BMW335i(FR/6AT)/325iツーリング(FR/6AT)【試乗記】
睨み顔の優等生 2009.01.15 試乗記 BMW335i(FR/6AT)/325iツーリング(FR/6AT)……714万6000円/651万5000円
2008年11月にマイナーチェンジを受けた「BMW3シリーズ」。数々の日本専用装備が盛り込まれた後期モデルに試乗した。
全幅を1800mmに短縮
BMW3シリーズが登場3年を経てフェイスリフトを受けた。とは言っても、いわゆるDセグメントのプレミアムカーでトップシェアを誇る人気モデルだけに、無理に大きく変えるつもりは無かったと見受けられる。要するに化粧直しといった程度の内容なのだが、しかし、その熟成度は確実に高まっている。
変更点としてもっとも大きいのは外観だ。フロントまわりでは2本のリブが追加されたボンネットに大型化されたグリル、立体的なうねりが加えられたフロントバンパー、そしてLEDターンシグナルを採用したライトユニットと、ほぼすべての部品が新しくなっている。リアビューも、テールランプがLED化と同時に伝統のL字型に近づき、トランクリッドやバンパーも一新。ドアミラーがヨーロッパの法規対応で大型化されたのもポイントである。
これらの変更で、外観はよりアクが強くなった。個人的には「トゥーマッチ」に感じられ、むしろ以前の方が好みではあるが、まあ賛否は分かれそうなところ。もっとも、よほどのクルマ好きでなければどっちでも良いくらいの違いなのかもしれないが……。
ちなみに日本仕様には、車幅が従来の1815mmから1800mmへと縮小されたというニュースも。張り出していたドアハンドルを薄型に変更しただけなのだが、おかげで従来利用できなかった一部の機械式立体駐車場を堂々と使えるようになった。
地味ながらも確実な進化
インテリアの意匠には大きな変化は無い。見逃せないのは「iDrive」の刷新だ。従来のダイヤル式コントローラーと「MENU」ボタンだけで構成された操作系が刷新され、コントローラー頂部が上下左右に傾けられるジョイスティック状になり、さらにその周囲にワンプッシュで各機能にジャンプできる「OPTION」や「BACK」に「MAP」、更には「CD」、「RADIO」などのボタンが設けられたのである。
正直、最初は「日和ったか?」と思った。しかし使ってみると、やはりiDriveはiDriveであった。もちろん、良い意味で。
iDriveの最大の長所はスイッチの少なさではなく、手元に視線をやることなく画面だけ見ながら確実な操作を行えることにある。新しいiDriveもそこは不変。それでいて、周囲のボタンは一度覚えればブラインドタッチできるし、これまで複雑だった階層への行き来も楽になっている。つまり従来の思想は継承しつつ、初見でも使いやすく進化しているのである。また、8.8インチワイドのモニターの画質が格段にクリアになったのも嬉しいポイントだ。
まずステアリングを握ったのは「335iセダン」。3リッター直列6気筒の直噴ツインターボユニットを搭載するセダンのトップグレードだ。走る、曲がる、止まるのクルマの基本に関わる部分については、今回は特に変更はアナウンスされていない。しかし、それで何が不満だろうか? 低速域で力強く、回せばむせび泣くように高回転域を目指すエンジンの気持ち良さは健在で、アクティブステアリング付きのシャシーも極上の一体感、凝縮感に満ちたフットワークを堪能させてくれる。
また、大きな変更は無くとも各部の熟成は進められているのだろう。以前より乗り心地のカドが取れたようにも感じられた。あるいは、これはランフラットタイヤの進化かもしれない。
残された課題
続いて「325iツーリング」に乗る。今や十分使える荷室を持ち、そこに便利なガラスハッチを備えるツーリングはライフスタイルギアとして存在感抜群だ。一方で、さすがに335iの後では物足りなく感じるかも…と思ったが、嬉しいことにそれは杞憂でしかなく、上質な走りを楽しめた。2.5リッター直列6気筒ユニットは、ファミリーの中で回り方がもっとも爽快。フットワークにもワゴンということを忘れさせる小気味良さがある。
ただし、こちらはタイヤが16インチだったにも関わらず、17インチの335iより乗り心地が粗く感じられた。ちょっとした入力にも上屋の揺すられ感が強調されがちなのだ。これは現行3シリーズのほぼ唯一と言っていい、大きな欠点だ。登場当初に比べればだいぶ良くなってはいるが、335iに比べて偏平率の高いタイヤとソフトなサスペンションのマッチングが今ひとつで、バネ下でタイヤが踊るような落ち着きのなさを露呈しているのに加えて、高い位置に重量物が載ることになる電動パノラマサンルーフが、更にそれを助長してしまったのかもしれない。
そもそもユーザーにとってもメーカーにとっても立ち位置やキャラクターが明快な3シリーズだけに、フェイスリフトでもそこにブレは一切無い。あるのは、3年分の確実な進化、熟成を経た姿である。こんな時代ではあるが、そうした3シリーズというブランドの価値を大事に、堅実に誠実に売っていくということさえ忘れなければ、今後も着実に支持されていくはずだ。
(文=島下泰久/写真=webCG)
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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