スバル・レガシィシリーズ【試乗速報】
世界を向いたグランドツアラー 2009.05.29 試乗記 スバル・レガシィB4 2.5i Lパッケージ(4WD/CVT)/ツーリングワゴン 2.5GT Sパッケージ(4WD/5AT)/アウトバック 3.6R(4WD/5AT)……313万9500円/370万1250円/392万1750円
20年目を迎え、パッケージングからデザインまで“史上最大の変更”を受けた、新型「スバル・レガシィ」。
その乗り味の変化を、3つの車型で確かめた。
日本のグランドツアラー
自分からそういうだけあって、“グランドツアラー”という言葉が一番似合う日本車は「スバル・レガシィ」である。そのせいか、レガシィの取材というと、決まって1000km以上の長旅になるのだが、終わりはいつも「このクルマでよかった!」と思うことからも、そのグランドツアラーぶりがうかがえる。
そんなレガシィがフルモデルチェンジして5代目になった。しかも、主力の「ツーリングワゴン」に加えて、セダンの「B4」、クロスオーバーの元祖である「アウトバック」が、どどんとイッキに変わったのである。
どこが変わったかを書き連ねると、それだけでページが尽きそうなので、詳しく知りたい方はまず新車ニュースをご覧いただくとして、ここではさっそく、ツーリングワゴン、アウトバック、そして、B4の3台に試乗して見えてきた新型レガシィの素顔に迫ることにしよう。
試乗の起点になった「CAR DO SUBARU 三鷹」には、ボディタイプごとに5台ずつのテストカーが用意されていた。実車を見るのはこれが初めてだったが、先代に比べるとボディサイズ、フロントマスクとも、格段に存在感を増した印象である。と同時に、これはアメリカ人にウケそうだなぁと思った。実際、レガシィのメインマーケットは北米であり、日本の倍以上の販売を見込んでいるという。果たして中味もアメリカンなのだろうか?
疑問を胸に、「ツーリングワゴン 2.5GT Sパッケージ」「アウトバック 3.6R」、そして「B4 2.5i Lパッケージ」をチョイスして、最初の目的地である河口湖を目指す。まずはツーリングワゴンに乗り込んだ。
2.5GT Sパッケージは、水平対向4気筒ターボエンジンとビルシュタイン製ダンパーを採用するツーリングワゴン最強グレード。エクステリアでは18インチホールと225/45R18タイヤ、インテリアではカーボン調パネルを装着するのが特徴である。
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最も魅力的なモデル!?
先代よりも座面が高くなったシートに収まり、スタートボタンを押すと、スバル自慢のフラットフォーが目覚めた。しかし、アイドリングによるノイズや振動は予想以上に小さい。
スバルはこれまで、ボディにエンジンを直接マウントしてきたが、新型レガシィでは“クレードル構造マウント”と名づけたサブフレームを介して、エンジンとトランスミッション、さらにはフロントサスペンションやステアリングシステムをボディにマウントする構造に変更。これがパワートレインからのノイズや振動をボディに伝えにくくしているというのだが、その効果はてきめんで、アイドリング時だけでなく走行中も、キャビンに伝わるノイズや振動は低く抑え込まれていた。
走り出すと、ビルシュタイン製ダンパーを得たサスペンションが、巧みな足さばきを見せる。一般道では予想以上にマイルドな乗り心地を示し、荒れた路面でも18インチタイヤの動きを制して、ショックの“かど”をうまく丸めてくれるから不快さとは無縁だ。
調布ICから中央高速に入ると、さらにフラットさを増した乗り心地に恐れ入る。直進性にも優れているから、長旅の友にはもってこいだ。残念ながら、コーナリング性能をじっくり試す機会はなかったが、相変わらずの軽快さとロールの安定感は確認できた。比較的舵角が小さいとき、電動パワーステアリングのフィーリングが少し不自然なのが気になったものの、快適性と軽快さをうまく両立した2.5GT Sパッケージは、実に高い完成度を持つクルマだった。
ツーリングワゴン 2.5GT Sパッケージを特徴づけるもうひとつの要素、すなわち、2.5リッターターボもなかなかのできだ。排気量がアップして、ごく低回転からトルクに余裕があることに加え、踏めばどこからでも力強い加速を見せるのは頼もしいものだ。スムーズに回転を上げるのもこのエンジンの特徴で、トルク特性はフラット、水平対向エンジン独特の緻密なサウンドも控えめだから、ドラマチックな盛り上がりを求める人には少々物足りないかもしれないが、反面、扱いやすいエンジンであることに変わりはない。5段ATの動作も滑らかで、短時間の試乗では不満は見つからなかった。
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3.6リッターは必要か?
河口湖IC近くの待ち合わせポイントでアウトバック 3.6Rに乗り換えると、自然吸気の3.6リッターフラット6が、2.5リッターターボにも増して全域でスムーズかつレスポンスに優れたエンジンであることがすぐにわかる。そして、レブリミットに向かって気持ちよく吹け上がるという点では明らかに2.5リッターターボを凌ぐフィーリングだ。ただ、絶対的なトルクで優る2.5リッターターボに不満はなく、大排気量・マルチシリンダーエンジンを好む北米市場はともかく、日本ではアウトバックにも、2.5リッターターボを積む「2.5GT」がほしいところである。
アウトバック 3.6Rの走りは、最低地上高が高いせいもあって、走行状況によっては穏やかなピッチングが発生、またマッド&スノーのタイヤがドタドタと粗い動きを見せる場合もあるが、あくまで挙動は乗用車的で、快適さも十分なレベルである。一方、200mmと高めの最低地上高と4WDのおかげで得られる、未舗装の凸凹道に踏み入れる際などの安心感は、前述の弱点をカバーするに余りある魅力といえる。
そうそう、見逃せないのが、ツーリングワゴンとアウトバックが誇る高い居住性。とくに後席は足を組めるほどレッグルームに余裕があることに加えて、十分すぎるほどのヘッドルームが確保されている。リクライニングができるのもうれしい点だ。ラゲッジスペースは、奥行きこそ旧型よりわずかに短いが、逆に高さや幅は旧型より広がったぶん、見た目も大きく、荷室容量は61リッター増えて520リッターとなった。荷室側から後席が倒せたり、床下にトノカバーが収納できるのも、気が利いている。
ひとクラス上のクルマに成長
最後に試したのがB4 2.5i Lパッケージ。注目はエンジン、トランスミッションともに新しくなったパワートレインで、エンジンは自然吸気の2.5リッター4気筒SOHC、そして、トランスミッションは“リニアトロニック”と名付けられたCVTである。
トルクコンバーターを持つリニアトロニックは、いまどきのCVTらしく、ブレーキペダルから足を離したあとのクリープが自然。また、アクセルペダルを踏み込むと、回転だけが先に上昇し、あとからスピードが上がるという初期のCVTによく見られたクセもない。CVTとしてはノイズも小さい方だが、他の(コンベンショナルなATを配した)2台と違って、アイドリング時にノイズや振動が多少伝わってくるのが気になった。
エンジン性能そのものに不満はなく、街なかから高速まで不自由なく走れる一方、乗り心地については、スポーティなSパッケージの方がむしろ快適なくらいの印象。とくに一般道では、もう少ししなやかな動きがほしいと思った。
そんなこんなでスタートから約8時間後、ふたたびスタート地点に戻ってきた。ちょっと短めのグランドツーリングを通じて感じたのは、どのモデルもグランドツアラーにふさわしい性能を有していること。なかでもツーリングワゴン 2.5GT Sパッケージは、もっと遠くへドライブに出かけたいと思わせる魅力溢れるモデルだった。そして、どのモデルも、旧型と比べてひとクラス上のクルマに進化した印象で、よりパワフルで快適なクルマを求める人を惹きつけるのは間違いないだろう。
しかし、ボディ、エンジンともに拡大した新型レガシィが、時代の流れや、多くの消費者の考えと“ズレてるんじゃないか”、と心配するのは私だけだろうか? 北米市場を重視するあまり、日本のファンにそっぽを向かれたのでは哀しすぎる。これからも、レガシィが“日本のグランドツアラー”として親しまれ続けてほしいと願うばかりだ。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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