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第25回:アルファ・ロメオCEOが出版社に大転職!
あの「引っ張りダコ男」またまた登場!

2008.01.26 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第25回:アルファ・ロメオCEOが出版社に大転職!あの「引っ張りダコ男」またまた登場!

エンスー重役引退

2007年12月11日のことだ。アルファ・ロメオのアントニオ・バラヴァッレCEOの退任が発表された。
バラヴァッレは、1964年トリノ生まれ。イギリス系多国籍飲料メーカーでキャリアを積んだのち、1999年フィアットに移籍した。
まさに「沈みゆく船」であった当時のフィアットの中で、アルファ・ロメオとランチアに所属してマーケティング戦略の練り直しにあたった。2005年からアルファ・ロメオ部門に舞い戻って事実上のトップとなり、2007年2月グループ内の分社化でアルファ・ロメオ・オートモビルズのCEOとなった。

ボク自身は、二玄社刊『Solo Alfa』の取材でバラヴァッレに会見したことがあった。マーケティング畑出身と聞いて、冷徹なエリートを想像しながら彼の執務室を訪ねた。ところがどうだ。バイクで砂漠を疾走する彼の写真で壁面が埋められているではないか。聞けば「北アフリカや中東のラリーにたびたび参加してきたんです」と言う。そして、「ダカールに出場するのが夢」と目を輝かせながら熱っぽく明かしてくれたものだ。

アントニオ・バラヴァッレ氏
アントニオ・バラヴァッレ氏 拡大
アルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネ
アルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネ 拡大

クルマ業界よ、さらば

自動車産業を去ったあとのバラヴァッレの“転職先”は、なんと出版社のCEOである。
畑違いの転職に、欧州の自動車界には少なからず衝撃が走った。しかし実際は本人の意思による円満退社であったようだ。その証拠に、親会社フィアット・グループのセルジオ・マルキオンネCEOは、「真剣さ・熱意・決断力に裏付けられた彼の果敢な挑戦は、アルファ・ロメオの再生とフィアット・グループ全ブランドに多大な貢献をした。知性と献身をもって働いたバラヴァッレに感謝し、彼の未来に称賛を送りたい」という、フィアットとしては異例の謝辞をプレスリリースの中で述べている。

マセラーティとの共同開発といわれる新フラッグシップセダン、北米市場での復活など、インタビューしたとき彼が話してくれたプロジェクトはやがて開花してゆくだろう。「忘れ形見」と書くと何やら悲しくなってしまうが、プロジェクトが実るまで時間を要する自動車産業ならではのウォッチングポイントといえる。

なお、彼が新たに働くエイナウディ社は、今日でこそイタリア最大の出版社モンダドーリの傘下にあるが、1933年創立の老舗出版社である。トリノを本拠とし、文化系書籍では確たる定評がある。

日本でトヨタの渡辺捷昭社長が“吹っ切れ”て、いきなり神田界隈の出版社社長に転職して自動車雑誌を作る……なんていうこと、まずありませんよねえ?

「引っ張りダコ男」L.デメオ(左)とS.マルキオンネ。
「引っ張りダコ男」L.デメオ(左)とS.マルキオンネ。 拡大
「フィアット500」のロンドン発表会。2008年1月21日。
「フィアット500」のロンドン発表会。2008年1月21日。 拡大

皿3枚、いってみよう!

いっぽう、バラヴァッレからアルファ・ロメオの新CEOを引き継いだのは、『webCG』で筆者が何度か紹介してきたルカ・デメオだ。
デメオ氏は、1967年ミラノ生まれ。トヨタ・モーター・ヨーロッパでレクサス投入計画を担当したのち、2002年フィアットに乗り込んだ。そして2004年にフィアット・ブランドのトップに昇進。バラヴァッレ同様グループ内の分社化に伴い2007年フィアット・オートモビルズCEOとなった。
昨2007年7月の「フィアット500」プレス発表会では3時間にわたるイベントを一人で進行し、新生フィアットの顔として注目を浴びたのは記憶に新しい。
さらに同年9月には、フィアット・グループ全体のマーケティング担当重役に昇進した。

余談ながら、バラヴァッレといいデメオといい、沈みゆく船に乗り込む勇気があるかないかで、人生決まるとボクは見た。
とにもかくにもデメオは、マーケティング重役、アルファ・ロメオ・オートモビルズのCEO、そしてアバルトのCEOを一人でこなすことになった。
フィアット・グループでは、モンテゼーモロ会長が日本の経団連にあたるイタリア経済連盟の会長を兼任し、前述のマルキオンネCEOも欧州自動車工業会の会長を兼ねたりと、ここのところスタープレイヤーに重責が集中する。
弱冠41歳のデメオが、3枚の皿まわし芸をどこまで見事に演じるか、見てのお楽しみとしよう。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=Fiat Group Automobiles) 

ロンドン発表会で。「500」右ハンドル仕様とモデルのE.ハーツィゴーヴァ。
ロンドン発表会で。「500」右ハンドル仕様とモデルのE.ハーツィゴーヴァ。 拡大
2007年12月ボローニャ・ショーの「グランデプント・アバルト」。
2007年12月ボローニャ・ショーの「グランデプント・アバルト」。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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