第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す
2026.10.02 エディターから一言 拡大 |
2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」(参照)。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
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10年ぶりのニューモデルが登場
横浜ゴムのスタッドレスタイヤが初めてローンチされたのは1985年のこと。当初は「ガーデックス」を名乗っていたそのブランドが、氷上性能の向上とともに「アイスガード」へと名称を変えて以降、8世代目にあたる最新の「アイスガード8」を発売したのは2025年9月だった(参照)。
今回紹介するのはそこからの派生バージョンといえるアイスガード8 SUVで、製品名からも明らかなように近年隆盛を極めるSUV向けに特化したアイテムである。横浜ゴムは「SUV用」と銘打ったスタッドレスタイヤ「アイスガードSUV G075」を用意していたが、こちらの発売は2016年の9月。すなわち、実に10年ぶりのニューモデルとなる。
「氷上性能を一貫して追求」と開発の歴史を自らそう語る横浜ゴムのスタッドレスタイヤだが、氷上性能の向上を目指して接地面の拡大に走ると、“排水路”となるグルーブが犠牲になりシャーベット路面でのハイドロプレーニング現象が悪化してしまう可能性も考えられるなど、これまでのやり方では限界も見え始めた。
そこで「接触密度」と「接触面積」という視点から氷とゴムの接触を最大化し、氷上性能を革新的に高めようというのが、アイスガード8で初採用された「冬テック」と呼ばれる新技術コンセプトだ。アイスガード8 SUVもこの考え方を踏襲し、さらに車両重量が重いうえに、雪上走行の機会も多い(=新雪に踏み込む可能性が高い)と想定されるSUVならではの特性も踏まえつつ、アイスガード8譲りの高い氷上性能を模索したという。
かくしてこのタイヤではコンパウンド、トレッドパターン、構造のいずれもが改めて専用開発されることになった。
進化の幅の大きさを連想させるデータ
まず注目すべきは、新たに導入されたコンパウンドである。アイスガード8でも採用された「冬ピタ吸水ゴム」をベースに、SUVに適した剛性感とミクロレベルのしなやかさを両立させる「冬ピタ吸水ゴムSUV」を専用開発。これまで困難とされていた吸水素材「水膜バスター」の小型化に成功し、その吸水素材を高密度に配合することで氷とゴムの接触点を大幅に増加させている。ただ、同コンパウンドは「乗用車に用いるには硬すぎる」とのことで、「ブロック全体の剛性を改めてSUV向きに最適化」したと説明される。
トレッドパターンは、アイスガード8以上の数となる「ラグ溝倒れ込み抑制サイプ」や相互に支えるブロック形状、ベルト状の大型センターリブなどを採用し、一見してアイスガード8とは異なる新デザインに。アイスガード8にはない排雪性に優れる方向性パターンを取り入れるなど、雪上性能の高さにより注力されていることがうかがえる仕上がりである。
さらに、ショルダー部分にエッジが利いた専用プロファイルを採用することで、ヨコハマの同サイズSUV用スタッドレスタイヤのなかで最大の接地幅を確保。高荷重化や走行速度の高速化にも対応する専用の内部設計も採用する。これらの特徴は、SUV向けをうたう最新スタッドレスタイヤのメインストリームたる印象だ。
従来品との比較ではブロック剛性が16%アップ、接地面積がプラス3%、溝エッジ量がプラス19%となり、これらの数値も「ヨコハマSUV用スタッドレスタイヤ史上最大」というフレーズで紹介される。10年ぶりの刷新という点を差し引いても、進化の幅の大きさを連想させるデータが目白押しである。
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雪上性能はアイスガード8 SUVのほうがやや有利
そんなヨコハマ・アイスガード8 SUVを「トヨタ・ハリアー」や「マツダCX-60」「メルセデAMG GLC43 4MATIC」といったさまざまな4WDモデルに装着。北海道・旭川に位置する横浜ゴムの冬タイヤ用テストコース「TTCH(Tire Test Center of Hokkaido)」で試走を行った。
圧雪ハンドリング路や屋内氷盤試験路・旋回路などでの試走の一部にはアイスガードSUV G075との比較メニューが用意されていたものの、前述のとおりこちらは2016年デビューのモデルだ。テストコース内のあくまでも限られた条件下でのフィーリングチェックとなり、もちろん他社製品との比較報告も不可能だが、それでもアイスガード8 SUVは全項目で好印象をもたらした。
特に大幅な性能向上を実感できたのが、ハリアーを用いての氷盤試験路・旋回路での試走であった。これは現場で実測された30km/hからの完全停止距離や、旋回路での周回ラップタイムの数値でも証明された。なかでも10m~22mまでの半径で試験が可能という旋回路では、制限時間内でぐるぐると周回を重ねていく際の“目の回りかた”の違いで新旧のタイヤ違いによる絶対的なグリップ力の差を体感できたのは意外な発見でもあった。
一方、さまざまな車種で圧雪路上を走行すると、スタート時のグリップ感や操舵時の応答性、舵が利き始めた後の後輪の追従性、制動性能などがどれも総じて好感触。レーンチェンジやスラローム走行にはハリアーを用いてアイスガードSUV G075との比較の場も用意されていたが、そうしたシーンでは向きの変わり方やスライド後のグリップ回復の早さでアイスガード8 SUVが勝り、ブロック剛性の高さをイメージさせられることにもなった。
アイスガード8 SUVには一部ボリュームゾーンでアイスガード8とオーバーラップするサイズがあるものの、「氷上性能では後者がわずかに勝り、逆に雪上性能では前者の8 SUVがやや有利。ただし、価格面では8のほうが上(高価)になりそう」との声もTTCHの現場で耳にした。現時点では舗装路上での印象や、これもまた売り物とされている耐摩耗性、時間の経過による耐劣化性などには言及できないものの、プレミアムスタッドレスタイヤのリストには間違いなく名を連ねそうな一品である。
(文=河村康彦/写真=横浜ゴム/編集=櫻井健一)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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