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「ホンダWR-V」に早くも一部改良モデルが登場 ライバル「スズキ・フロンクス」とのインド発SUV対決の行方は?

2025.04.17 デイリーコラム 櫻井 健一
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登場1年で早くも一部改良を実施

2024年3月22日に日本でも販売が開始されたコンパクトSUV「ホンダWR-V」は、インドのホンダカーズインディアが生産するグローバルモデルである。導入から1年がたち、2025年3月6日に初の一部改良を受けた(参照)。

今回の一部改良では、「Z」と「Z+」グレードのインパネ下部とリアドアのインナーパネルにソフトパッドを追加。Z+では内装色にブラウンを設定し、「フルプライムスムースシート」が採用された。なかでもトピックは、両グレードに設定された特別仕様車「BLACK STYLE(ブラックスタイル)」の登場である。

この特別仕様車のブラックスタイルは、その名のとおりブラックのアクセントアイテムを用いたスタイリッシュな内外装が特徴だ。エクステリアでは「クリスタルブラック・パール」に塗られたアウタードアハンドルやシャークフィンアンテナ、電動格納式リモコンドアミラーに加え、「ベルリナブラック」カラーの17インチアルミホイールが目を引く。

インテリアを眺めると、「プライムスムース+ファブリック」にブラックステッチを加えたシートや、同じくブラックステッチの本革巻きステアリングホイール、ピアノブラック調のステアリングガーニッシュやドアライニングガーニッシュ、エアコンアウトレットガーニッシュなど、こちらもブラック基調でコーディネートされている。これらの仕様変更の狙いは、質感の向上だという。

ホンダが得意とする “ブラック”を冠した特別仕様車シリーズは、モデルによって「エディション」や「スタイル」と呼び名が使い分けられているものの、ブラック系のアイテムを用いて車両をドレスアップするという手法は共通している。「フィット」や「ZR-V」「オデッセイ」にもラインナップされる、いわばホンダの定番特別仕様車である。

表現は悪いが一般的に特別仕様車は、新鮮味が薄れたモデル中期~末期の話題づくりのためのカンフル剤的なラインナップともいえる。もっとも、いちユーザーの立場としてみれば、「スタイリッシュで装備が充実したお買い得モデル」としての側面もあり、検討モデルのラインナップにブラックスタイルやブラックエディションがあれば食指が動きそうだ。

2025年3月6日にホンダのコンパクトSUV「WR-V」の一部改良モデルと特別仕様車「BLACK STYLE(ブラックスタイル)」が発表された。今回一部改良が施されたのは「Z」と「Z+」グレードで、「X」については後日発表される予定だ。
2025年3月6日にホンダのコンパクトSUV「WR-V」の一部改良モデルと特別仕様車「BLACK STYLE(ブラックスタイル)」が発表された。今回一部改良が施されたのは「Z」と「Z+」グレードで、「X」については後日発表される予定だ。拡大
「Z+」グレードにラインナップされた特別仕様車「ブラックスタイル」のインテリア。ピアノブラック調のガーニッシュが組み合わされたブラックステッチ仕立ての本革巻きステアリングホイールのほか、同じくピアノブラック調のドアライニングガーニッシュやエアコンアウトレットガーニッシュなどで内装をグレードアップしている。
「Z+」グレードにラインナップされた特別仕様車「ブラックスタイル」のインテリア。ピアノブラック調のガーニッシュが組み合わされたブラックステッチ仕立ての本革巻きステアリングホイールのほか、同じくピアノブラック調のドアライニングガーニッシュやエアコンアウトレットガーニッシュなどで内装をグレードアップしている。拡大
「WR-V」の特別仕様車「ブラックスタイル」の足まわりは、「ベルリナブラック」の17インチホイールとブラックホイールナットで引き締められている。タイヤはベースモデルと変わらず215/55R17サイズとなる。
「WR-V」の特別仕様車「ブラックスタイル」の足まわりは、「ベルリナブラック」の17インチホイールとブラックホイールナットで引き締められている。タイヤはベースモデルと変わらず215/55R17サイズとなる。拡大
「WR-V」の特別仕様車「ブラックスタイル」では、外板色にかかわらずシャークフィンアンテナが「クリスタルブラック・パール」に塗られる。
「WR-V」の特別仕様車「ブラックスタイル」では、外板色にかかわらずシャークフィンアンテナが「クリスタルブラック・パール」に塗られる。拡大
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フロンクスは現行スズキSUVの頂点

WR-Vの導入から1年で仕様変更が行われたり特別仕様車が投入されたりした背景には、スズキがインドから輸入しているコンパクトSUV「フロンクス」(参照)の存在があることは明白であろう。スズキ・フロンクスのボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1765×1550mmとWR-Vよりはひとまわり小さいが、FF車が254万1000円、4WD車が273万9000円という価格設定である。

対するホンダWR-Vの一部改良モデルの価格は、「Z」グレードが239万8000円、「Zブラックスタイル」が248万3800円、「Z+ブラックスタイル」が258万0600円となり、200万円台のエントリーSUVとしてみれば、ともにインド生まれのWR-Vとフロンクスはよきライバルといえそうだ。

ただ、確かに価格的にはライバル視できても、実際に比べていけば、両者の特徴とメーカーサイドの狙いは車両キャラクターの違いとして浮かび上がってくる。

例えば駆動方式。WR-VはSUVスタイルではあるものの、FF車のみのラインナップと割り切っている。フロンクスはスズキブランドのフラッグシップSUVという役割を担うこともあり、FF車と4WD車をラインナップ。軽自動車やコンパクトハイトワゴンユーザーの上級移行にも対応したいはずである。

パワートレインはWR-Vが最高出力118PSの1.5リッター直4ガソリンエンジンであるのに対して、フロンクスは最高出力101PSの1.5リッター直4ガソリンエンジンに同3.1PSのマイルドハイブリッド機構を組み合わせている。トランスミッションは前者がCVTで後者が6段AT。WLTCモードの燃費値はWR-Vが16.2km/リッター、フロンクスはFF車が19.0km/リッター、4WD車が17.8km/リッターと公表されている。

スズキブランドのフラッグシップモデルたるポジションにふさわしい快適装備の充実や、ADASの全部載せもフロンクスの特徴である。ここにホンダブランドのSUVラインナップのなかでエントリークラスを担当するWR-Vと、現行スズキSUVの頂点に位置するフロンクスの違いが大きく表れる。

両モデルの装備や数値を並べてみても、そうした印象は変わらない。WR-Vは必要なものはそろっているが、どちらかといえば実用性重視。いまどき軽自動車にも装備されるシートヒーターは、上級グレードであっても用意はない。いっぽうワイヤレス充電器、電動パーキングブレーキおよびブレーキホールド機能、前席シートヒーターなどが標準で採用されるフロンクスは「サイズは小さいけれど、スズキを代表する装備充実のフラッグシップSUV」といえそうだ。

2024年10月16日に発売されたスズキの新型コンパクトSUV「フロンクス」。インド生産の輸入車で、2023年1月の「Auto Expo 2023」においてグローバルデビューした。フロントの灯火類は、上部に備わるのがLED式のデイタイムランニングランプ/ポジションランプ/ターンランプ、下部に備わるのがハイビーム/ロービームとなる。
2024年10月16日に発売されたスズキの新型コンパクトSUV「フロンクス」。インド生産の輸入車で、2023年1月の「Auto Expo 2023」においてグローバルデビューした。フロントの灯火類は、上部に備わるのがLED式のデイタイムランニングランプ/ポジションランプ/ターンランプ、下部に備わるのがハイビーム/ロービームとなる。拡大
「スズキ・フロンクス」は、「扱いやすいクーペスタイルSUV」をコンセプトとしたコンパクトモデル。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1765×1550mmとなる。リアビューでは、シャープで先進的なイメージを表現したという横一文字のテールランプが目を引く。
「スズキ・フロンクス」は、「扱いやすいクーペスタイルSUV」をコンセプトとしたコンパクトモデル。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1765×1550mmとなる。リアビューでは、シャープで先進的なイメージを表現したという横一文字のテールランプが目を引く。拡大
「フロンクス」のインテリアはブラックとボルドーの2トーンでコーディネートされる。これは外板色にかかわらず、全車共通の仕様となる。高輝度シルバー塗装やパールブラック塗装を施すことで質感の向上を図ったディテールもセリングポイントだ。
「フロンクス」のインテリアはブラックとボルドーの2トーンでコーディネートされる。これは外板色にかかわらず、全車共通の仕様となる。高輝度シルバー塗装やパールブラック塗装を施すことで質感の向上を図ったディテールもセリングポイントだ。拡大
「フロンクス」の室内。コンパクトな車体でありながら、後席の足もとにはゆったりとした空間を確保。快適性も重視しており、かさ増ししたダッシュインナーサイレンサーや遮音壁などをボディー各所に配置することで、高い静粛性を実現しているという。
「フロンクス」の室内。コンパクトな車体でありながら、後席の足もとにはゆったりとした空間を確保。快適性も重視しており、かさ増ししたダッシュインナーサイレンサーや遮音壁などをボディー各所に配置することで、高い静粛性を実現しているという。拡大
「フロンクス」の荷室容量はフロアボード装着時が210リッター、非装着時では290リッターとなる。後席の背もたれには60:40の分割可倒機構が備わっている。
「フロンクス」の荷室容量はフロアボード装着時が210リッター、非装着時では290リッターとなる。後席の背もたれには60:40の分割可倒機構が備わっている。拡大

WR-Vは女性ユーザー多し

導入当初からホンダ関係者が「とにかく競争力のある価格設定にしたい」とコメントしているように、WR-Vはスクエアで分厚く力強いSUVテイストのエクステリアと、ゆとりあるキャビン、しっかりと荷物が積めるラゲッジスペースを有しながら、250万円前後の手が届きやすい価格を実現した。ただ、その割り切りは、フロンクスの登場によって揺らいだ。フロンクスが思いのほか“装備マシマシ”できたからだ。

WR-Vの一部改良モデルでは前述のとおりZとZ+グレードのインパネ下部とリアドアのインナーパネルにソフトパッドを追加し内装の質感を向上させた。これはもともとのインド仕様車「エレベイト」には採用されていたもので、今回の一部改良のための新規ものではない。とはいえ、導入当初はコストを優先し省かれた、あるいは「なくてもイケるか」と考えられたアイテムだ。これは「まずはできるだけ安く」から、「安くても見栄えと質感の底上げを図る」への方向転換であり、同時にさらなる商品力のアップが定番特別仕様車のいち早い設定につながったはずだ。

もっとも、WR-Vにブラックスタイルが追加設定されるのは既定路線。それが導入からわずか1年で設定されたというところに、ホンダの「フロンクスではなくWR-Vに注目してもらいたい」という強い意志を感じるのである。

WR-Vのユーザープロフィールを聞くと、その約半数がこれまでホンダ車以外に乗っていた新規顧客で、8割近くが純ガソリン車からの買い替えであるという。購入動機の1位がスタイルや外観デザインを挙げ、2位に車両価格が入っていた。ミニバン卒業組の子離れ夫婦を筆頭に、20代から30代の女性からの支持も多いそうだ。「力強いデザインが特徴のSUVにこの価格で乗れるのなら」が決め手になったことは想像に難くない。ちなみに「ヴェゼル」よりも女性比率は高いという。

発売から約2週間で1万台の受注を突破したフロンクスの目標販売台数は月間1000台。対するWR-Vは、導入当初の目標販売台数は月間3000台である。フロンクスは2024年10月16日の販売開始から2025年3月までの約5カ月間の新車登録台数が目標を軽く超える1万0792台、WR-Vは2024年4月から2025年3月までの新車登録台数が3万9069台と順当である(いずれも自販連調べ)。果たしてこの対決の行方やいかに。両モデルとも「インドでつくっていて大丈夫?」と聞かれることが多いけれど、フロンクスはまぎれもなくスズキの、WR-Vはしっかりとホンダのクオリティーを感じる仕上がりなので、ご安心を。

(文=櫻井健一/写真=本田技研工業、スズキ/編集=櫻井健一)

2024年10月16日に行われた「フロンクス」の発表イベントに登壇したスズキの鈴木俊宏社長。日本への導入にあたって、「日本の道路事情に合わせたサスペンションのチューニングや、降雪地域での使用を考慮した4WD車の設定など、つくり込みをしっかり行いました」とコメントした。
2024年10月16日に行われた「フロンクス」の発表イベントに登壇したスズキの鈴木俊宏社長。日本への導入にあたって、「日本の道路事情に合わせたサスペンションのチューニングや、降雪地域での使用を考慮した4WD車の設定など、つくり込みをしっかり行いました」とコメントした。拡大
「スズキ・フロンクス」のフロントビュー。ショート&ワイドなディメンションで、バックドアが大きく傾斜したクーペライクなフォルムが特徴的だ。前後のフェンダー形状や上下2段式のフロントランプデザインなどで力強さや存在感を表現している。
「スズキ・フロンクス」のフロントビュー。ショート&ワイドなディメンションで、バックドアが大きく傾斜したクーペライクなフォルムが特徴的だ。前後のフェンダー形状や上下2段式のフロントランプデザインなどで力強さや存在感を表現している。拡大
「ホンダWR-V」のフロントビュー。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4325×1790×1650mmで、これは「ホンダ・ヴェゼル」とほぼ同じとなる。ヴェゼルと変わらないボディーサイズなのに、ひとクラス下の価格設定がWR-Vの大きなセリングポイントになっている。
「ホンダWR-V」のフロントビュー。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4325×1790×1650mmで、これは「ホンダ・ヴェゼル」とほぼ同じとなる。ヴェゼルと変わらないボディーサイズなのに、ひとクラス下の価格設定がWR-Vの大きなセリングポイントになっている。拡大
「WR-V」の「Z」と「Z+」グレードには、新たにブラウンの内装色を設定。インパネ下部とリアドアのインナーパネルにもソフトパッドを用いるなどして質感の向上を図っている。
「WR-V」の「Z」と「Z+」グレードには、新たにブラウンの内装色を設定。インパネ下部とリアドアのインナーパネルにもソフトパッドを用いるなどして質感の向上を図っている。拡大
「Z+」グレードに、座り心地や手触りにこだわった「フルプライムスムースシート」を採用。上質な室内空間を演出するほか、汚れやシワに強い機能性の高さも魅力と紹介される。
「Z+」グレードに、座り心地や手触りにこだわった「フルプライムスムースシート」を採用。上質な室内空間を演出するほか、汚れやシワに強い機能性の高さも魅力と紹介される。拡大
櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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