フォード・マスタングV8 GTクーペ プレミアム(FR/5AT)【ブリーフテスト(中編)】
フォード・マスタングV8 GTクーペ プレミアム(FR/5AT)(中編) 2006.12.21 試乗記 ……460.0万円 総合評価……★★★★ 新型「マスタング・クーペ」の車内へと目を移すと、決して安いモデルではないのに“もっと努力してほしいところ”が散見されて……。【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
フロントウインドウの外、フェンダーに直立するラジオアンテナや後方視界を思い切り遮るリアスポイラーには思わず前時代的な雰囲気を感じてしまうが、インテリアのクオリティも決してホメられたものではない。
試乗車の明るいベージュを基調にシルバーのパネルを組み合わせた全体のデザインルはパッと見、良い雰囲気なのだが、材質はすべてハードプラスティックだしATセレクター含め可動部分のタッチもちゃちで、簡潔に言えば安っぽい。
10スピーカーを謳うCDオーディオも、正直言って20年前くらいの市販品かと思った。安いクルマだとはもはや言えないだけに、もう少し、いやもうカナリ、努力してほしいところである。
細身で大径の3本スポークステアリングや古典的なメーターのレタリングといったディテールには、他では味わえない魅力があふれている。マスタングに惚れ込んでしまった人は、少なくとも買う時にはそうした細かなことは目に入らないかもしれない。
しかし、だからこそマスタングと暮らすことが日常になったあとも、日に日にガッカリさせられるのではなく、逆にますます好きになれるようなクオリティであってほしいと思うのだ。
(前席)……★★★★
今どき珍しく左ハンドルのみの設定となるマスタングだが、あえて右が欲しいという人はそうはいないに違いない。ETCの普及もあって、困る場面も少なくなった。積極的に礼賛するものではないが、クルマのキャラクターからして、不満に思うほどのことでもない。
シートは本革張りのスポーツバケットタイプ。革は硬めで張りが強く、やはりそれほど高級という感じではない……というか、まるで昔のビニール製のようなのだが、サイズはたっぷりとしているし、サポート性もまずまず。運転席には6ウェイパワーシートとパワーランバーサポートが採用されているため、ポジション調整も楽にできる。調整範囲は比較的広いので、大柄な人から小柄な人まで体格を問わず、理想に近い姿勢を取れるだろう。
全方位に思った以上に見切りが良いこともあって、取り回しは事前に想像していたより難儀ではない。
(後席)……★★★
やはり本革張りとなる後席の広さは、身長177cmの筆者が「まあまあ座れる」というレベル。2名分と割り切ることで両脇のサポート部分に対して深くえぐられたシートクッションに腰を沈めるように身体を預けても、頭上がリアウインドウにかすってしまう。
一方、足先をフロントシート下に収められるので、下半身は窮屈な思いはしないで済む。とは言え、ここはやはり緊急用、いや荷物置き場だと見るべきだろう。
(荷室)……★★
バンパーレベルまで開くトランクリッドだが、そのバンパー位置自体がかなり高めな上に、フロア高もほぼ同様のところにあるというわけで、つまりこのラゲッジスペース、奥行きは手が届かないほどあるのだが天地が狭い。
しかも、日本仕様は全車プレミアムサウンドシステム用のウーファーがトランクスペース右側4分の1にデンと居座っている。要するに、あまりツカエない空間である。但し、リアシートの背もたれは5:5分割可倒式となっており、必要とあらばラゲッジスペースに充当できる。大して困ることもないはずだ。(後編につづく)
(文=島下泰久/写真=荒川正幸(A)、高橋信宏(T))

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
プジョー3008 GTアルカンターラパッケージ ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2025.9.22 世界130カ国で累計132万台を売り上げたプジョーのベストセラーSUV「3008」がフルモデルチェンジ。見た目はキープコンセプトながら、シャシーやパワートレインが刷新され、採用技術のほぼすべてが新しい。その進化した走りやいかに。
-
ヤマハ・トレーサー9 GT+ Y-AMT ABS(6AT)【レビュー】 2025.9.20 日本のモーターサイクルのなかでも、屈指のハイテクマシンである「ヤマハ・トレーサー9 GT+ Y-AMT」に試乗。高度な運転支援システムに、電子制御トランスミッション「Y-AMT」まで備えた先進のスポーツツアラーは、ライダーを旅へといざなう一台に仕上がっていた。
-
プジョー408 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2025.9.19 プジョーのクーペSUV「408」に1.2リッター直3ターボエンジンを核とするマイルドハイブリッド車(MHEV)が追加された。ステランティスが搭載を推進する最新のパワーユニットと、スタイリッシュなフレンチクロスオーバーが織りなす走りを確かめた。
-
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】 2025.9.17 最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。
-
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.16 人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。
-
NEW
ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2025.9.24試乗記ボルボのフル電動SUV「EX30」のラインナップに、高性能4WDモデル「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」が追加設定された。「ポルシェ911」に迫るという加速力や、ブラッシュアップされたパワートレインの仕上がりをワインディングロードで確かめた。 -
NEW
メルセデスとBMWのライバルSUVの新型が同時にデビュー 2025年のIAAを総括する
2025.9.24デイリーコラム2025年のドイツ国際モーターショー(IAA)が無事に閉幕。BMWが新型「iX3」を、メルセデス・ベンツが新型「GLC」(BEV版)を披露するなど、地元勢の展示内容はモーターショー衰退論を吹き飛ばす勢いだった。その内容を総括する。 -
“いいシート”はどう選べばいい?
2025.9.23あの多田哲哉のクルマQ&A運転している間、座り続けることになるシートは、ドライバーの快適性や操縦性を左右する重要な装備のひとつ。では“いいシート”を選ぶにはどうしたらいいのか? 自身がその開発に苦労したという、元トヨタの多田哲哉さんに聞いた。 -
マクラーレン750Sスパイダー(MR/7AT)/アルトゥーラ(MR/8AT)/GTS(MR/7AT)【試乗記】
2025.9.23試乗記晩夏の軽井沢でマクラーレンの高性能スポーツモデル「750S」「アルトゥーラ」「GTS」に一挙試乗。乗ればキャラクターの違いがわかる、ていねいなつくり分けに感嘆するとともに、変革の時を迎えたブランドの未来に思いをはせた。 -
プジョー3008 GTアルカンターラパッケージ ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2025.9.22試乗記世界130カ国で累計132万台を売り上げたプジョーのベストセラーSUV「3008」がフルモデルチェンジ。見た目はキープコンセプトながら、シャシーやパワートレインが刷新され、採用技術のほぼすべてが新しい。その進化した走りやいかに。 -
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな
2025.9.22カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている?