アストンマーティンDB9(6AT)【海外試乗記(前編)】
優しいハイパフォーマー(前編) 2004.03.27 試乗記 アストンマーティンDB9(6AT) 2003年のフランクフルトショーで登場したアストンマーティン「DB9」が、ついに市販を開始した。「DB7」から、ひとつ飛んで「9」に、長足の進歩を遂げた最新ブリティッシュスポーツはどうなのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが南仏ニースで乗った。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
伝統とハイテック
「アストンマーティンDB9」を運転して印象的だったのは、なんとまぁ、ラクに、リラックスして、スーパーなドライビングプレジャーを手に入れられるものよ、ということだ。たとえば、「ランボルギーニ・ムルシエラゴ」が「ディアブロ」と較べて運転しやすくなった、とか、「フェラーリ360モデナ」は「ポルシェ911」同様、日常的に使える、といったレベルではなく−−ミドシップのエグゾチックカーと比較するのは公正を欠くが−−。キーを捻り、センターパネルのスターターボタンを押すだけで、ラクシャリーなレザーシートに身を任せ、映画『007シリーズ』のテーマ曲をハミングしながら街を流してウィンドウショッピング(とガールズウォッチング)することも、また、ジェームズ・ボンドを気取って山道をそうとうな速度で、エクサイトしながら、しかし余裕をもって走ることもできる。赤いライバルとの対決も完全に現実的だ。DB9は、ケとハレが完璧に同居したクルマである。
2003年のフランクフルトショーで姿を見せたDB9は、モデルレンジからいうと、DB7の後継にあたる。ただし、ジャガーとシャシーを共有した「7」と異なり、まったく白紙から開発された。そのため、飛躍した進歩を表して、デイヴィッド・ブラウンの後には、8ではなく9がつけられる。DB9は、ヴァンキッシュの下、来2005年に登場するV8モデルの上に位置する、2000万円級の「2+2」スポーツカーということになる。
450psを発生する5.9リッターV型12気筒を搭載、トルクコンバーター式6段ATをリアデファレンシャルの前に置いた「トランスアクスル」レイアウトを採用。前:後=50:50の重量バランスを実現したというのが、開発陣のジマンだ。
ギアの切り替えを電子的にコントロールする、ZF製の“バイ・ワイヤ”オートマチックはちょっと驚きのデキで、「AUTO」モードではなんら気構えのいらないトルコン式ATの気楽さを示す一方、「SPORT」モードに切り替えれば、必要に応じて、スパッ、スパッと、あたかもクラッチ付き2ペダル式MTのようなシャープなギアチェンジをみせる。もちろん、ステアリングコラムから生えたパドルを用いて、任意にシフトすることも可能だ。場合によっては、器用にブリッピングして回転数を合わせることまでやってのける。リポーターは、ここまでスポーティに仕立てられたオートマチックトランスミッションを、ほかに知らない。
妙なたとえになるが、アウディが「DSG」で、クラッチペダルをもたないマニュアルギアボックスにオートマチックを凌ぐスムーズさを与えたのと180度逆の方向からアプローチしたのが、DB9に採用された6スピードのATといえるんじゃないか、と思う。
使いやすい「フロントエンジン−リアドライブ」のコンベンショナルなレイアウトを、最新のハイテクノロジーで高度に構築したクルマが、アストンマーティンDB9である。
姉妹モデルとオープンボディ
プレス試乗会は、フランス南部で行われた。ニース空港からヘリコプターで基点となるホテルに到着すると、エントランス前に、シルバーのDB9が置かれる。
ヘンリク・フィスカーの手になるスタイリングは、DB7、ヴァンキッシュの流れを汲む、まがうことなき新世代アストンのもの。共通性の強いルックスの採用は、フォード傘下、1993年にリリースされたDB7が7000台を超える、“アストンマーティンというバッヂを付けたクルマとしては”異例の成功を収めたのに意を強くしたことが影響していよう。さらにこの英国の伝統ブランドは、数の限られるハイエンドスポーツの市場においてもまだまだ圧倒的な少数派であるから、モデルごとに異なったデザインを与えて、全体のイメージが拡散するのを恐れたのかもしれない。
DB9のローンチにおいて重要なのは、ラインオフされるクルマ同様、工場そのものもブランニューだということ。1913年に設立された「Bamford and Martin Ltd」までルーツをたどることができるアストンマーティンとして初めて、“purpose-build”と謳われる新しい本社、工場、そしてデザインセンターが英国ウォリックシャー州ゲイドンに建設された。
DB7で命脈をつなぎ、ヴァンキッシュでトップレベルのパフォーマンスカーをつくる能力を証明したアストンマーティンは、新たに加わったDB9と、まもなくラインナップされる妹分V8モデルによって、ブルーオーバルの一員として、イメージのみならずグループに貢献できることを示す必要があるわけだ。投資は回収されなければならない。
意欲的なラインナップ
そのため採られた手段が「VH(vertical/horizontal)プラットフォーム」と呼ばれる基本構造で、ホイールベースの長さを延長/短縮することで、複数のモデルを産み出すことができる。といっても、モノコックボディの量産車と違い、ブリティッシュスポーツカーメーカーは、アルミのモジュール構造を採るところが凄い。
「ロータス・エリーゼ」が先駆となり、2001年に出たヴァンキッシュが採り入れた手法を工業的に洗練させたもの。アルミのモノコックタブをベースに、アルミ材をリベット、接着剤を用いて組み立て、骨格を形成、アルミ/樹脂(フロントフェンダー)パネルを貼って外殻をつくる。アルミに加えカーボンコンポジットが惜しげなく投入されたヴァンキッシュからノウハウを学び、コスト面からも商品としての妥当性を探ったつくりといえる。
12気筒のDB9とこれから来るV8モデルを、フロントバルクヘッドから前を共有する姉妹車とすることで、開発/生産コストを抑えることができる。また、はなからオープンボディの追加を考慮することで、たとえ屋根がなくとも、十分な車体強度を確保することが可能となった。
DB9、2004年のデトロイトショーでお披露目されたDB9ヴォランテ(カブリオレ)、2005年に市販車が出るV8クーペ、そのオープンボディ、さらに次期ヴァンキッシュと、今後、意欲的にシリーズモデルが送り出される予定だ。(つづく)
(文=webCGアオキ/写真=野間智(IMC)/2004年3月)
・アストンマーティンDB9(6AT)【海外試乗記(中編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015024.html
・アストンマーティンDB9(6AT)【海外試乗記(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015025.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.18 2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
NEW
「洗車でボディーにキズがつく」って本当ですか?
2026.4.21あの多田哲哉のクルマQ&Aマイカーは常にきれいな状態で維持したいものの、クルマ好きの間では「洗車することでボディーにキズがつく」「洗いすぎは害になる」という意見もある。実際のところ、どうなのか? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。















