第296回:現代によみがえった初代「ゴルフ」
2024.11.04 カーマニア人間国宝への道N-BOXジョイを首都高に連れ出す
webCGで「ホンダN-BOXジョイ」関連の記事が人気だ。以前、「フリード」の記事も人気だったが、カーマニア専科の当サイトでは、ホンダの箱型車が想像以上の人気を集めている。ひょっとして初代「ステップワゴン」の残像だろうか……。
そんな時、担当サクライ君からメールが届いた。
「今度、N-BOXジョイにお乗りになりますか」
「乗る乗る~!」
ということで、その夜がやってきた。
N-BOXジョイは、近ごろはやりのアウトドア風軽ハイトワゴンだが、ホンダはこのテのドレスアップが苦手というか控えめで、N-BOXジョイもアウトドアの香りはほんのわずか。夜なので暗くてあんまりよく見えないが、第一印象は「ノーマル『N-BOX』の軽いドレスアップバージョン」だった。
オレ:これ、エンジンは?
サクライ:今回はNA(自然吸気)です。
オレ:ヤッター! 俺、N-BOXのNAに乗ったことなかったんだよ!
メディアにはターボ付きの「N-BOXカスタム」がよく登場するが、販売割合は2割ほど。軽ハイトワゴンはNAがスタンダードだ。わが家の「タント」もNA。NAでどれくらい走ってくれるかが、軽の勝負どころである。
ちなみに「N-BOXカスタム ターボ」の走りは、まるでメルセデスの「W124」のように重厚だった。NAはどうなのか。
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初代ゴルフに匹敵?
走りだしてすぐ、私は深い感銘に打たれた。
オレ:サクライ君、これはすごいね!
サクライ:すごいですよね。
オレ:ウチのタント、完膚なきまでに負けたわ。ほぼあらゆる面で。
サクライ:これって「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に匹敵しませんか?
オレ:そうか、これはゴルフか! ターボはW124だったけど、NAは初代ゴルフだね!
考えてみれば、初代ゴルフのタテヨコ高さの合計寸法は、現代の軽ハイトワゴン並み。車両重量は約800kgしかなかった。N-BOXジョイはFFで920kg。サイズ感はかなり近い。「コロコロコロ~」と軽やかなエンジンフィールにも、共通点があるような気がする。さすがに重心は初代ゴルフよりだいぶ高いけど、地に足のついた軽快な走りは、現代によみがえった初代ゴルフと言ってもいい。
しかもしかも、N-BOXジョイのシートは、初代ゴルフと同じようなチェック柄! このクルマがカーマニアに人気なのは、ひょっとして初代ゴルフの残像なのか……。
サクライ:さすがに初代ゴルフに乗ったことある読者は、少ないんじゃないですか。
オレ:だよね。初代って、俺が運転免許を取るだいぶ前に出てるもんな。
サクライ:あ、でも「カブリオ」は割と最近(※1992年)まで生産されてましたね。
オレ:そーか! 50代以上なら、乗ったことある読者は多いかも!
サクライ:カーマニアですからね。
徳大寺巨匠の『間違いだらけのクルマ選び』を立ち読みして育った世代としては、日本の軽がついに初代ゴルフの域に達したのは、実に感慨深い。思えば遠くに来たものだ。
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N-BOXは明らかに一頭地抜けている
オレ:ところでサクライ君、今いくつ?
サクライ:実はきのう、60(歳)になりました。
オレ:ええっ、きのう還暦になったの!? ヤッター、還暦越え仲間じゃん! お誕生日おめでとう!
サクライ:60なので定年です。
オレ:げっ、退職?
サクライ:いえ、延長雇用があって、もう少し働くつもりです。
オレ:それはよかった……。
若いころ「いすゞ・ピアッツァ」を4台乗り継いだサクライ君も、同じころ「フォルクスワーゲン・サンタナ」を2台乗り継いだオレも還暦越え。還暦越え同士で、現代によみがえった初代ゴルフに乗り、首都高を走っている。なんだか意味もなく歴史を感じる……。
N-BOXジョイは、首都高でも地に足のついた軽快な走りを見せた。コーナリング中の舵の利きに関してだけは、わがタントの勝ちだったが、軽ハイトワゴンにとって、それがあまり価値のない性能であることは、オーナーになってしみじみ実感した。重要なのは全体の質感。N-BOXは明らかに一頭地抜けている。
オレ:でもさ、このクルマいくら?
サクライ:えーと、240万円くらいです。
オレ:オプション込みで?
サクライ:込みです。
オレ:そう……。280万円じゃなくてよかった。でもクルマ、高くなったよねぇ。昔は240万円出せば、「ピアッツァ イルムシャー」が買えたもんね。
そう言ってハッとした。それって40年も前の話じゃん! 40年前と比較して「高い」とか言ってるようだから、日本経済はデフレから脱却し切れないのだろう。涙が出る。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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