ホンダ S2000 vs NSX【試乗記】
ホンダ S2000 vs NSX【短評】 2008.10.03 試乗記 ホンダS2000 タイプS(FR/6MT)/NSX-R(MR/6MT)……432万6000円/1255万4850円
スポーツの秋、ドライブの秋。なのにお寒いニッポンのスポーツカー市場。“走りのクルマ”に未来はないのか!? ホンダの2台を駆って、その魅力を探った。
ホンダテイスト全開!
コンドー(以下「コ」):実はそろそろ、クルマ買いたいなぁ思ってんねん。予算は、夏のボーナスでもらった500マン。
関(以下「せ」):たぶん、ひとケタ勘違いしてますよ……。それだけあったら、オプションも選びたい放題ですねぇ。
コ:羽根さえついてりゃオーケー。狙ってんのは、これ。「ホンダS2000」のタイプS。20世紀のテイストを引きずった貴重なクルマ。
せ:よりによって、2シータースポーツですか! って、まだ買えたんだっけ?
コ:ホンダもすっかりミニバンメーカーやから、そういわれるのも無理はない。ますます今のうちに乗っとかんと。次期型はどうなるかわからんし……
せ:視力やカラダのほうも追いつかなくなったり!? でも、このタイプSは、ホントに乗り心地がいいですよね。
コ:街では快適、峠にゃ最適。足まわりにお金がかかってるからな。こだわりまくり。バネレートを高めただけやなくて、全体のバランスがサイコーにチョードイイ、ホンダ。
せ:操作系もいまどきのスポーツカーらしく、チョー楽チン。やせ我慢がいらないのは、長く付き合う大事なポイントですよね。でも……このエアロな見た目に飽きたらどうしよう!?
コ:そのうち気に入るて。そうじゃなくても慣れるて。ガソリン高いんやから、置いとくだけでも楽しめなアカン。
せ:そのわりに、インテリアのデザインはすごく地味だし……
コ:新車やのに、すでに懐かしい感じがする。ちょっと前のホンダテイスト全開!
せ:小さなカーナビはそっぽ向いてて見難いわ、フロアや荷室は凸凹してるわ。
コ:スポーツカーなんやから、そんなんええねんて。デジタル式のメーターはちょっと垢抜けへんと思うけど。
せ:たしかに機関はピカイチ。まるでスポーツバイクみたいに、リミッターが効く8000rpmまで軽〜く吹けあがりますね。ステアリングやシフトも軽いし、女性オーナーを見かけるのも納得です。
コ:オープンになるのも嬉しいやろ。電動でシュッと開けられるの、国産じゃぁ数少ない。
せ:開閉時間は世界一短いんじゃないですか? ストッパー外してから5秒もかからない。
コ:これで399万円かぁ。もう絶滅する前に買うしかない。本気で欲しい。他にライバルもおらへんことやし。
せ:気になるライバル、いるじゃないですか! しかも、同じホンダに……
磨けば光るビンテージ
せ:ずばり、ニュースポーツカーX、「NSX」!
コ:どこが“ニュー”やねん。ずばり、1990年生まれの旧車や。どこかでまだ新車売ってんのか? 値段も1000マン超えてるし。ボーナス1回分では手が届かん。だいいち、S2000が3台買えるやんか!
せ:いま、中古が狙い目なんですよ。ネットオークションの個人売買なら、200〜300万円ってところですから。
コ:そりゃ安いな。とはいえ、スポーツカーは、鮮度が命。使い古しはアカン。特に足まわりな。
せ:ホンダでは、1993年からNSX専用の「リフレッシュプラン」というレストアサービスを提供してるんですよ。
コ:もちろんタダじゃないんやろ?
せ:フルコースでお願いしたら新車1台分になっちゃうけれど、たとえば「基本リフレッシュ」+「足まわりリフレッシュ」+「足まわり推奨リフレッシュ」なら、70万円ってところです。
コ:オープンにできるプランはないん? 「推奨ルーフチョップ」とか。
せ:……。そんなに屋根開きがいいなら、タルガトップの「typeT」をどうぞ! NSXは、どこから見てもスーパーカー。持ってるだけで嬉しい。でも、こんなに小さかったかな?
コ:並べると、S2000がずんぐりして見えるな。どっちも“羽付き”。全然さりげなくないところが、泣かせる。
せ:並べると、ナンバーが「泣くパパ、無視しろ」(=7988/6446)なんですけど……
コ:乗り込みだけはちょっとツラいけど、シートに収まればガラスが広くて開放的や。さすが「解放するスポーツ」。
せ:そういえば、“日常使えるスーパーカー”とも言われてましたっけ。最新の「アウディR8」といい、これって今またキテるのかも!?
ゴルフバッグやビール箱が積めるスーパースポーツ、いいじゃないですか!
コ:ミニバンみたいになだらかなダッシュボードとか、S2000よりむしろ新鮮味あるよ。
せ:アナログの距離計やキー式スタートは、いまとなってはレトロな感じ。ま、NSXのキモは、なんといっても背後のV6エンジンですからね。ガルガルガル!って、アイドリングからヤル気まんまん。
コ:なんて? 大声でしゃべらんと聞こえへん。そのぶんクルマとの対話に集中できるけど。気分も盛り上がったところで、出発するか!
熱意はクルマにあらわれる
せ:足まわり、舌噛みそうなくらいガッチガチ!……ハッキリ言って、このクルマは峠というよりはサーキット向きだなぁ。
コ:これは「R」やから、しゃーない。むしろ、総アルミボディのガッシリした感じが印象的や。18年前の設計とは思われへん。
せ:一連のロータスを思わせる、「軽くて硬いシェルに包まれてる感じ」。これでS2000と同じ1270kgというからオドロキです。
コ:じゃ、今度出るV6の「ロータス・エヴォーラ」はこんな感じかな? エンジンでNSXを超えるのは難しそうやけどな!
せ:いまどきこんなに“聞かせるエンジン”少ないですよ。どの回転域でも惚れ惚れするなぁ。シフトフィーリングはS2000より少し重めでゴリゴリしてるけど、節度があって気持ちいい。
コ:チタンの球形シフトノブは両車共通か。兄弟だけに、同じタマ。
せ:FRとMR、メカニズム的には違いがあるけど、すいすいコーナー曲がれるから、自分が運転うまくなったように思えるのは同じ。どちらも峠道はお手のもの。
コ:タイプSも、前後重量配分50:50にこだわったフロントミドシップやからね。それにしてもこのNSX、4速2000-3000rpmあたりのフィールは極上。そこからさらに回すと……いやー熱くなれるなー!
せ:いい汗かけますねぇ! クーラーなんか付いてないし。
コ:……道理で暑いわけや。でも、ええねん。それも含めて、エモーショナルなことがスポーツカーに乗る醍醐味なんやから。
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せ:数字だけなら、いまどきミニバンだってこれくらいパワーありますからね。でも、スポーティさを謳うミニバンでも、こういう楽しみは得られないわけで。
コ:当のスーパースポーツの世界はといえば、いまや400ps、500psが当たり前。とうぜん速さじゃ比べるべくもないけれど、そのどれもがこの2台より心に訴えかけるとゆうわけやない。
せ:なんだか、貴重に思えてきたでしょう? ちなみに、NSXの国内販売台数は、1990〜2006年で7415台。現存数は、当然それ以下。
コ:たしかにS2000と迷うなぁ。新車みたいなNSXを400万で売ってほしい。さらに新しいスポーツカーなんか出えへんやろな?
せ:ホンダも5リッター級でV10のスーパースポーツを計画してるようですが、数字だけじゃないクルマを期待したいですね。NSXやS2000の熱さとコダワリそのままで、500psも出せたなら……
コ:火が出るて。軽量化もいいけど、クーラーだけはゼッタイ標準にしてもらわんと。汗かくどころか、フラフラなって運転続かんようになんで!
(文=webCG近藤俊&関顕也/写真=荒川正幸)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。