クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第60回:初代「いすゞエルフ」に会いたい! カワイイ顔した働き者

2008.01.25 エディターから一言 渡邉 忍
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

第60回:初代「いすゞエルフ」に会いたい!カワイイ顔した働き者

昨秋の東京モーターショーで、『webCG』ワタナベがアウディの「イケメン隊」と並んで最も感銘を受けたのが、いすゞのブースに展示されていた1964年製「初代エルフ」。いすゞの藤沢工場に保管されているというその「初代エルフ」を、『NAVI』の「エンスー新聞」主筆の田沼哲が取材すると聞きつけ、同行してきました。

なぜか郷愁をそそられる

ワタナベ(以下「ワ」):田沼さん、初代エルフを取材するんですって? 私も行きたいなぁ〜。
田沼(以下「た」):じゃあいっしょに行こうよ。でも、あんな古いトラックに興味があるとは意外だね。なんで?
ワ:だってかわいいじゃないですか。私、モーターショーで見て、感動したんですよ。
た:かわいいかどうかはともかく、近頃のツリ目顔のトラックに比べたら、どこかトボケていてやさしい顔つきではあるな。
ワ:でしょう? 前から見るとホントに人の顔なんですよ。ヘッドライトが目、ウインカーが眉毛、エンブレムが鼻、グリルが口で。こんなかわいい顔して、ホントに働いてたの?って感じ。
た:なるほど。

ワ:『webCG』で連載中のエッセイ「マッキナあらモーダ!」の商用車デザインについての回で、初代エルフを取り上げた大矢アキオさんは「なごみ系」と呼んでいたんですが、あの記事もかなり反響があったんですよ。
た:へえ、そうなんだ。
ワ:たぶんモーターショーで見たのが初めてだと思うんだけど、不思議と懐かしい気がするんです。私にとっては、映画「ALWAYS三丁目の夕日」みたいな感じかな。
た:実体験はないけれど、なぜか郷愁をそそられるってことか。ちなみにあの映画の設定は1958(昭和33)年で、現在公開中の続編は翌59年。初代エルフの誕生も59年だから、ちょうど時代は合ってるな。
ワ:え〜っ、エルフってそんなに古いんですか。もうすぐ50歳じゃないですか。
た:「古い」ではなく「歴史がある」と言ってほしいね。初代エルフと同世代としては。
ワ:それはどうも失礼しました。

た:まあいいけど。ところで「エルフ」って車名の由来は知ってる?
ワ:すこし勉強しました。えーと、妖精とかそんな意味じゃなかったでしたっけ?
た:そう。「いたずら好きの小妖精」を指す英語。エルフが生まれた当時、いすゞはイギリスの「ヒルマン・ミンクス」というセダンをライセンス生産してたんだけど、この「ミンクス」ってのは「おてんば娘」って意味なんだ。エルフはその「おてんば娘」の弟分の「お茶目小僧」という意味合いで名付けたそうだよ。

ワ:ぴったりの名前ですね。やっぱり作った人たちもかわいいと思ってたんですよ、きっと。
た:そう言われると、妙に説得力があるな……。

1964年製の初代「エルフ」。奈良いすゞが所有していた不動車をいすゞ本社が引き取り、昨2007秋の東京モータショーに出展するために試作部でフルレストアされた。現在は走行可能な状態にある。
1964年製の初代「エルフ」。奈良いすゞが所有していた不動車をいすゞ本社が引き取り、昨2007秋の東京モータショーに出展するために試作部でフルレストアされた。現在は走行可能な状態にある。
拡大
当時のエルフにはホイールベースが長短2種あったが、これは2460mmのロングホイールベース版の標準(低床)ボディ。荷台長は3020mmで「10尺ボディ」と呼ばれていた。サイズは小型車規格ほぼいっぱいの全長×全幅×全高=4690×1690×1990mm、車重1540kg。最大積載量2000kg。
当時のエルフにはホイールベースが長短2種あったが、これは2460mmのロングホイールベース版の標準(低床)ボディ。荷台長は3020mmで「10尺ボディ」と呼ばれていた。サイズは小型車規格ほぼいっぱいの全長×全幅×全高=4690×1690×1990mm、車重1540kg。最大積載量2000kg。
拡大
まだ写真ではなく絵が使われていた1959年のデビュー時のカタログより。取材したモデルとはフロントグリルやエンブレムのデザインが異なっている。
まだ写真ではなく絵が使われていた1959年のデビュー時のカタログより。取材したモデルとはフロントグリルやエンブレムのデザインが異なっている。
拡大
同じカタログに描かれていたエルフのマスコット。小さな体にいっぱいの荷物を抱えた「お茶目小僧」である。
同じカタログに描かれていたエルフのマスコット。小さな体にいっぱいの荷物を抱えた「お茶目小僧」である。 拡大
シンプルなインテリア。シートや内張りはオリジナルに近い色目のビニールレザーで張り替えられ、失われていたドアハンドルやキーは残されていた図面に従って複製された。エンジン本体はもちろん、ラジエターなどの補機類もシート下に収めているため足元は広々としている。4段ギアボックスのシフトレバーはコラムにある。
シンプルなインテリア。シートや内張りはオリジナルに近い色目のビニールレザーで張り替えられ、失われていたドアハンドルやキーは残されていた図面に従って複製された。エンジン本体はもちろん、ラジエターなどの補機類もシート下に収めているため足元は広々としている。4段ギアボックスのシフトレバーはコラムにある。 拡大

当時のライバル車

ワ:エルフって長年にわたって小型トラックのベストセラーを続けているんですよね。さきほどの話では半世紀近い歴史があるそうですが、この分野の先駆けだったんですか。
た:そういうわけじゃない。エルフが誕生した時点で、最大積載量2トン積のキャブオーバートラック市場には、トヨタの「ダイナ」、日産の「キャブオール」、プリンスの「クリッパー」といったライバルがすでに存在していたんだ。
ワ:「ダイナ」は今もありますね。「クリッパー」もあるけど、日産の軽トラックじゃなかったでしたっけ?
た:そう。三菱「ミニキャブ」のOEMモデルだね。だがオリジナルは1966年に日産に吸収合併されたメーカーである「プリンス」の2トン積トラックだったんだ。ちなみにスカイラインも、このプリンスが世に出したクルマなんだけど。
ワ:ふ〜ん、そうなんですか。

た:で、市場ではむしろ後発だったエルフだが、なかなか好評で、しばらくすると先行していたライバルを押しのけて市場をリードする存在となったんだ。なぜだと思う?
ワ:もちろん、かわいかったから!
た:……。
ワ:冗談ですってば。そうだなあ、荷物がいっぱい積めたとか。
た:残念ながらそうじゃない。荷台の大きさはライバルとほとんど同じ。厳密にいえば、セミキャブオーバーのダイナはちょっと狭かったけど。キャビンに関していえば、エルフがいちばん広かったようだけどね。
ワ:じゃあ性能がよかった?
た:うん、さっきよりは正解に近づいた。
ワ:もう、もったいぶらずに教えてくださいよ。
た:わかったわかった。

エルフに先行していたライバルたち。上からトヨタの「トヨペット・ダイナ」、「日産キャブオール」、そして「プリンス・クリッパー」。いずれも当時(1960年8月まで)の小型車規格(5および4ナンバー)いっぱいの1.5リッターのガソリンエンジンを搭載した2トン積である。これらライバルに比べると、エルフは設計が新しいだけに、よりフラットでガラス面積が広い近代的なデザインだったことがわかる。
エルフに先行していたライバルたち。上からトヨタの「トヨペット・ダイナ」、「日産キャブオール」、そして「プリンス・クリッパー」。いずれも当時(1960年8月まで)の小型車規格(5および4ナンバー)いっぱいの1.5リッターのガソリンエンジンを搭載した2トン積である。これらライバルに比べると、エルフは設計が新しいだけに、よりフラットでガラス面積が広い近代的なデザインだったことがわかる。 拡大
1962年発行のエルフのカタログより。キャビンが3人がけの場合、真ん中に女性を挟んで座るのが、当時のカタログや広告では半ばお約束だった。
1962年発行のエルフのカタログより。キャビンが3人がけの場合、真ん中に女性を挟んで座るのが、当時のカタログや広告では半ばお約束だった。 拡大

ベストセラーになった理由

た:正解はだね、エルフは他に先駆けてディーゼルエンジン車をラインナップしたんだよ。今ではトラックといえば小型といえどもディーゼルが主流だけど、エルフの誕生当時、小型トラックにはガソリン車しかなかったんだ。
ワ:へ〜え。
た:そのエルフも、59年8月のデビュー時には1.5リッターのガソリンエンジン車しかなかったのだが、翌60年4月に2リッターのディーゼルエンジン搭載車を追加したところ、これが大ヒット。ご存じのようにディーゼルはタフで燃料代が安く、経済的だからね。
ワ:なるほど。それでライバルたちもエルフの後を追ってディーゼルを出したとか?
た:そう。いっぽうでは三菱ふそうから新たに登場した「キャンター」はエルフの成功を見て最初からディーゼル車をラインナップ、ダイハツもディーゼル搭載モデルを追加するなどした結果、このクラスも徐々にディーゼル車にウェイトが移行していったんだ。
ワ:おっ、ということは、エルフは小型トラックにディーゼルエンジンを持ち込んだパイオニアで、トレンドセッターだったんですね!
た:そういうことだな。
ワ:かわいい顔してなかなかやるなあ、このお茶目小僧。
た:あんまり「かわいい」って言うなよ。エルフがテレてるぞ。

……という「初代エルフ」。実際に乗ってみたらどうだったのか?
「クルマ生活Q&A」でおなじみの松本英雄による試乗インプレッションが、1月26日発売の『NAVI』2008年3月号の「エンスー新聞」に掲載されています。ぜひご覧ください。

(文=webCG渡辺忍、田沼哲/写真=岡村昌宏<CROSSOVER>/取材協力=いすゞ自動車)

シート下に収められた、エルフ自慢の国産初の量産小型ディーゼルエンジン。アルミヘッドを持つ直4OHV1991ccで、最高出力55ps/3800rpm、最大トルク12.3kgm/2200rpmを発生。最高速度85km/hまで引っ張った。
シート下に収められた、エルフ自慢の国産初の量産小型ディーゼルエンジン。アルミヘッドを持つ直4OHV1991ccで、最高出力55ps/3800rpm、最大トルク12.3kgm/2200rpmを発生。最高速度85km/hまで引っ張った。 拡大
カタログの光景を取材班が再現してみました。ステアリングを握っているのは、試乗を担当した松本英雄。見てのとおり、大人3人がけでも窮屈じゃない。
カタログの光景を取材班が再現してみました。ステアリングを握っているのは、試乗を担当した松本英雄。見てのとおり、大人3人がけでも窮屈じゃない。 拡大
この初代エルフをレストアした、いすゞ自動車の試作部を中心とするスタッフの方々。
この初代エルフをレストアした、いすゞ自動車の試作部を中心とするスタッフの方々。 拡大
いすゞの工場敷地内を走るエルフ。トラックに乗っているとは思えない優しい乗り心地。3人並んで乗るとなぜか楽しい気分になります。足下中央にあるつまみの付いたフタがベンチレーター。開けるともちろん地面が見えます。
いすゞの工場敷地内を走るエルフ。トラックに乗っているとは思えない優しい乗り心地。3人並んで乗るとなぜか楽しい気分になります。足下中央にあるつまみの付いたフタがベンチレーター。開けるともちろん地面が見えます。 拡大
エディターから一言の新着記事
エディターから一言の記事をもっとみる
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。