スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L(4WD/5MT)/インプレッサG4 2.0i-S(4WD/CVT)【試乗記】
まれな日本車 2012.01.23 試乗記 スバル・インプレッサスポーツ1.6i-L(4WD/5MT)/インプレッサG4 2.0i-S(4WD/CVT)……184万8000円/266万7000円
初代のデビューから20年の時を経て「スバル・インプレッサ」が4代目に進化。最新型の仕上がりを、巨匠 徳大寺有恒はどう評価する?
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「インプレッサ」に歴史あり
松本英雄(以下「松」):今日の試乗車は久々に日本車、新しい「スバル・インプレッサ」です。
徳大寺有恒(以下「徳」):了解。ところで今度の「インプレッサ」は、スバルにしてはモデルチェンジのサイクルが早いような気がするんだが?
松:おっしゃるとおりです。初代「インプレッサ」は8年、2代目は7年の寿命を保っていましたが、3代目から4代目となる新型へは、4年での世代交代。4年といえば、かつては日本車の標準的なモデルサイクルでしたが、最近では延びる傾向にありますからね。
徳:モデルサイクルの短さもさることながら、「インプレッサ」も4代目になるのか。
松:ええ。初代のデビューが1992年ですから、今年で誕生20周年なんですよ。
徳:なんと! そりゃこっちも年をとるわけだな。(笑)
松:たしか巨匠は、初代の「セダン WRX」に乗ってませんでしたっけ?
徳:乗ってた。「STi バージョンIII」。黄色いボディーに合わせて、シートを茶色のアルカンターラで張り替えたんだ。
松:どうでした?
徳:速かったけど、シフトフィールがよくなかった。6速も欲しかったし。ブレーキも速さに対していまいちだったな。
松:その前は「アルシオーネSVX」にも乗ってましたよね。
徳:うん。当時は富士重工に親しい友人がいたから、応援の意味も込めて買ったんだ。もちろんクルマにも興味があったわけだが。
松:スバルといえば、その原点である「スバル360」と、今日に至るスバルのアイデンティティーの出発点となった、フラット4搭載の「スバル1000」を昔から高く評価してましたね。
徳:「スバル1000」は、言ってみりゃ「インプレッサ」の先祖みたいなもんだろう。
松:あのエンジン、すごくピックアップがいいですよね。OHVだけど高回転域まで軽々と吹け上がって。
徳:ちょっと「ポルシェ356」みたいだよな。「スバル1000」は日本では珍しかった前輪駆動を採用していて、全体的な設計も進歩的かつ高度で、パッケージングも実に合理的だった。
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松:フロントサスペンションがゼロスクラブ(※)で、インボードブレーキなんですよね。「910ブルーバード」が広告で「革新のゼロスクラブ」とうたっていたのを憶(おぼ)えているんですが、考えてみれば「スバル1000」のデビューは1966年で「910」は79年だから、スバルのほうが10年以上早かった。
徳:それだけハンドリングを重視したんだろうな。当時の日本車は世界レベルで見るとまだまだだったのだが、「スバル1000」に関しては、むしろ国際水準を上回っていたんじゃないかと思う。
松:巨匠がそこまで褒めるんだから、すごいクルマだったんですね。
徳:ああ。だが、いくら乗ってもドライビングポジションには違和感が拭えなかったな。どういうわけかシートレールが弓なりになっていて、俺の短い脚に合わせてシートをスライドさせると、弓のてっぺんの一番高いところにきてしまうんだ。なぜあんなヘンテコな形状にしたのか、不思議に思う。
松:きっとスバルなりのこだわりがあったんでしょう。(笑)
※ゼロスクラブ……キングピン軸(操舵(そうだ)の回転軸)の延長線とタイヤ接地面の中心との距離を「スクラブ半径」と呼ぶ。スクラブ半径が大きいとタイヤ接地面の摩擦が大きく、ハンドリングに悪影響を及ぼすことがある。ゼロスクラブとは、スクラブ半径がゼロ(0)の状態。
世界一ぜいたくなエンジン
松:まずは新たに「スポーツ」というサブネームが与えられたハッチバックからいきましょう。
徳:セダンに比べると、こっちは先代とあまり変わらない印象だな。
松:ヘキサゴングリル、ホークアイヘッドライト、張り出したホイールアーチといった「レガシィ」に共通するモチーフを採り入れてますが、全体的にはキープコンセプトですね。
徳:でも単なるスキンチェンジではなく、プラットフォームから新開発されたんだよな。
松:ええ。高張力鋼板の割合を増やすなどしてボディー剛性を20%ほど高めたいっぽうで、重量はホワイトボディーの状態で約20kg軽量化。サスペンションも形式こそ先代と同じものの、すべて設計し直されたそうです。
徳:エンジンも新しいのかい?
松:2リッターは約1年前に現行「フォレスター」に積まれてデビューした新世代ボクサーを、燃費性能を中心に改良したものですが、これが積んでいる1.6リッターはそれをベースに新開発されたそうです。
徳:ほう。先代まではたしか1.5だったよな?
松:1.6リッターが欧州市場の主流であることに加えて、国内でも、もう少し力が欲しいという声があったとか。日本では税金面で1.5のほうが有利なんですが、新しい1.6のほうが燃費がいいので、トータルの維持費で考えれば不利にはならないと。
徳:なるほど。
松:ちなみにこの1.6ですが、水平対向はただでさえ部品点数が多いのに、加えてシリンダーブロックとヘッド、ピストン、クランクシャフトにコンロッド、そしてインマニとエキマニまで専用設計だそうです。間違いなく世界一ぜいたくな量産1.6リッターエンジンでしょう。
徳:これ、いまどき珍しいマニュアルギアボックスなんだな。
松:4WDだから“北国の生活四駆”を狙ってるんでしょうけど、よくぞマニュアルを残してくれましたね。
徳:運転の楽しさうんぬんではなくて、マニュアルじゃなきゃ運転できないって人が、数は少ないけどいまなおいるからな。決して大きな所帯じゃないのに、そういう声を見捨てないところにスバルの良心を感じるよ。
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松:おまけにこれ、本革シートなんですよ。いったい誰が買うんだろう? っていう不思議な仕様です。
徳:昔は革シートは丈夫だから実用車向けとされていたが、まさかそういう意味じゃないよな?(笑)
松:座り心地は悪くないですけどね。バックレストの感じがフランス車的で、肩甲骨のあたりが触れる部分のパッドが柔らかいところがいい。
徳:そろそろ走ってみようぜ。
松:エンジンは下からトルクがモリモリというわけにはいきませんが、なかなか軽快に回ります。マニュアルということもあって、これでも力は十分ですね。
徳:うん。燃費も良さそうだし、エンジン音もよく抑えられているな。かつての独特のサウンドがなくなったのはさびしい気もするが、普及グレードでこの静かさは立派だろう。
松:シフトフィールもいいですよ。エンジン縦置きだから、FRのようなダイレクトシフトで、カチカチッとキマります。
徳:乗り心地もいいな。このクラスにしては落ち着いている。
コストパフォーマンス抜群
松:新型セダンには「G4」というサブネームが付きましたが、意味するところは「GENUINE(本物の、純正の)の4ドア」とのこと。もっともスバルの社内では、以前から「レガシィ」を「B系」、「インプレッサ」を「G系」と呼んでいたそうですが。
徳:それで「B4」に対して「G4」なのか。サブネーム同様、スタイリングも「レガシィB4」の雰囲気を受け継いでいるな。
松:先代の6ライトから4ライトになって、だいぶイメージが変わりましたね。
徳:セダンらしい風格があって、このほうがいいよ。
松:先代はまずハッチバックありきで、そのリアドアを流用してセダンを派生させたので6ライトにせざるを得ず、ほかにもいろいろ制約があったとか。いっぽう新型は、「GENUINE」と名乗るだけあって最初からセダンとしてデザインされたそうです。
徳:それでバランスがいいんだな。サイズは大きくなっているのかい?
松:外寸は実質的に先代と同じです。でもホイールベースを25mm延ばし、Aピラーの位置を200mm前方に移すなどして、室内は広くなっています。
徳:200mmも! そりゃ大変だったろうな。
松:「現行レガシィは大きくなりすぎた」という先代レガシィのユーザーを受け入れるためにも広くしたいし……質感も上げたいが、大きくはしたくない。そういうむずかしいテーマのもとに開発されたそうです。
徳:苦労のかいはあったんじゃないか。なかなか立派に見えるもの。ところで、これのエンジンは2リッターかな?
松:そうです。2リッターの4WDで、ギアボックスはCVT。2リッターはCVTだけなんです。じゃあ乗ってみますか。
徳:1.6リッターと比べると、さすがにトルクが豊かだな。
松:ええ。CVTもスムーズだし、乗り味が高級ですね。
徳:スバルは日本におけるCVTのパイオニアだから、そのへんの味付けは慣れたものなんだろう。
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松:そうでした。お、これはアイドリングストップも付いてるんだ。そういえば、エンジン担当の開発主査にうかがったんですが、2リッターのFF車の燃費はリッターあたり17.2km(JC08モード)で、次世代環境技術がウリの「マツダ・アクセラ SKYACTIV」とまったく互角だそうですよ。
徳:ほう。かつてのフラット4の燃費の悪さを知る身としては驚きだな。もっともターボ付きの話だが。
松:巨匠はどうせ飛ばしてたんでしょう?(笑)
徳:まあそうだけどさ。でも、この新しいセダンはゆったり走ろうという気になるな。俺みたいな年寄りが乗ってもおかしくない落ち着きがある。かといって決してジジくさいわけじゃない。こういうクルマは、特に日本車ではなかなかないよ。
松:質感の向上も開発テーマのひとつだったそうですが、内外装の仕上げも、そして走りも先代より上質に感じます。そしてこれに乗ってわかったんですが、先ほどの1.6リッターでも、乗り心地や静粛性といった走りの質に関する部分は、決して手を抜いてませんね。
徳:そこがスバルの良さだろう。正面から愚直なほど真面目に、しっかりとクルマを作る。で、いくらなんだい?
松:最上級である「2.0i-S EyeSight」の4WDで233万1000円。1.6リッターのFFは154万4000円からあります。
徳:安いなあ! コストパフォーマンスは抜群じゃないか?
松:同感です。なんたって世界一高級な4気筒エンジンを積んでるんですから。(笑)
(語り=徳大寺有恒&松本英雄/まとめ=沼田亨/写真=峰昌宏)

徳大寺 有恒

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。

沼田 亨
1958年、東京生まれ。大学卒業後勤め人になるも10年ほどで辞め、食いっぱぐれていたときに知人の紹介で自動車専門誌に寄稿するようになり、以後ライターを名乗って業界の片隅に寄生。ただし新車関係の仕事はほとんどなく、もっぱら旧車イベントのリポートなどを担当。
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