スズキ・アルトX (FF/CVT)【試乗速報】
軽くてエコな軽ライフ 2010.01.19 試乗記 スズキ・アルトX (FF/CVT)……102万9000円
5年ぶりにフルモデルチェンジした「スズキ・アルト」。より親しみやすいデザインに生まれ変わった新型の走りを試す。
第一印象は上々
スズキの公式サイトを覗いていたら、車名の由来を記したページが見つかった。それによると、「アルト(ALTO)」はイタリア語で“秀でた”“優れた”を意味することがわかる。1979年に初代アルトがデビューしたときには、47万円という低価格が優れた経済性を印象づけたが、7代目のアルトは、果たしてどうだろうか?
期待を胸に臨んだ試乗会で、新型アルトは裏切らなかった。軽自動車らしい高いコストパフォーマンスに加えて、燃費や走行性能のうえでも、一歩“秀でた”クルマに仕上がっていたのだ。
試乗会場で初めて見た実物は、優しいデザインが印象的。どちらかといえば無機的だった先代から一転し、新型のエクステリアは丸みを帯びたフォルムが親しみを感じさせる。インテリアも、シンプルで一体感のあるデザインがとても心地良く、私はこのクルマがいっぺんに好きになった。
走りも気持ちいい
試乗したのは、イメージカラーの“エアブルーメタリック”をまとう、最上級グレードの「X」。そのFF仕様は、新型アルトのなかで一番の低燃費(24.5km/リッター)を誇るだけに、個人的にも興味を持っていた。運転席に陣取り、ポジションを調整する。シートリフターやチルトステアリングがあるので、身体にあったポジションが得られるのはうれしい。運転席からの眺めはわりと開放的。ダッシュボードが水平基調のデザインを採用するからだろう、実際のサイズ以上に広く見えるのもいい。
さっそく走り出すと、力強いとはいえないまでも、出足の加速に不満はない。自然吸気の660ccエンジンは、最高出力54ps、最大トルクが6.4kgmと絶対的な数字こそ控えめだが、760kgの軽量ボディには十分な性能である。
組み合わされるCVTは、すでに「パレット」などにも搭載される副変速機付きのタイプ。ハイ、ロー、2段のギアの切り替えはクルマまかせで、いつ切り替わったのかわからないが、動きがスムーズなことは確かだ。
従来の3ATはいうまでもなく、現行の4ATに比べても広がったギア比のおかげで、スピードが上がってからもエンジン回転が抑えられ、室内が騒々しくならないのも好ましい。急な加速が必要な場合などには、やや物足りないなぁと思ったが、シフトレバー横のスイッチを押し、スポーツモードに切り替えると、エンジンが高回転に保たれ、物足りなさはほぼ解消された。
まだ走行距離が少ないためか足まわりに少し硬さが残るものの、比較的落ち着いた乗り味には好感が持てる。電動パワステも自然な感触だ。街なかの試乗ということで、ハンドリングを語ることはできないが、一方、狭い道での取り回しや駐車などの場面では、さすが軽! と思わず膝を打つほど扱いやすい。
|
エコロジーかつエコノミー
とびきりコンパクトなボディにもかかわらず、リアシートのスペースは十分広く、やさしい感触のシートも後席の印象を良くしている。さすがにラゲッジスペースは限られるが、それでも小型のベビーカーは収まるというし、後席に荷物を置いたり、後席を倒して荷室を広げることもできるから、4名フル乗車でなければそう困ることもないだろう。
|
たまたまこの日は雨の試乗になったが、リアホイールハウスから聞こえてくるスプラッシュ音が大きめなのと、FFモデルにはリアワイパーが装備されないことは、やや気になった。他に気になるといえば、チルトステアリングやシートリフター、分割可倒式リアシート、リアシートのヘッドレストといった装備が、最上級モデルのXだけにしか用意されないこと。そうなると、少なくとも私の場合はこのX以外に選択肢は見あたらない。ついでにいうと、FFモデルにも運転席シートヒーターを設定してほしい……。
|
そんな注文を並べたのは、新型アルトのデザインや基本性能の良さに好感を抱き、これならほしいと思ったからだ。少人数の移動であれば、気持ちよく、しかも効率的に使えるアルト。世間はハイブリッド車とエコカー減税ばかりに目がいっているが、小ささ、軽さを生かした軽自動車なら、大枚をはたくことなく、エコロジーかつエコノミーなカーライフが手にはいるわけで、せっかく日本に住んでいるなら、その恩恵を見逃す手はない。それで気持ちよく走れるのだから、いうことはないだろう。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
NEW
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。 -
NEW
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。



































