フォルクスワーゲン・ゴルフ ブルーe モーション(FF/1AT)【試乗速報】
近未来のゴルフ 2010.06.23 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフ ブルーe モーション(FF/1AT)フォルクスワーゲンが2013年の市販化に向け開発中の、ゴルフの電気自動車「ゴルフ ブルーe モーション」。将来、エンジン車から主役の座を奪ってしまいそうな次世代車の実力を、中国・上海サーキットで試すことができた。
中国でもこれからはEV
これまで予想していたより早く、世の中の流れがドッと変わりそうな雲行きになってきた。電気自動車(EV)への流れだ。ヨーロッパの巨人フォルクスワーゲン・グループも2010年6月初旬、折から万博が開かれている中国・上海に各国のジャーナリストを集めて次世代のEVを公開、「クルマの動力は最終的には電気になる」という考えを明らかにした。
すでに三菱とスバルからはEVが発売され、日産の本格攻勢も間近。トヨタはアメリカのテスラと手を結んだ。そのほかBMW 、ダイムラー、GM、フォード、BYD など各国の大手が軒並みEV戦線に名乗りを挙げたとあれば、もうクルマ界の動きは決まったも同然。10年後、EVが無視できない勢力になるのは確実だ。
今回フォルクスワーゲンが公開したのは、「ラヴィーダ」と「ゴルフ」のEVに「トゥアレグハイブリッド」の3車種。EVには“ブルーe モーション”の称号が付く。「ラヴィーダ」は中国で企画開発された、このところ勢力を伸ばしている現地の中産階級向けの小型セダンで、かつての「ゴルフIV」のプラットフォームを活用しており、乗った感じも記憶にある「IV」そのもの。
そのエンジンの代わりに最高出力85kW(115ps) 、最大トルク270Nm(27.5kgm)の永久磁石型同期モーターとリチウムイオン電池を積んだもので、当然スイ〜ッと強力かつ滑らかによく走る。フォルクスワーゲンが考えるいくつかの可能性の中で最も多い場合、10年後の中国の自動車の半分近くがEVになるかもしれないというから、これはテストケースとして大切な存在だろう(すでにスクーターの分野では、電動が最大多数になりかけている)。
加速感は「ポロ」レベル
ビッグSUV「トゥアレグ」のハイブリッド版は、ガソリンエンジンと8段ATのほかにモーターを組み合わせたモデル。とりあえず電動で2kmだけ行けるモードもあるが、実質的には“電動補助付きエンジン車”。とにかく速さが最大の売り物だ。それも当然で、直噴3リッターV6スーパーチャージャー付きエンジンから333psを叩き出し、それにモーターも加えた合計最大トルクが580Nm(59.1kgm)と、ほとんど普通のエンジンの6000cc に匹敵するのだから、踏んだ瞬間ドビュ〜ンと空気の壁を切り裂いてしまう。数字では以前の最高級仕様W12に及ばなくても、実用域では最速のフォルクスワーゲンだ。この「トゥアレグハイブリッド」は近日中に日本でも発売される見込み。
そこで、ここでは日本で最も関心を引きそうな「ゴルフ ブルーe モーション」の印象を集中的に報告しておこう。もちろん車体のベースは現行の人気者「ゴルフVI」。そのフロントに「ラヴィーダ」と共通のモーターを積み、車室とトランクの床下にリチウムイオン電池を押し込んである。この電池は合計30モジュールの集合体で蓄積エネルギー量は26.5kWh 、総重量は315kg にも達するが、うまく平らに押しつぶしてあるので、室内もトランクもスペースは犠牲になっていない。それどころか、こういう搭載方法なのでFFのエンジン車より重量配分の前後バランスが良くなるばかりか、重心も下がるというメリットを生んでいる。
もちろん、運転した感じはEVそのもの。軽くアクセルを踏むだけで、回転ゼロから立ち上がる瞬間、すでに普通のエンジンの2700cc級に匹敵するトルクを生むから、アアア〜ッと驚く間もなく強烈に加速してしまう。100km/hを超えてからの伸びはガソリン仕様の「GTI」などに劣るが、ゼロ発進から100km/hまで11.8秒という加速タイムは、最新のTSIが登場するまでの「ポロ」に勝る。ちょっと市街地で暴れる程度なら、確実にこちらの方が素早い。
パドルでエンブレの効きを調整
この「ゴルフ」、標準的な使い方による航続距離は150kmと発表されているが、その裏では巧みな回生ブレーキの効果がある。ブレーキペダルを軽く踏むと、液圧でパッドを締めつける普通のブレーキが効く前に、モーターが電磁石式ブレーキ(普通のエンジンブレーキと同じ現象)として減速しながら発電機としても働き、バッテリーに電力を蓄えるのが回生ブレーキ。「ゴルフ ブルーe モーション」の場合、その効き方を強弱4段階に切り替えられる。
操作はガソリン仕様の一部モデルにあるシフトパドルを利用する。ステアリング左側のシフトダウン用パドルを引くと、その都度グッ、グッ、グッと減速度が強まるのを体感できる。また、コンソール上のボタンで走行モードの切り替えも可能。たとえば「コンフォート+」では85kW(115ps) のフルパワーだが、「ノーマル」を選ぶとモーター出力が60kW(82ps)に制限され、さらに「レンジ+」では50kW(68ps)となり、そのぶん距離を稼げたりする。おもしろいのは、このエコモードでも実際の速さに不満を感じないことだ。
もともと「ゴルフ」だから当たり前とはいえ、室内の細部まで、つくりはとっくに発売できるレベルにある。まだまだ実証実験を続けるつもりらしいが、もし日本に登場したら、ファンの視線を釘付けにするのは間違いない。都会のファッションとして目立ち度ナンバーワンの超小型車「Up! ブルーe モーション」ともども、これからのフォルクスワーゲンの新エネルギー戦略から、どうにも目が離せそうにない。
(文=熊倉重春/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

熊倉 重春
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。





























