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【スペック】全長×全幅×全高=4435×1930×1252mm/ホイールベース=2650mm/車重=1690kg/駆動方式=4WD/5.2リッターV10DOHC40バルブ(525ps/8000rpm、54.0kgm/6500rpm)/価格=1994.0万円(テスト車=2376.0万円)

アウディR8 5.2 FSI クワトロ(4WD/6AT)【試乗記】

噂の大物 2009.09.10 試乗記 サトータケシ アウディR8 5.2 FSI クワトロ(4WD/6AT)
……2376.0万円

サーキット試乗会では「過激すぎる」という声もあがったV10エンジン搭載の「アウディR8」シリーズの最高性能版に、一般道で試乗した。
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不思議な加速感

都内某所、5.2リッターのV型10気筒エンジンをミドシップする「アウディR8 5.2 FSI」を前にして、複雑な心境。早く乗って確かめたいような、あまり乗りたくないような……。そんな気分になったのも、このクルマの評判をさんざん読んだり聞かされたりしたからだ。富士スピードウェイの試乗会でテストした同業者は口々に、「とんがっている」「リアの動きが神経質」「オーバーステア」と語っていた。

ズルッと滑ってハーフスピンしながらガードレールへ一直線、神々しいアルミスペースフレームとともに2000万円のスーパーカーが谷底へ??
そんなシーンを想像してしまう弱気を吹き飛ばしてくれるのが、野太くて張りのあるV10エンジンのエグゾーストノートだ。「ランボルギーニ・ガヤルド」と基本設計を同じくするこのエンジンは、「R8 4.2 FSI」に積まれる4.2リッターV8より一段硬質で、下腹に響く音を奏でてドライバーを盛り上げる。

のろのろと歩くようなスピードでも有効なトルクを発生し、回転マナーにも粗っぽさがないイマ風のエンジン特性はV8と共通。けれども、タコメーターの針が回転数が5000rpmを超えたあたりからの加速は、理知的な印象があった4.2リッターV8とは異なるパンチ力がある。ノイズがそれほど大きくなることなく、振動もほとんど感じないまま凄い勢いで前方に吸い込まれるのは不思議で新鮮な感覚だ。

V8モデルとの外観上の差異は小さい。フロントグリル内の格子のパターンが変わったことや、ボディサイドのエアインテークが拡大したことなど、V8とV10を2台並べて比較しないと違いはわかりにくい。高性能モデルであっても、ことさら外観を着飾らないあたりがアウディらしくクール。
V8モデルとの外観上の差異は小さい。フロントグリル内の格子のパターンが変わったことや、ボディサイドのエアインテークが拡大したことなど、V8とV10を2台並べて比較しないと違いはわかりにくい。高性能モデルであっても、ことさら外観を着飾らないあたりがアウディらしくクール。 拡大
シートの形状や全体の意匠など、インテリアもV8モデルから大きな変更点はない。ただし、タコメーターは8500rpmから赤の破線、9000rpmからレッドゾーンの表示となっている。V8モデルは8000rpmからレッドゾーンが始まっていたから、V10エンジンの高回転型の特性がわかる。
シートの形状や全体の意匠など、インテリアもV8モデルから大きな変更点はない。ただし、タコメーターは8500rpmから赤の破線、9000rpmからレッドゾーンの表示となっている。V8モデルは8000rpmからレッドゾーンが始まっていたから、V10エンジンの高回転型の特性がわかる。 拡大
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普通に流せば高級サルーン

低速でのマナーのよさは、「Rトロニック」というシングルクラッチ式セミATが洗練されたことの影響も大きい。アウディジャパン広報部によれば、2008年モデルからR8シリーズのRトロニックに改良が施されたとのことで、シフトショックやシフト時のタイムラグが大幅に減っている。特に発進してから微速前進、そろそろと走って信号待ち、みたいな都心部の走り方でもぎくしゃくを感じなくなったことは福音だ。

V10エンジン単体だとV8より33kg重くなり、クルマ全体だとV10モデルはV8モデルより約60kg重くなっている。けれども、ひらひらと軽快なスポーツカーらしい走行フィーリングと、しっとりした乗り心地という矛盾が両立している点はV8モデルから変わらない。どんな速度域でも乗り心地は快適。高速道路では80km/hくらいで流すよりも、速度を上げれば上げるほど安定感が増し、路面にピタッと吸い付くことも確認できた。6速での100km/h巡航だとエンジン回転は2500rpm。高級サルーン並みに室内は静かだ。

オプション装着されていた電子制御式ダンパー「マグネティックライド」は効果的に機能する。ノーマルの設定では、しなやかに上下動するサスペンションが路面の凸凹から受ける衝撃をさらりとかわす。一方「SPORT」モードへ切り替えると、サスペンションが硬くなるというよりも4本のタイヤがグッとドライバーに接近したように感じる。クルマ全体がソリッドかつコンパクトな存在になったような印象だ。

シフトレバー真下に位置する「SPORT」と書かれたスイッチを押すと、シフトスケジュールがスポーティな方向にふれる。SPORTモードには一長一短あり、「ババン」と素早くシフトダウンが決まる一方で、シフトアップ時のショックがやや気になる。個人的な感想としては、山道を軽く飛ばすぐらいの場面だったら、特にSPORTモードを選ばなくともノーマルの変速スピードで十分に楽しめる。


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4.2リッターV8に対して105ps増しの最高出力を得た5.2リッターV10エンジン。4.2リッターのV8と、この5.2リッターのV10のボア×ストロークは84.5mm×92.8mと共通。つまり、モジュールエンジンだ。ちなみに、リニューアルして3196ccになる前の3.2リッターV6(3122cc)のボア×ストロークも84.5mm×92.8mだった。
4.2リッターV8に対して105ps増しの最高出力を得た5.2リッターV10エンジン。4.2リッターのV8と、この5.2リッターのV10のボア×ストロークは84.5mm×92.8mと共通。つまり、モジュールエンジンだ。ちなみに、リニューアルして3196ccになる前の3.2リッターV6(3122cc)のボア×ストロークも84.5mm×92.8mだった。 拡大
V8モデルでは左右4本出しだったエグゾーストパイプが、V10モデルでは楕円形状の左右2本出しに変更された。
V8モデルでは左右4本出しだったエグゾーストパイプが、V10モデルでは楕円形状の左右2本出しに変更された。 拡大

痛快なハンドリングマシン

山道に入っても、“軽くてしっとりしている”という独特の乗り味は健在。基本骨格がわずか210kgというアルミスペースフレーム、アルミ製アームを用いたダブルウィッシュボーン、ショックアブソーバーのダンピング特性を変化させるマグネティックライドなどが一体となって、スポーツカーの新しいライド感覚を生み出している。

正直な話、山道を飛ばすぐらいだと痛快なターンインが味わえるだけで、オーバーステア傾向は感じられない。スパッとインを向いて、4つのタイヤがきれいに路面を捉えてキュッとコーナーを脱出する。シフトレバー根元にある「ESP OFF」スイッチを短く押すと「ASRがOFF/ESPがON」の状態になる。そのセッティングだと、通常時に85%のトルクが配分されるリアタイヤが一瞬ホイールスピンすることはあっても、そこから先は平和だ。

「ESP OFF」スイッチを長押しするとASRとESPの両方を完全にカットできるけれど、一般道では試すべきではないと判断。ESPをオンにした状態で山道でのスポーツドライビングを楽しむ限り、「R8 5.2 FSI」は洗練された乗り味とエッジの効いたハンドリングを両立するスーパースポーツだ。
ただ、このクルマの感想を伝えてくれた同業者たちに「そうそう、あのクルマ、オーバーステアだよね」と言えないのはちょっと寂しい。自分だけ人気ドラマを見逃して、翌日の会話についていけなかった時に似た気分。

(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

V10モデル専用デザインの10スポークホイールの隙間から、オプションのセラミックブレーキのキャリパーがちらりと見える。バネ下重量を4輪合計で約20kgも軽くするという。
V10モデル専用デザインの10スポークホイールの隙間から、オプションのセラミックブレーキのキャリパーがちらりと見える。バネ下重量を4輪合計で約20kgも軽くするという。 拡大
センターデフにビスカスカプリングを用いたR8のクワトロシステム(四駆装置)は、通常時は前後15:85のトルクを配分、状況に応じて前後30:70にまでフロントへのトルク配分を高める。
センターデフにビスカスカプリングを用いたR8のクワトロシステム(四駆装置)は、通常時は前後15:85のトルクを配分、状況に応じて前後30:70にまでフロントへのトルク配分を高める。 拡大
【テスト車のオプション装備】
カーボンデコラティブパネル=32.0万円/マグネティックライド=27.0万円/ステッチング+レザーパッケージ2=87.0万円/アルカンタラヘッドライニング/カーボンシグマサイドプレート=29.0万円/カーボンエンジンカバー=46.0万円/セラミックブレーキ=140.0万円
【テスト車のオプション装備】
カーボンデコラティブパネル=32.0万円/マグネティックライド=27.0万円/ステッチング+レザーパッケージ2=87.0万円/アルカンタラヘッドライニング/カーボンシグマサイドプレート=29.0万円/カーボンエンジンカバー=46.0万円/セラミックブレーキ=140.0万円
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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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