マツダ・デミオSPORT(FF/CVT)【ブリーフテスト】
マツダ・デミオSPORT(FF/CVT) 2007.12.07 試乗記 ……177万4250円総合評価……★★★
発売から1月で目標販売台数の3倍の受注をうけたという、人気の「マツダ・デミオ」。専用チューンのサスペンションと16インチタイヤを装着するスポーティグレードでその走りを試す。
「マツダ2」と呼びたくなる
初代、2代目と続いた“ミニワゴン”デザインを捨て去り、いかにもヨーロッパでウケそうなスタイリッシュなハッチバックに変身した3代目「マツダ・デミオ」。新旧を並べて「どっちがカッコイイ?」と聞かれたら、私は迷わず「新型!」と答えるが、ここまでコンセプトが違ってくると、個人的には「デミオ」ではなく「マツダ2」と呼びたくなる。
そんな、まるで異なる新旧デミオなのに、とても似ているのが「SPORT」というグレードだ。その名のとおり、スポーティな性格が与えられるトップモデルで、エアロパーツやワイドタイヤが標準装着されたり、黒を基調としたインテリアが使われるなど、雰囲気づくりに抜かりはない。
その一方で、エンジンは別にスペシャルなものではなく、他のグレードにも搭載される1.5リッターを採用するところがすこし拍子抜け。実際に運転してみても、我慢や不便を強いられることがないかわりに、とりたててホットなクルマじゃないところも、新旧デミオSPORTに共通する。“ホットハッチ”を期待する人には向いていないが、ノーマルグレードと違う個性を手に入れるには、お手頃な選択肢といえる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年にデビューしたマツダのコンパクトカー「デミオ」。2007年7月5日にフルモデルチェンジされ、3代目に生まれ変わった。世界戦略車として期待される新型は、先代から見た目も中身も大きく変わった。
スリーサイズは、全長×全幅×全高=3885×1695×1475mm。先代に比べて、40mm短く、15mm幅広く、55mm低くなった。ホイールベースは2490mmで変わらない。荷室は250リッターで、先代の280リッターから約1割の譲歩となった。
ボディの軽量化に注力され、先代比でより約100kg軽くなった。パワーユニットは変わらず1.3リッターと1.5リッターの2本立てで、すべてDOHC。かつて「ユーノス800」で名を知られた「ミラーサイクルエンジン」が一部グレードに採用される。
組み合わされるトランスミッションは、4段ATと5段MTに加えて、軽自動車以外でマツダ初となるCVTを採用。軽量ボディと合わせて、23km/リッター(10・15モード)の燃費を実現した。FFのほか、4段ATには4WDも用意される。
(グレード概要)
1.5リッターモデルのラインナップは「SPORT」と「15C」。テスト車「SPORT」は最上級のスポーティグレード。ディスチャージヘッドランプやフロントフォグランプ、専用デザインのエアロパーツ、専用のフロントグリルなどの専用装備が備わる。内装は本革ステアリングホイール、専用デザインシート(スポーティブラック)、ブラックアウトメーターが採用される。さらに、専用チューンドサスペンション、16インチタイヤ&アルミホイールを装着。トランスミッションは、7段マニュアルモード付きCVT。
拡大
|
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ノーマルグレードでも黒を基調としたインテリアになる新型デミオだが、SPORTではドアトリムやシート、メーターパネルなどもほぼブラックになり、シルバーのパネルとのコントラストがさらにスポーティな雰囲気を醸し出す。ダッシュボードのデザインはシンプルとはいえ、そこだけ浮き上がっているようなセンタークラスターや丸いエアベントなどがアクセントになり、退屈しないデザインに仕上げられた。ダッシュボードなどの質感はコンパクトカーとしてはまずまずかと思う。しかし気になったのがセンタークラスターの表面で、つや消しブラックの塗装面が弱いのか、すでに傷跡が目立っていた。長く使うものだけに、美しいだけでなく、傷が付きにくい加工を考えてほしい。
グラブボックスの前に、地図や雑誌などが入れられるポケットが備わるのは便利。内側がグラブボックスにつながっているので、小物ならここから投げ込める。
(前席)……★★★
シートはファブリックの色づかいこそスポーティな雰囲気だが、座ってみると硬さや窮屈さはなく、背中を包み込むようにフィットするのが心地良い。シートポジションは、スライド、リクラインに加えてリフトの調整が可能。ステアリングはチルト調整のみだったが、私の場合は適切なポジションが設定できた。ただ、シフトレバーはすこし遠く感じる。
SPORTのCVT仕様では、ステアリングにシフトスイッチが付き、擬似的に設定された7段ギアのアップ/ダウンが可能。シフトスイッチは左右ともに前面のボタンがダウン、背面がアップというもので、慣れ不慣れ、好き嫌いはあるだろうが、個人的には裏面だけで操作できるタイプが使いやすいと思う。それはいいとして、シフトスイッチを使うのにいちいちシフトレバー横のモード切り替えボタンを押さないといけないのが不便。高速走行時に1〜2段ギアを落としてエンジンブレーキを使うときなど、シフトスイッチだけで済むほうがいいと思う。
(後席)……★★
旧型に比べて全長、全高が詰まり、そのぶんレッグルーム、ヘッドルームとも狭くなってはいるものの、それでも大人が座るのに十分なスペースは確保される。そのわりに窮屈に思えるのは、座面が低く、フロントシートが前方の視界を遮るからか? 旧型のように後席のスライドやリクラインができないのはさびしい。
シートバックの中央はアームレストが組み込まれないので、その部分だけとくに硬いということはなく、仮に真ん中に座らされることになってもすぐに背中が痛くなることはないだろう。補助席としては合格点だが、ヘッドレストがなく、シートが2点式というのは残念だ。
(荷室)……★★★
テールゲートは、表面のスイッチを軽く押すだけで解錠できるが、暗いところではスイッチの位置がわかりにくいのが難点。テールゲートを開けると、ボディサイズ相応のラゲッジスペースが確保され、いざというときには後席を倒して荷室を広げることもできる。しかし、後席を倒したところでフロアはフラットにはならないし、フロアと敷居の段差も大きい。ハッチバックとしては“常識的”とはいえ、ワゴンのような使い勝手を誇った旧型に比べると大きく後退。機能とデザインを両立するような提案がほしい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
デミオSPORTに搭載されるエンジンは、「ZY-VE」型と呼ばれる1.5リッター直列4気筒DOHC。旧デミオSPORTに載るのと基本的には同じエンジンで、最高出力113ps/6000rpm、最大トルク14.3kgm/4000rpmというスペックも同じである。
試乗車はCVT仕様で、トルクコンバーターのおかげで走り始めのクリープは滑らか。低速では余裕こそ感じられないものの、車重を1トンそこそこに抑えたボディを動かすには十分な性能といえる。流れに乗れば、アクセルに載せた右足にあわせて自在にギア比を変えるCVTがスムーズかつ素早く反応。アクセルを深く踏み込むと、回転が先に上がって、あとから速度がついてくる感じや、ノイズが大きめなのは、もはや古くさい。
エンジン自体は3000rpmあたりからすこしずつ盛り上がりを見せる印象で、ほぼフラットなトルク特性は使いやすいものの、とくにスポーティという感じはなく、できればSPORTとしての演出がほしいところだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
カタログによれば、SPORT専用チューンドサスペンションとSPORT専用16インチアルミホイール&195/45R16タイヤが奢られるこのクルマ、確かにノーマルモデルに比べて乗り心地は硬めで、ハーシュネスや路面の荒れなどをボディに伝えがち。それでも、我慢するほど辛い乗り心地にはならないのがうれしい点だ。ただ、軽量化のトレードオフなのか、目地段差を越えたときなどに、フロアにバイブレーションが起こるのは、正直、安っぽい感じがした。
高速のスタビリティは良好。フラット感は並みのレベルだ。ワインディングロードでは、鋭さこそないものの、ステアリング操作にあわせてスッと向きを変える印象がマツダ車らしい。この軽快感には、開発陣が懸命に取り組んだ軽量化も効いているはずである。
(写真=荒川正幸、峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年8月29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:2297km
タイヤ:(前)195/45R16(後)同じ(いずれも、TOYO PROXES R31)
オプション装備:ドライビングコンフォートパッケージ+レーザーツーリングコンフォートパッケージ+アドバンストキーレスエントリー+フルオートエアコン+カーテン&フロントサイドSRSエアバッグシステム(19万4250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:395.5km
使用燃料:43.12リッター
参考燃費:9.17km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】 2026.1.7 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。
-
NEW
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。






























