トヨタ・ヴィッツRS (5MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴィッツRS (5MT) 2005.08.30 試乗記 ……184万9050円 総合評価……★★★ 6年ぶりにフルモデルチェンジを受けた「トヨタ・ヴィッツ」。唯一マニュアルトランスミッションが設定される、1.5リッターのスポーティグレード「RS」に乗った。
|
何かがたりない
「RS」というグレード名や、スポーツ指向のドライバーが好みそうな数々の専用装備、そして、シリーズ中、唯一マニュアルギアボックスが用意されるということもあって、期待を膨らませて臨んだヴィッツRSの試乗。しかし、実際に乗ってみると、多少肩透かしの感がある。
たしかにスポーティなグレードとしての演出はなされているが、エンジンはノーマルだし、とくに軽量化が図られているわけでもない。スポーティな装備はうれしいが、走って楽しいかというと、そうでもない。多少不便でも、快適性が犠牲になっても、ドライバーに訴えてくる何かがあればいい、という硬派な人には物足りないかもしれない。余裕をもってスポーティな気分を楽しみたい人にはいい選択だろう。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1999年1月に誕生したトヨタの世界戦略コンパクトカー。国内市場では「カローラ」に次ぐ量販モデルであり、ヨーロッパでも「ヤリス」の名で広く浸透してきた。2005年2月にフルモデルチェンジされ、5ドアのみとなった。プラットフォームは新開発。広い室内と走行性能の向上を実現するため、ホイールベースとトレッドを拡大し、先代比で幅は35mm広く、ほぼ5ナンバー枠いっぱい。全長は110mm、ホイールベースは90mm長い。
エンジンは1リッター、従来からのキャリーオーバーとなる1.3リッターと、1.5リッターの3種類で、トランスミッションは、FFがCVT、4WDは4段ATが基本。スポーティグレード「RS」には、5段MTが設定される。
(グレード概要)
グレードは、新開発の1リッターモデル「B」から、中核「F」、豪華装備の「U」、そして「RS」が従来と同じ。新たに、パワーに余裕を持たせた1.5リッターモデル「X」が加わり、全5グレード。
テスト車の「RS」は、スポーティモデルとして専用エンブレム、専用エアロパーツ、オプティトロンメーター、本革巻きステアリングホイール、スポーツシートなどが装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ダークグレーのダッシュボードに、専用の“漆黒調”センタークラスターを配したRSのインテリアはとても精悍な雰囲気だ。
文字盤がオレンジ色に光る“オプティトロンメーター”も専用のデザイン。他のグレード同様、メータークラスターはダッシュボード中央にあり、しかもレヴカウンターは左側にあるため、エンジン回転数をチェックするには見にくいし、どうしても視線を逸らさねばならないのが辛い。
(前席)……★★★
専用のスポーツシートを備えるRSのコクピット。シートはクッション、シートバックともファブリック生地の張りが適度で硬すぎず、また、サイドサポートも窮屈な印象はない。
一方、ドライビングポジションがいまひとつ決まらないのは不満な点。シートを低い位置にしてスライドを合わせるとステアリングが遠く、それを解消するにはシートを上げてやる必要があるが、そうするとペダルを踏み降ろす感じで、しっくりしないのだ。一部グレードに用意されるステアリングのテレスコピック調整機構がほしい。
スポーツモデルらしく、ステアリングホイールは本革巻き。シフトレバーも本革巻きだが、シフトそのものはストロークが長く、カチっという感触がないのも残念だ。
(後席)……★★★
グレードによっては、スライド機構も備わるヴィッツのリアシートだが、このRSはリクライニングのみで、しかも、バックレストは一体型だ。
バックレストに浅いくぼみがあるおかげで、見た目よりも落ち着いた姿勢がとれるのは意外な点。乗員のためのスペースも十分確保されていて、足元や頭上の広さに不満はない。
(荷室)……★★★
ラゲッジルームは、ボディサイズのわりにうまく幅を稼ぎ出しているが、奥行きはサイズ相応というところ。もちろんリアシートを畳んで、荷室を拡大することはできるが、シートバックが一体式なのと、シートクッションを跳ね上げることもできないので、使い勝手はいまひとつ。せめてダブルフォールディング機能だけでも付けてほしかった。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
スタートボタンで目覚める1.5リッターエンジンは、アイドリングこそ静かだが、走り出せばそのサウンドがエンジンの存在を声高に主張する。
最高出力110ps、最大トルク14.4kgmのスペックを持つ1.5リッターエンジンは、街中や高速道路を乗るには余裕の性能だが、ワインディングロードの登りで物足りなさを覚えるのも事実だ。回せば4000rpmから6000rpmあたりの高回転で盛り上がりを見せるが、回して気持ちのいいタイプではないし、エンジン音も大きめなので、高回転を保ち続けようという気にはならなかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
コンパクトカーらしからぬ重厚な乗り心地はこのヴィッツの美点。195/50R16サイズのタイヤは路面の荒れを伝え、目地段差を越えたときなどもそれなりにショックを透過するが、それでも十分許容できる。高速を100km/hで巡航する限りはフラット感も合格レベルだが、路面によってはフロントを軸にリアが上下する動きが気になった。
ワインディングロードでは、高速コーナーで安定した挙動を示す一方、比較的タイトなコーナーでは意識的に向きを変えてやる必要がある。電動パワーステアリングの感触が自然なのはうれしい点だ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2005年8月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:7679km
タイヤ:(前)195/50R16 94V(後)同じ(レグノBR33)
オプション装備:ヘリカルLSD(3万1500円)/スマートエントリー&スタートシステム+電気式バックドアオープナー+盗難防止システム(4万950円)/SRSサイドエアバッグ+SRSカーテンシールドエアバッグ+アシストグリップ一体型コートフック(6万3000円)/ワイドマルチAVステーションII(10万2900円)/ETC車載器(1万4700円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:255.3km
使用燃料:19.3リッター
参考燃費:13.2km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)【試乗記】 2026.5.19 2026年3月に大幅改良モデルが発表され、ほどなくメディア試乗会も開催された「アルファ・ロメオ・トナーレ」。今回はこれをあらためて借り出し、一般道から高速道路まで“普通に”走らせてみた。進化を遂げたアルファの中核SUVの仕上がりやいかに?
-
日産エルグランド プロトタイプ(4WD)【試乗記】 2026.5.18 「日産エルグランド」の新型が間もなく登場。前回のフルモデルチェンジからは実に16年が経過しており、待ちくたびれたファンは半端なレベルの進化では納得してくれないことだろう。日産のテストコースで乗ったプロトタイプの印象をリポートする。
-
ホンダCR-V e:HEV RS(FF)【試乗記】 2026.5.16 「ホンダCR-V」のエントリーモデルとして位置づけられる「e:HEV RS」のFWD車に試乗。ライバルとして北米市場で激しい販売競争を繰り広げる「トヨタRAV4」との比較を交えながら、世界規模でホンダの屋台骨を支えるグローバルベストセラーSUVの実力に迫る。
-
ドゥカティ・ハイパーモタードV2 SP(6MT)【海外試乗記】 2026.5.15 刺激的な走りを追求した「ドゥカティ・ハイパーモタード」の2気筒モデルがフルモデルチェンジ。まったく新しい「ハイパーモタードV2」が登場した。エンジンもフレームも刷新されたニューモデルでドゥカティが追求した走る喜びとは? 伊モデナから報告する。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT) 2026.5.13 英国の老舗、アストンマーティンのハイパフォーマンスSUV「DBX」がさらに進化。名前も新たに「DBX S」となって登場した。シャシーを煮詰め、最高出力を727PSに高めるなどの手が加えられたその走りを、クローズドコースで確かめた。
-
NEW
第962回:路上の伏魔殿? イタリア式パーキングチケット発給機のワナ
2026.5.21マッキナ あらモーダ!ちょっとした駐車に便利な路上パーキング。イタリアでも広範に採用されており、アプリ決済も可能となるなどシステムも進化しているのだが……。イタリア在住の大矢アキオが、かの地のパーキングチケット事情と、日々の移動に潜むささやかなワナ(?)を語る。 -
NEW
間もなく販売スタート 「シビックe:HEV RS」でホンダはかつての輝きを取り戻せるか?
2026.5.21デイリーコラム新型「プレリュード」に続き、「ホンダS+シフト」を搭載する「シビックe:HEV RS」が2026年6月に正式発売される。有段変速機のようなダイレクトで鋭い駆動レスポンスとシフトフィールが味わえるという同モデルの特徴を、開発担当者に聞いた。 -
DS N°4エトワール ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.5.20試乗記DSオートモビルから「DS N°4」が登場。そのいでたちは前衛的でありながらきらびやかであり、さすが「パリのアバンギャルド」を自任するブランドというほかない。あいにくの空模様ではあったものの、350km余りをドライブした。 -
第113回:ホンダデザインにささぐ鎮魂歌(後編) ―「Honda 0」と「アフィーラ」の断捨離で見えてくる未来―
2026.5.20カーデザイン曼荼羅「Honda 0」の計画縮小と「アフィーラ」の開発中止で、すっかりネガティブな印象がついてしまったホンダデザイン。彼らの未来に再生の曙光はあるのか? というか、そもそもホンダ車のデザインって本当に迷走しているの? カーデザインの専門家と考えた。 -
「北京モーターショー2026」で実感 中国車の進化のスピードは想像のはるか上をいっていた
2026.5.20デイリーコラム今や世界最大の自動車市場である中国だが、すでに開発拠点としても世界でも有数の地位に達している。「北京モーターショー2026」で見た数々のテクノロジーは、今後は自動車の進化の中心が中国になると思わせるほどのレベルだった。現地からのリポートをお届けする。 -
運転がうまくなるために、最も意識すべきことは?
2026.5.19あの多田哲哉のクルマQ&A車両開発者であるとともに、トヨタ社内でトップクラスの運転資格を所有していた多田哲哉さん。運転がうまくなるには、どんなことに気をつけるべきなのか、「プロダクトとドライビングをよく知る人」としての意見を聞いてみた。





























