欧州メーカーもホンダも大損 EV政策はなぜ急加速から“大コケ”に至ったか?
2026.03.30 デイリーコラムEVシフト自体は“当然”
多くの自動車メーカーが、2025年12月期または2026年3月期の決算で、莫大(ばくだい)な損失を計上している。
いずれも主因はEVで、代表的なのはこの4社だ。
- ホンダ:最大2.5兆円の損失
- ステランティス:4兆円の損失
- ゼネラルモーターズ:1兆1000億円の損失
- フォード:3兆円の損失
こんな損失を出したら、そのうち倒産しちゃうんじゃ? と思ってしまうが、これらは、これまでのEVへの投資の回収を部分的にあきらめ、経理上損失扱いにしただけ。個人でいえば、仮想通貨にブチ込んだ余剰資金が泡と消えたみたいなもので、ただちに経営がぐらつくことにはならない、だろう。
しかしなぜ、EV開発はかくも急速に進められ、急減速に至ったのか。
自動車メーカー各社の電動化への傾斜は、ある意味当然だった。今後クルマの電動化が進むのは、エネルギー効率からみれば遅かれ早かれ当然で、後れを取れば負け、のはずだった。
つまり、ネズミが沈没船から逃げ出すようなもので、あえて積極的な電動化を避け、内燃エンジンにこだわるマツダのような選択こそ蛮勇。源義経じゃないんだから、普通の武将はそんな戦略は採らない。
ではなぜEV需要は急減速したのか。
理由を挙げればきりがないが、わかりやすく言えば、次の2点じゃないだろうか。
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優れていても「欲しくない」
【その1】積極的にEVを欲しがる人が、思ったよりも少なかった
経済記事を見ていると、誰もが「クルマの電動化は既定路線」と書いているが(私も書いてますけど)、そのなかで実際に自家用車をEVに買い替えた人は、どれくらいいるんだろう、といつも思う。自分は買ってもいないのに無責任だろ(私もです)!
カーマニアの私は、EVが欲しいとはコレッポッチも思わない。EVの走りがいいのはよく知っているけれど、EVは充電という大変めんどうくさい作業が必須で、自由の翼をもがれてしまう。
近所の買い物とか日帰りレジャー、あるいは近場の通勤に限定して使うなら、EVは内燃エンジン車より優れているけど、限定的な用途にしかクルマを使わない人が、「EVに買い替える」という冒険的消費をあえて行う確率は、まだそれほど高くない。それは日本に限らず、全世界共通ではないか(中国のような専制国を除く)。
EVは、家庭用ソーラー発電に近い存在のような気がする。長い目で見ればトクかもしれないし、環境負荷も低いかもしれないけど、誰もが設置するわけじゃない。もちろん趣味性もない。
日本の一戸建て住宅のソーラー発電普及率は、現在1割くらい。EVの普及率(保有車全体に占める割合)も、全世界で1割くらいのところでいったん減速した――のかもしれない。
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とっくに勝負はついている!?
【その2】中国が車載用バッテリーの生産を支配したから
現在、全世界のEVの約7割が中国にあるが、車載用バッテリーの生産も、世界の7割強を中国製が占めている。あとは2割が韓国で、日本は数%。あれだけEV化を世界に強制(?)していたEUはほぼゼロだ。中国製が、コスト競争力で完全なる勝利をおさめたのである。
EV化を進めることは、ほぼイコール、中国製の車載バッテリーを積むこと。多くの自動車メーカー、なかでも欧州のメーカーは、積極的にEV化を進めることで市場支配を強めようとしたが、実際には中国の支配が強まっただけだった。
これじゃ、買うほうもつくるほうもなんだか元気が出ないし、補助金も出なくなるよね!
日本はまだEVに補助金をたんまり出してるけど、それでも先進国中ブッチギリでEV販売率が低いのは、喜ぶべきことなのかどうか。
やっぱり最終的には、大部分のクルマがEVになるんでしょう、たぶん。つまりその時は、中国が世界を支配するってことだ。今から大逆転するには、奇跡が必要のような気がする。ガックリ。
(文=清水草一/写真=本田技研工業、ソニー・ホンダモビリティ、webCG/編集=関 顕也)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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