第850回:10年後の未来を見に行こう! 「Tokyo Future Tour 2035」体験記
2025.11.01 エディターから一言 拡大 |
「ジャパンモビリティショー2025」の会場のなかでも、ひときわ異彩を放っているエリアといえば「Tokyo Future Tour(トーキョーフューチャーツアー)2035」だ。「2035年の未来を体験できる」という企画展示のなかでもおすすめのコーナーを、技術ジャーナリストの林 愛子氏がリポートする。
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VR技術で未来を体験
道路走行中に緊急車両が近づいてきたら、道路の左にクルマを寄せて一時停止する。同じシチュエーションが空で起きたら、どうすればいいだろう? ――そんな未来の交通社会を体感できるのが、西展示棟1階・西2ホールで催されている「Tokyo Future Tour 2035」だ。ここは「未来はみんなでつくるもの」をテーマにしたエリアで、今から10年後、すなわち2035年の都市・交通・ライフスタイルを見たり触れたりすることができる。
冒頭の空の話はSkyDrive(スカイドライブ)の体験展示によるもの。ブースには2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)でデモフライトを披露した、空飛ぶクルマ「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)」のフルスケールモックを用意。実際に飛ぶわけではないし、テーマパークのアトラクションのように機体が動くこともないが、眼前の巨大スクリーンには東京のリアルな街並みが広がり、しっかり画面を見つめれば没入体験ができた。リアルな風景のなかで実際に起こりそうなイベントが発生することで、「もしも自分が空で移動しているときに、こういったシチュエーションになったらどうするだろう」とイメージが広がっていく。
この体験搭乗は予約制で、ジャパンモビリティショー公式アプリにて朝8時以降に当日分の予約枠が公開となる。なお、外からの機体と巨大スクリーンの見学は予約不要。大阪・関西万博で機体を見そびれた方は、この機会にぜひ、そのスケール感を味わってほしい。
もうひとつ、おすすめの体験モノといえば、ソニーグループによるモビリティーエンターテインメント「VR Cockpit」のプロトタイプ。使用する車体はレクサスのコンセプトモデル「スポーツ コンセプト」で、リアルな運転感覚を味わいながら、PlayStation®5/PlayStation®4用ソフトウエア『グランツーリスモ7』を楽しむというぜいたくなゲーム体験ができる。ただ、ソニーといえば今回はソニー・ホンダモビリティの出展はなく、ソニーとモビリティーの接点を感じられる場がここだけというのは寂しい限りだ。
モビリティーにはいろいろな意味がある
ゲーム感覚という意味では、外骨格ロボットを着用して戦うテクノスポーツ「R-FIGHT」も面白い。「誰もが楽しめる人機一体の新たなスポーツの実現」を目指す超人スポーツプロジェクトの一環で、使われているのは、人体の機能を拡張するテクノロジーの一種だ。自動車によって人間の行動範囲が格段に広がったように、こうしたテクノロジーが人間の可能性を広げ、新たな価値や豊かさをもたらす可能性は十分に考えられる。モビリティー(mobility)という言葉には可動性という意味合いもあり、広い意味でモビリティーを体感できる企画だった。
最後に、モビリティーは人間だけではなくモノの移動も含むことから、新たな物流の話題に触れておきたい。国土交通省では道路空間に物流専用スペースを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手段によって荷物を運ぶ新たな物流システム「自動物流道路(Autoflow Road)」の実証実験を予定している。トヨタのウーブン・シティーでも物流専用道路の計画があるが、人間の移動と物流を切り離すことで、交通の安全性向上と物流の生産性向上が期待できる。
「Tokyo Future Tour 2035」と併せて開催されている「Startup Future Factory」では、世界初のリニアモーターを使用した都市型立体ロボット倉庫を開発した、CUEBUS(キューバス)がブース展示を行っている。その内容は、地下に整備された物流専用道路を搬送用車両が24時間365日行き交うというもの。ポイントはバッテリー非搭載車両で、路面に設置したリニアモーターで稼働する点だ。車両はシンプルで、既存の無人搬送車に付きまとう諸問題を回避できる。もちろん物流のドライバー不足などの問題にも貢献できるだろう。
人が空を飛び回り、物資が地下を駆け巡る社会になったら、そこで何がしたいだろうか。未来の東京に生きる自分を想像しながら、ジャパンモビリティショーを楽しんでほしい。
(文=林 愛子/写真=林 愛子、webCG/編集=堀田剛資)
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林 愛子
技術ジャーナリスト 東京理科大学理学部卒、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)。先進サイエンス領域を中心に取材・原稿執筆を行っており、2006年の日経BP社『ECO JAPAN』の立ち上げ以降、環境問題やエコカーの分野にも活躍の幅を広げている。株式会社サイエンスデザイン代表。
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