フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン(FF/7AT)
盤石の進化 2025.01.22 試乗記 フォルクスワーゲンで販売台数トップを堅守する「ティグアン」がフルモデルチェンジ。一新された内外装とマイルドハイブリッド機構を搭載したパワートレイン、そして可変ダンピングシステム「DCC Pro」が組み込まれた足まわりが織りなす走りをチェックした。21世紀に新しい風
BEV(電気自動車)の「ID.シリーズ」は別にして、フォルクスワーゲンのモデル名は単なる数字やアルファベットを並べただけではないのが面白いところだ。たとえばロングセラーの「パサート」は貿易風を意味しているし、「ジェッタ」はジェット気流、「シロッコ」はサハラ砂漠に吹き付ける嵐である。「ゴルフ」も、いわゆるスポーツのゴルフではなく、貿易風を引き起こすメキシコ湾流のGulf Streamが起源というから奥が深い。
一方、21世紀生まれのSUVであるティグアンはどうかというと、風とは無関係で、「Tiger(虎)」と「Iguana(イグアナ)」を組み合わせた造語である。フォルクスワーゲンによれば、虎の力強さとイグアナの粘り強さを併せ持つ性格の持ち主ということだが、この新種のフォルクスワーゲンが2019年以降、フォルクスワーゲンのみならず、フォルクスワーゲングループ全体で販売台数トップを守り続ける存在になるとは、デビュー当時には想像できなかったに違いない。
そんなベストセラーモデルのティグアンが3代目に生まれ変わり、2024年末、ついに日本に上陸した。新型ティグアンは、全長×全高×全幅=4540×1860×1655mm、ホイールベースが2680mmと先代とほぼ同じボディーサイズである一方、エクステリアやインテリアのデザインは大きく変わり、また、プラットフォームにはこれまでの「MQB」を進化させた「MQB evo」を採用するなど、すべてが新しい意欲作なのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
様変わりしたコックピット
最新のフォルクスワーゲンデザインを身にまとうティグアンは、細いラジエーターグリルとシャープなヘッドランプ、それらを結ぶLEDライトストリップにより、クリーンなフロントマスクに仕上げられている。立体的なデザインを採用するテールランプにより、リアビューがスタイリッシュに彩られているのも、個人的にはお気に入りのポイントだ。
エクステリア以上に注目したいのがコックピットのデザイン。ソフトパッドで覆われたダッシュボードはこれまで以上に上質な印象で、さらにいまやあたりまえのデジタルメーターに加えて、15インチという大画面のタッチパネルが鎮座するコックピットに圧倒される。ほとんどの操作が中央のタッチパネルに集約されるが、現行ゴルフで不評だった点、たとえばエアコンのボタンにイルミネーションがなく、夜間に操作しにくいとか、シートヒーターを操作するのにいちいち空調のメニューを開くことになるといった部分が改善され、シンプルでわかりやすくなったのは見逃せないところ。また、ハザードランプやヘッドランプのスイッチがタッチではなく物理スイッチというのもありがたい。
シフトセレクターがセンターコンソールからステアリングコラム右のレバーに移されたのも大きな変更だ。レバーを回してモードを選択し、レバー先端を押してパーキングを選ぶというのはすぐに慣れたが、ウインカーとハイビーム切り替えの機能を持たせた左レバーに、さらに前後ワイパーの機能を追加したため、急に雨に見舞われたときには戸惑ってしまった。
パッケージングについても触れておくと、後席は、足元、頭上ともに大人が座っても余裕たっぷりのスペースが確保され、前後スライドやリクライニング機構が備わるのもうれしい。ラゲッジスペースは、通常時でも奥行きが約90cm、後席を倒せば150cm超えのスペースが現れ、ボディーサイズ相応の広さが確保されている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
低燃費が自慢の1.5 eTSI
日本で発売された時点で、新型ティグアンのパワートレインとしては、1.5リッター直4ガソリンターボを搭載するFF仕様の「eTSI」と、2リッター直4ディーゼルターボに4WDを組み合わせた「TDI 4MOTION」の2種類が用意される。今回はeTSIのなかから、スポーティーさが自慢の「ティグアンeTSI Rライン」に試乗することにした。
eTSIというのは、直噴ガソリンエンジンのTSIに、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせたものを指し、ティグアンeTSIでは150PSを発生する1.5リッター直4エンジンと13.5kWの電気モーター、44Vのリチウムイオンバッテリーで構成されている。
まずは一般道でその感触を確かめてみることにするが、マイルドハイブリッドシステムを搭載した1.5リッターエンジンは、排気量から想像する以上に頼もしい印象。低回転から十分なトルクを発生するエンジンは、加速時にマイルドハイブリッドシステムのモーターがアシストすることで、動き出しが軽いうえに、アクセル操作に対して素早く反応し、細かい加減速が続く街なかでもストレスのないドライブが可能なのだ。一方、ここぞという場面でアクセルペダルを大きく踏み込めば、3000〜5000rpmあたりで気持ちよくスピードを上げ、高速道路の合流や追い越しといった場面でも不満がない。
マイルドハイブリッドシステムを搭載するこのクルマでは、走行中にアクセルをオフにした場合、条件が整うとエンジンが完全に停止しコースティングを行う。さらに、エンジン自体にも気筒休止機能が備わるおかげで、高速道路では20km/リッターオーバー、郊外の一般道でも15km/リッター以上を達成する低燃費には驚くばかりだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
効果絶大なDCC Pro
MQB evoのウリのひとつが、新たに開発された可変ダンピングシステムのDCC Proである。伸び側と縮み側の減衰力をそれぞれ別のバルブで制御するのが特徴というこのダンパー、実際に走らせてみるとその効果は絶大だった。
255/40R20サイズのタイヤとDCC Proが標準装着されるティグアンeTSI Rラインでは、20インチの大径ホイールと40偏平タイヤが路面の荒れを伝えたり、目地段差を越える際にショックを遮断しきれなかったりすることがあるものの、乗り心地はおおむね快適で、スポーティーなグレードであるのを忘れてしまうほどだ。
一方、走行時の挙動は落ち着いており、高速走行時のピッチングも、コーナーでのロールも実によく抑え込まれていて、快適な乗り心地と落ち着いた挙動を見事に両立。DCC Proの効果は絶大といえる。
舵角が大きくなるとステアリングのギア比が高まる「プログレッシブステアリング」を搭載するこのグレードは、ワインディングロードでも実に活発で、想像以上に軽快なハンドリングが楽しめる。
というわけで、ベストセラーにふさわしい進化を遂げた新型ティグアン。日本でも、コンパクトSUVの「Tクロス」やクロスオーバーの「Tロック」の販売台数を上回る日は近いかもしれない。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=フォルクスワーゲン ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1860×1655mm
ホイールベース:2680mm
車重:1610kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:ベルト駆動式スタータージェネレーター
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力:18PS(13.5kW)
モーター最大トルク:56N・m(5.7kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R20 101V XL/(後)255/40R20 101V XL(ピレリ・スコーピオン)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:588万9000円/テスト車=592万7500円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万8500円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:5134km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:250.0km
使用燃料:16.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:15.1km/リッター(満タン法)/15.3km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。






















































