!
サクライ:でも“オーラ”ですよ? 自分で自分のことオーラって、めちゃめちゃ恥ずかしいじゃないですか。
オレ:……言われてみれば。でもやっぱり俺は、断然マイチェン前のオーラ!

そこはどうしても譲れなかった。

オレ:ところでサクライ君は、NISMOみたいな冠付きのクルマ、買ったことないよね。
サクライ:実はあるんです。
オレ:ええっ、AMG?
サクライ:……「ピアッツァネロ イルムシャー」です。
オレ:ええええええ~~~~~っ! 初代ピアッツァに乗ってたの!?
サクライ:乗ってました。僕、若い頃にピアッツァを4台乗り継いだんです。
サクライ:よよよよ、4台もぉ!?
サクライ:最初がいすゞものの「ピアッツァXE」で、次がヤナセ専売の「ピアッツァネロXEターボ」。で、イルムシャーが出たのでヤナセで買い替えて、最後がネロ専用デザインのフロントマスクになった“まぶたが開かない”イルムシャーでした。
オレ:……サクライ君ってそんな偉大な人物だったんだ! ピアッツァの元オーナーってだけですごいのに、4台なんてウルトラメチャメチャ尊敬だよ!
サクライ:イルムシャーはOKですか?
オレ:もちろん! でもネロは却下。
サクライ:えーっ! いすゞのお店よりヤナセのほうがぜんぜんカッコいいじゃないですか。だっていすゞではトラックの隣で売ってたんですよ。
オレ:いやぁダメだ! そんなブランド志向はカーマニアとして恥ずかしい! イルムシャーはいいけどネロは禁止!

カーマニアの線引きは猛烈に微妙なのだった。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG、いすゞ自動車/編集=櫻井健一)

いつものように夜の首都高・辰巳PAで休憩しながら記念撮影。「NISMOチューンドe-POWER 4WD」専用の17インチホイールが装備され、通常の「ノート オーラ」よりも20mmローダウンしているので、たたずまいが実にスポーティーである。
いつものように夜の首都高・辰巳PAで休憩しながら記念撮影。「NISMOチューンドe-POWER 4WD」専用の17インチホイールが装備され、通常の「ノート オーラ」よりも20mmローダウンしているので、たたずまいが実にスポーティーである。拡大
いすゞが1981年に発売した「ピアッツァ」は、かのジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけた2ドアクーペ。担当サクライ君は若かりしころ、ヤナセの専売モデルとしてラインナップされた「ピアッツァネロ イルムシャー」を2台続けて購入したという。
いすゞが1981年に発売した「ピアッツァ」は、かのジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけた2ドアクーペ。担当サクライ君は若かりしころ、ヤナセの専売モデルとしてラインナップされた「ピアッツァネロ イルムシャー」を2台続けて購入したという。拡大
メータナセル周囲に配置されたサテライトスイッチパネルが目を引く「ピアッツァ」のコックピット。スポーティーバージョン「イルムシャー」では、MOMO製のステアリングホイールが標準装備とされていた。
メータナセル周囲に配置されたサテライトスイッチパネルが目を引く「ピアッツァ」のコックピット。スポーティーバージョン「イルムシャー」では、MOMO製のステアリングホイールが標準装備とされていた。拡大
1985年に登場した「ピアッツァ イルムシャー」のリアビュー。ヤナセで販売された「ピアッツァネロ」の最終仕様はいすゞものと前後のデザインが異なっていた。
1985年に登場した「ピアッツァ イルムシャー」のリアビュー。ヤナセで販売された「ピアッツァネロ」の最終仕様はいすゞものと前後のデザインが異なっていた。拡大
オプションの「NISMO専用チューニングRECAROスポーツシート」にはパワーリクライニング機能が備わった。カーマニアはRECAROシートと聞いただけでテンションが上がる。
オプションの「NISMO専用チューニングRECAROスポーツシート」にはパワーリクライニング機能が備わった。カーマニアはRECAROシートと聞いただけでテンションが上がる。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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