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【スペック】全長×全幅×全高=4210×1790×1485mm/ホイールベース=2575mm/駆動方式=FF/交流同期モーター(最高出力115ps、定常出力69ps、最大トルク27.5kgm)/リチウムイオンバッテリー(26.5kWh)/航続距離=150km(開発車両)

フォルクスワーゲン・ゴルフ ブルーe モーション(FF/1AT)【試乗速報】

近未来のゴルフ 2010.06.23 試乗記 熊倉 重春 フォルクスワーゲン・ゴルフ ブルーe モーション(FF/1AT)


フォルクスワーゲンが2013年の市販化に向け開発中の、ゴルフの電気自動車「ゴルフ ブルーe モーション」。将来、エンジン車から主役の座を奪ってしまいそうな次世代車の実力を、中国・上海サーキットで試すことができた。
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中国でもこれからはEV

これまで予想していたより早く、世の中の流れがドッと変わりそうな雲行きになってきた。電気自動車(EV)への流れだ。ヨーロッパの巨人フォルクスワーゲン・グループも2010年6月初旬、折から万博が開かれている中国・上海に各国のジャーナリストを集めて次世代のEVを公開、「クルマの動力は最終的には電気になる」という考えを明らかにした。

すでに三菱とスバルからはEVが発売され、日産の本格攻勢も間近。トヨタはアメリカのテスラと手を結んだ。そのほかBMW 、ダイムラー、GM、フォード、BYD など各国の大手が軒並みEV戦線に名乗りを挙げたとあれば、もうクルマ界の動きは決まったも同然。10年後、EVが無視できない勢力になるのは確実だ。

今回フォルクスワーゲンが公開したのは、「ラヴィーダ」と「ゴルフ」のEVに「トゥアレグハイブリッド」の3車種。EVには“ブルーe モーション”の称号が付く。「ラヴィーダ」は中国で企画開発された、このところ勢力を伸ばしている現地の中産階級向けの小型セダンで、かつての「ゴルフIV」のプラットフォームを活用しており、乗った感じも記憶にある「IV」そのもの。

そのエンジンの代わりに最高出力85kW(115ps) 、最大トルク270Nm(27.5kgm)の永久磁石型同期モーターとリチウムイオン電池を積んだもので、当然スイ〜ッと強力かつ滑らかによく走る。フォルクスワーゲンが考えるいくつかの可能性の中で最も多い場合、10年後の中国の自動車の半分近くがEVになるかもしれないというから、これはテストケースとして大切な存在だろう(すでにスクーターの分野では、電動が最大多数になりかけている)。

中国の中産階級向け低価格路線の乗用車「フォルクスワーゲン ラヴィーダ」のEV仕様。
中国の中産階級向け低価格路線の乗用車「フォルクスワーゲン ラヴィーダ」のEV仕様。 拡大
「ラヴィーダ ブルーe モーション」のボンネットの中。モーターやインバーターなど基本コンポーネントは「ゴルフ ブルーe モーション」と共通だが、走行モード切り替えなどは省略されている
「ラヴィーダ ブルーe モーション」のボンネットの中。モーターやインバーターなど基本コンポーネントは「ゴルフ ブルーe モーション」と共通だが、走行モード切り替えなどは省略されている 拡大
「ラヴィーダ」は、「ゴルフIV」のプラットフォームをベースにつくられた中国専用のノッチバックセダン。
「ラヴィーダ」は、「ゴルフIV」のプラットフォームをベースにつくられた中国専用のノッチバックセダン。 拡大
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加速感は「ポロ」レベル

ビッグSUV「トゥアレグ」のハイブリッド版は、ガソリンエンジンと8段ATのほかにモーターを組み合わせたモデル。とりあえず電動で2kmだけ行けるモードもあるが、実質的には“電動補助付きエンジン車”。とにかく速さが最大の売り物だ。それも当然で、直噴3リッターV6スーパーチャージャー付きエンジンから333psを叩き出し、それにモーターも加えた合計最大トルクが580Nm(59.1kgm)と、ほとんど普通のエンジンの6000cc に匹敵するのだから、踏んだ瞬間ドビュ〜ンと空気の壁を切り裂いてしまう。数字では以前の最高級仕様W12に及ばなくても、実用域では最速のフォルクスワーゲンだ。この「トゥアレグハイブリッド」は近日中に日本でも発売される見込み。

そこで、ここでは日本で最も関心を引きそうな「ゴルフ ブルーe モーション」の印象を集中的に報告しておこう。もちろん車体のベースは現行の人気者「ゴルフVI」。そのフロントに「ラヴィーダ」と共通のモーターを積み、車室とトランクの床下にリチウムイオン電池を押し込んである。この電池は合計30モジュールの集合体で蓄積エネルギー量は26.5kWh 、総重量は315kg にも達するが、うまく平らに押しつぶしてあるので、室内もトランクもスペースは犠牲になっていない。それどころか、こういう搭載方法なのでFFのエンジン車より重量配分の前後バランスが良くなるばかりか、重心も下がるというメリットを生んでいる。

もちろん、運転した感じはEVそのもの。軽くアクセルを踏むだけで、回転ゼロから立ち上がる瞬間、すでに普通のエンジンの2700cc級に匹敵するトルクを生むから、アアア〜ッと驚く間もなく強烈に加速してしまう。100km/hを超えてからの伸びはガソリン仕様の「GTI」などに劣るが、ゼロ発進から100km/hまで11.8秒という加速タイムは、最新のTSIが登場するまでの「ポロ」に勝る。ちょっと市街地で暴れる程度なら、確実にこちらの方が素早い。

試乗会は、上海サーキットを舞台に行われた。
試乗会は、上海サーキットを舞台に行われた。 拡大
「ゴルフ ブルーe モーション」のボンネット内部。
「ゴルフ ブルーe モーション」のボンネット内部。 拡大
グリル中央の「VWエンブレム」を開けて充電用のプラグを差し込む。現状では急速充電には対応していない。
グリル中央の「VWエンブレム」を開けて充電用のプラグを差し込む。現状では急速充電には対応していない。 拡大

パドルでエンブレの効きを調整

この「ゴルフ」、標準的な使い方による航続距離は150kmと発表されているが、その裏では巧みな回生ブレーキの効果がある。ブレーキペダルを軽く踏むと、液圧でパッドを締めつける普通のブレーキが効く前に、モーターが電磁石式ブレーキ(普通のエンジンブレーキと同じ現象)として減速しながら発電機としても働き、バッテリーに電力を蓄えるのが回生ブレーキ。「ゴルフ ブルーe モーション」の場合、その効き方を強弱4段階に切り替えられる。

操作はガソリン仕様の一部モデルにあるシフトパドルを利用する。ステアリング左側のシフトダウン用パドルを引くと、その都度グッ、グッ、グッと減速度が強まるのを体感できる。また、コンソール上のボタンで走行モードの切り替えも可能。たとえば「コンフォート+」では85kW(115ps) のフルパワーだが、「ノーマル」を選ぶとモーター出力が60kW(82ps)に制限され、さらに「レンジ+」では50kW(68ps)となり、そのぶん距離を稼げたりする。おもしろいのは、このエコモードでも実際の速さに不満を感じないことだ。

もともと「ゴルフ」だから当たり前とはいえ、室内の細部まで、つくりはとっくに発売できるレベルにある。まだまだ実証実験を続けるつもりらしいが、もし日本に登場したら、ファンの視線を釘付けにするのは間違いない。都会のファッションとして目立ち度ナンバーワンの超小型車「Up! ブルーe モーション」ともども、これからのフォルクスワーゲンの新エネルギー戦略から、どうにも目が離せそうにない。

(文=熊倉重春/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

ダッシュボード全体の眺めはガソリン車とほとんど同じ。シフトレバーでDレンジのほか回生が強く効くBレンジを選べる。
ダッシュボード全体の眺めはガソリン車とほとんど同じ。シフトレバーでDレンジのほか回生が強く効くBレンジを選べる。 拡大
中央のナビ画面はエネルギーモニターも兼ねる。モニター右上は、あと96km走れることを示している。
中央のナビ画面はエネルギーモニターも兼ねる。モニター右上は、あと96km走れることを示している。 拡大
リモコン・ユニットでバッテリーの状態をチェック。エアコンの遠隔操作も可能
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