クライスラー300C 5.7V8(5AT)【海外試乗記(前編)】
価値あるクライスラー(前編) 2004.06.01 試乗記 クライスラー300C 5.7V8(5AT) ちょっと前にはやった言葉を使うなら、ダイムラーとクライスラーの「シナジー効果」が実体としてあらわれた第2の例が、「クライスラー300C」。『webCG』エグゼクティブディレクターの大川 悠が、南仏で乗った!誰もが認めるいいクルマ
この仕事をやっていてうれしいことのひとつは、予想外にいいクルマに巡り会えたときである。別に自分の会社がつくっているわけでも、自分で買うわけでもないのだから、乗ったクルマがよかったからって個人的に喜んでどうするんだ、といえばそれまでだが、やはりネがクルマ好きだから、基本的には単純で、いいクルマに乗ると、何となくホッとするだけでなく、いい時間を過ごせた、得をしたという気持ちが残る。
そんな観点から、今年2004年4月末にフランス、プロバンス地方で乗った「クライスラー300C」はアタリだった。
試乗会に参加した日本のプレス、10人弱が全員揃って「これはいい!」と発言したが、こんなことは滅多にない。普通は皆、一応は何となく批判的なことを指摘してから、やっと本心を述べるものだが、今回だけは口を揃えて「いいクルマ」と絶賛したのである。
日本に帰って、別件でカリフォルニアの友人にメールを送り、その最後にクライスラー300Cのことを触れたら、彼からはこんな返事が返ってきた。「300Cはアメリカでも大好評で、最初のロットは売り切ったとのことです」。そして最新の『CAR GRAPHIC』を開いたら、巻頭のコラムでジョン・ラムも誉めていた。いいクルマは誰にでも理解されるものなのだ。
高性能クライスラーの末裔
クライスラー300Cは、昨2003年4月のニューヨークショーで発表、9月のフランクフルトショーでそのワゴン版というべき「ツーリング」が追加され、2004年の春からまずアメリカを手始めに販売が開始された。
これは1955年の「クライスラー300」に始まり、65年の「300L」まで続いたクライスラー社のハイパフォーマンス大型セダンの伝統を甦らせるべく企画されたクルマである。実は同社は98年に、当時のアッパーミドルたる「LH」をもとに「300M」なるモデルをつくったが、もとが前輪駆動ベースだったし、普通のV6だったから、高性能サルーンの伝統を受け継ぐにはちょっと力が足らなかった。しかも300Mの試乗会が行われたまさにその日、クライスラーとダイムラーが合併するという事件が起こり、そのビッグニュースとともにMの姿も霞んでしまった。
今回のCは、この合併後にクライスラーとダイムラーが共同で開発したモデルであり、ごく乱暴にいってしまうとクライスラー伝統のエンジンを、先代「メルセデスベンツEクラス」の足まわりに組み付け、トレバー・クリード率いるデザインチームの、ややノスタルジックな味わいとマッチョな感覚をミックスした、最新のクライスラールックのボディを載せたクルマということになる。
興味深いのは、「クロスファイア」と並んで、単にアメリカだけではなく、ヨーロッパ市場や日本など、国際マーケットも狙っていることで、今回試乗したヨーロッパ版は、北米仕様より足まわりが強化されている。
気筒休止システムの採用
3048mmというたっぷりしたホイールベースの上のボディは4999×1881×1483mmと、昔でいえばインターミディエートだが、現在のアメリカでは立派なフルサイズ。そのスタイリングの押し出しは強い。かつてのクライスラー上級車の伝統をそのまま活かしたエッグクレート・グリルをドーンと出し、鋭い眼光のライトがそれを守る。
サイドショルダーは高く、一方でルーフは薄いから、横から見ると昔のアメリカン・カスタムカーかチョップドルーフ的だ。もちろんそれはデザイナーの狙いで、18インチという比較的径が大きなホイールやそれを囲むアーチもまた、力強いイメージを出そうというもの。まさに新しいアメリカ車像への挑戦意欲がうかがえる。(後編につづく)
(文=大川悠/写真=ダイムラークライスラー/2004年6月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。
































