フォルクスワーゲン・パサート(FF/6AT)/パサート バリアント(FF/6AT)【海外試乗記】
なにかが変わりつつある予感 2005.08.24 試乗記 フォルクスワーゲン・パサート(FF/6AT)/パサート バリアント(FF/6AT) 日本のVWがプレミアムを謳った初のモデルだった「パサート」。大きく立派になりつつ、基幹部品をゴルフと共用してつくれた新型は、プレミアムなのか質実剛健なのか?目に馴染むデザイン
フルモデルチェンジを果たした新型「パサート」にドイツで乗ってきた。すでにヨーロッパでは2005年初頭よりセダンが、そしてこの夏からバリアント(=ワゴン)が発売されているが、日本には来年上陸予定だという。
まず一般ユーザーにとっては、そのスタイリングの変化が大きな話題となるのではないだろうか。思えば現行パサートは、フォルクスワーゲンが初めてエモーショナルという言葉を用いたモデルだったわけだが、それでも今の目で見れば、カチッと硬質で端正で、いかにもドイツ車らしいというかフォルクスワーゲンらしい雰囲気が濃厚だ。ところが新型は見ての通り、すべてのパネルはより表情豊かな面を持ち、ウェッジはより強調され、ディテールにも新機軸が採用されるなど、端的に言えばより躍動的で、かつ立派に見せるようになった。
一方、すでにショーカーなどで見せていた涙目形状のヘッドライト(レガシィに似ている気も……)と、逆台形をクロームで覆ったグリルによる新しいファミリーフェイスは、違和感を覚えさせることなくすぐに目に馴染んだ。アウディの時はあれだけ騒がれたのに。こういうモノに我々は慣れてしまったのかもしれない。
大きく、広く
ゴルフの変貌ぶりからある程度は想像できたとはいえ、新型のスタイリングはけっこう賛否がわかれるかもしれない。ボディサイズに関しても同様である。セダンの場合で全長は65mm長くなり、全幅は75mm拡大されて1820mmに達した。なにしろメーカー自らプレス資料に「ミドルクラスとアッパークラスを融合させたモデル」と書いているほどなのだ。一方で、ホイールベースは9mmしか伸びておらず、おかげでオーバーハングはちょっと重たげな印象である。
インテリアも随分華やかになったが、それ以上に特筆すべきはサイズアップ分がそのまま活きた広さだ。特に左右方向の余裕はクラストップレベルで開放感は抜群。電子式パーキングブレーキの採用でセンタートンネルがスッキリしたことも、その印象に輪をかけている。現行モデルの弱点である後席も足元ともども余裕たっぷり。シートもグッと大きくなって、居住性は飛躍的に高まった。
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弟分よりレベルアップ
一方、クルマ好きの目をひくポイントと言えば、プラットフォームが一新されて、エンジンが横置きとされたことではないだろうか。「アウディA4」と基本部分を共有していた先代は縦置き。その前は横でさらに昔は縦と変化は目まぐるしいが、ともかく室内の広さに、このレイアウトも効いているのは間違いない。
サスペンションはフロントがストラット、リアが4リンクと呼ばれるマルチリンクで、つまりはゴルフと共通だ。ただしアルミパーツの多用など相応のコストは掛けられており、乗り味はゴルフとの近似性を強く感じさせつつも、より滑らか。騒音・振動の抑えには相当な力が注がれたといい、そのあたりはゴルフより格段にレベルアップしている。とはいえ、大きな段差を越えた時など、ふとした瞬間にA4などとは違う華奢な部分を感じることもあった。
好印象の「T-FSI」
試乗したのは、ゴルフと同じ2リッターFSIと2リッターターボ「T-FSI」搭載車で、それぞれ6段AT仕様を試すことができた。特に後者は余裕のトルクとターボの消音効果によるさらなる静粛性で、味は特に濃くはないが非常に好印象。おそらく主力はこれになるはずだ。ちなみに日本には、これらに加えて3.2リッターV6 FSIが導入される予定。こちらのトランスミッションはDSGで、付け加えれば駆動方式は4モーション(=4WD)となるのではないだろうか。
そんなわけでこの新型パサート、外観や内装はこれまでのプレミアム路線を引き継いでいるように見える一方で、ゴルフとの構造の共通化やV5、W8といったエンジンの廃止など、中身は実は質実剛健路線への回帰もうかがえるのが興味深いところである。そういえば、ヨーロッパではすでに「ルポ」はなく、より実用主義的な「フォックス」に取って替わられた。拡大路線ピエヒ体制からピシェッツリーダー体制へと移って、フォルクスワーゲンのなかでなにかが変わりつつあるのかもしれない。
プレミアム路線がすっかり定着しているここ日本で、サイズやスタイリングと合わせて、そのあたりの変化がどんな風に受け取られるかは興味深いところ。導入が待ち遠しい1台だ。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン/2005年8月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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