フォルクスワーゲン・ゴルフ1.4TSI ブルーモーションテクノロジー(FF/7AT)【海外試乗記】
予想は覆された 2012.11.20 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフ1.4TSI ブルーモーションテクノロジー(FF/7AT)フォルクスワーゲンの主力モデル「ゴルフ」の7代目がデビュー。軽量化が最大の特徴とうたわれる新型はどんな風に進化したのか。イタリアのサルデーニャ島からリポートする。
最大で100kgの軽量化
「もう新型か」と驚いている人、きっと少なくないことだろう。そう、現行「ゴルフ」のデビューからわずか4年で、早くも通算7世代目となる新しいゴルフが登場した。ご存じの通り、現行ゴルフはボディーの基本骨格など多くの部分を先代から踏襲する大改良版だった。フォルクスワーゲンは、その分の開発力まで注ぎ込んで、新型の開発にいそしんでいたのだ。
まさにゼロから刷新された新型ゴルフの最大の特徴が軽量化である。何と最大で100kgの減量を達成しているというのだから尋常ではない。しかも、例によってボディーサイズはわずかに拡大しているにもかかわらず、である。
とはいえ、ハイコストな素材を多用しているわけではない。高張力鋼板の使用範囲拡大や、新しい生産技術を積極的に投入することでホワイトボディーだけで23kg減量させたほか、エンジン、シャシー、電装品などあらゆる部分が見直された結果の軽量化だ。資料には「負のスパイラルからの脱却」とうたわれていたが、ともあれ環境性能にも走りにも好影響を及ぼすことは言うまでもないだろう。
似てるようで似ていない
そのボディーサイズは全長4255mm×全幅1799mm×全高1452mm。現行モデル(現地仕様)より56mm長く、13mm広く、28mm低い。2637mmのホイールベースは59mmの延長だ。サイズは変われどもスタイリングは、まさしくゴルフである。しかしディテールはすべて刷新されていて、見れば見るほど先代とは別物という印象に変わってくる。
ラジエーターグリルとヘッドライトユニットには水平のラインが貫かれ、しかもそのラインがショルダー部分、そしてテールランプからリアゲートに至るまでぐるりと一周囲って低重心感を演出している。ドアミラーは取り付け方法が変わり、三角窓が加わった。ショルダーラインの横切らない力強いCピラーは「ゴルフ4」がモチーフだという。
しかし印象を別物にしているのは、実はフォルムの変化が大きいのかもしれない。新型ゴルフは従来型より前輪が前に出て、オーバーハングが切り詰められている。これによって、まるでノーズが伸びたかのようなプロポーションを手に入れているのだ。
センターパネルがドライバー側を向いた運転席はじめ、室内は確実に広さを増している。荷室も容量380リッターと従来型より30リッターも大きくなり、高さ調整式フロアの採用と相まって、使い勝手を大いに向上させた。
ふたクラス上の乗り心地
そして何より劇的に進化したのが、その走りっぷりである。試乗した1.4TSIの7段DSG仕様で、まず感心させられたのは静粛性の高さ。フロア、サスペンションなどを含むシャシーの剛性感は凄(すさ)まじく、どんな入力も難なく受け止め、安っぽい振動や騒音を一切伝えてこない。
乗り心地も上々。堅牢(けんろう)なボディーとよく動くサスペンションが、荒れた路面でも極上の快適性を提供してくれる。試乗車には減衰力可変ダンパーのDCCが備わっていたとはいえ、この静粛性と乗り心地の上質感はひとクラス、いやふたクラス上のサルーンをも脅かすほどだ。
軽量化やトレッド拡大に加えて、ステアリングギア比のバリアブル化、XDS(エレクトロニック・ディファレンシャル・ロック)の標準装備化などが相まって、コーナリングは指1本分の操舵(そうだ)からスッと向きが変わる軽快な仕上がりとなっている。ステアリングフィールはやや薄味ながら、大舵角に至るまでの追従性は高く、リアの接地感も上々。実に懐が深い乗り味を獲得しているのである。
最高出力140psの1.4リッターTSIユニットは完全新設計。オールアルミ製とされ、ここでも重量を大幅に低減している。トルク特性やフィーリングは現行ユニットと大きく変わらないが、つまりそれはDSGとのマッチングを含めて不満は一切ないということ。軽量化とも相まって、動力性能は十分以上だ。
しかもこのエンジンには、低負荷時に2気筒を休止する「アクティブ・シリンダー・マネジメント(ACT)」が搭載された。また各種運転モードを選択できるドライビング・パフォーマンス・セレクターを「ECONOMY」にセットすると、アクセルオフでクラッチを切り惰性走行するコースティング機能も働く。こうして実現したのが、4.7リッター/100km(21.3km/リッター)という低燃費である。
ゴルフにも自動ブレーキ
安全装備にも触れておこう。「up!」に搭載されたシティエマージェンシーブレーキのみならず、万一の事故の際、車両に自動的にブレーキをかけて二次衝突を防ぐ世界初のマルチコリジョンブレーキなど、セグメントの基準を塗り替える各種の最新デバイスが惜しげもなく投入されている。ここでも新型ゴルフは、新たなスタンダードをセットしているのだ。
正直に言うと試乗の前には、すべてを刷新した新型ゴルフが、完熟の現行「ゴルフ」をすぐに、大きく凌駕(りょうが)することは難しいだろうと思っていた。しかし予想は覆された。新型ゴルフはすべてが、本当にすべてが、現行モデルを凌駕していた。信じられないかもしれないが、本当に。
駆け足で紹介してきたが、最後にダメ押しの情報を。これだけの進化にもかかわらず、新型ゴルフは本国では価格据え置きで提供されている。となれば、ここ日本でもぜひ同じ戦略で、いや、これほどの円高なのだからup!のように戦略的な価格で日本車の牙城に斬り込んでくれることを期待したい。
デビューは2013年中盤の予定だ。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
NEW
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。
































