BMW 745Li(6AT)【ブリーフテスト】
BMW 745Li(6AT) 2002.12.10 試乗記 ……1112.0万円 総合評価……★★★★★a limousine for all drivers
4.4リッターV8エンジンを積む、BMWの最上級サルーン「745i」のストレッチバージョンが「745Li」。スタンダードモデルとの違いは、140mm長いホイールベースにより拡大された、広大な後席空間だ。745iも広い室内空間をもつが、それと較べてもこちらは飛行機のファーストクラスか、もっといえばプライベートジェット機の執務室、といったところ。大きくたっぷりとしたシートは、リクライニング角度などを左右別々に、しかも大きく調整できる。空調やテレビなど、後席専用装備も充実。シート間にある肘かけ奥の蓋を開けると、そこには冷蔵庫まで備わる。リアウインドガラスは、電動で専用シェードを上下することができるので、プライバシーを保つことが可能。黒いフィルムを張るよりもこちらの方がはるかに感じがいいし、第一安全だ。後席の快適性に不満を抱いたり、くつろげないという人はまずいないだろう。
ウィークデイはショファーに運転させて、自分は後席に収まり、ウィークエンドは自らステアリングホイールを握ることができる“恵まれた人”にとって、745Liがふさわしいかどうか? ドライバビリティの高さで定評のあるBMWにとって、これは愚問に等しい。ハンドリングは大いに好ましく、自らハンドルを握る乗り方にかなっている、と思う。
新しい7シリーズで評価が分かれるのは、斬新なエクステリアデザインと、革新的な操作システム「iDrive」だろう。エクステリアデザインについて、僕は好ましく感じた。ライバルのメルセデスベンツ「Sクラス」と較べても目新しく、積極的な造形が用いられたからだ。既存の価値観や美意識の範疇に収まらないかもしれないが、新しいものを打ち出していこうという“心意気”がうかがえる。iDriveの使用感については、下記を読んでいただきたい。
BMW7シリーズは、いうまでもなく誰にでも買える価格ではないが、存在する意義がある。それは飛行機のファーストクラスに乗る理由と、同じようなものだ。縁のない者には、関係のないハナシなのかもしれないが……。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年9月のフランクフルトショーでお披露目された、BMWのフラッグシップ。わが国へは、翌2002年4月からデリバリーが開始された。新型7シリーズは、3.6リッターと4.4リッターの大排気量エンジンや6段オートマチックトランスミッション、「iDrive」と名付けられた新しい操作系インターフェースなどが特徴である。ラインナップは、3.6リッターの「735i」(830.0万円)、4.4リッターの「745i」(990.0万円)、そして745iのホイールベースを140mm延長した、「745Li」(1080.0万円)の3種類。
新開発の3.6リッター&4.4リッターV8ユニットには、吸排気バルブの可変バルブタイミング機構「ダブルVANOS」、吸気バルブのリフト量によって混合気の流入量を機械的にコントロールする「バルブトロニック」などの先進技術を投入。加えて、インテイクマニフォルドの長さも可変制御することで、燃費を約14%削減しながら、最高出力を約14%向上させたという。
電子装備が数多く採用されたことも特徴。世界初を謳う6段ATはシフトバイワイヤ方式。ステアリングコラム右のセレクターレバーか、ステアリングホイール上の「ステップトロニック」スイッチでコントロールする。
「iDrive」は、ナビゲーションやエアコン、オーディオなど運転以外の操作を、センターコンソールに配置されたダイアル式コントローラーで行うインターフェース。エンジン始動は、ブロック型キーを差込み、スターターボタンを押し、パーキングブレーキはステアリング左端のボタンを押してリリースするなど、新しい操作方法を採用したのもポイントである。
(グレード概要)
745Liは、7シリーズのトップ・オブ・トップ。745iのホイールベースを140mm延長し、後席空間を拡げたストレッチバージョンで、ノーマルから2ヶ月遅れの、2002年6月にデリバリーが開始された。735iと745iが「E65」という型番をもつのに対し、745Liは「E66」という、独自の型番号をもつ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インパネや前席まわりの造形は、黒いインパネに飛行機の計器のようなメーター類が整然と並ぶ、これまでの黒基調“機能一点張り”だったBMW流から一変した。明るい色調のパネル地にアルミや艶消しのウッドを多用し、メーターなどの表示部も集約されている。とてもモダンで、スッキリとしていて好ましい。
さて、新型7シリーズの装備品といえば、「iDrive」に触れないわけにはいかない。空調、ナビ、オーディオや電話などの快適装備から、車両安定性を高める電子デバイスまでを、フロアコンソール上のマウスのようなコントローラーひとつで操作するシステムだ。センタートンネル上に備え付けられたアルミのコントローラーを、回転、スライド、プッシュしてさまざまな操作を行う。その論理の組み立ては、コンピュータのディレクトリのような階層構造になっており、簡単に全貌を把握することは難しい。理解が進むと、左手首で様々な操作を行えるようになる。非常に革新的なのだが、やっぱりフクザツ。「サルでもわかるiDrive」のような教則本を出してくれると助かるのだが……。
しかも、iDriveがすべての操作を包括するわけではないから、使う側に混乱も起きる。たとえば「AV」メニューからラジオを選択し、好みの局を呼び出すまでは「スコスコッ」とコントローラー操作で完了する。しかし、さらに音量を調節する場合、今度はインパネのボリュームつまみをまわさなくてはならない。自分好みの音量値をあらかじめ設定できるのかもしれないが、流れてくる音楽の違いや車外の騒がしさ、同乗者の有無によっても、ラジオの音量というのは意外と細かな調整を必要とするものだ。が、iDrive“だけ”では、オーディオのすべてをコントロールできないというわけである。非常によく使うスイッチやダイヤル類をあえて残した、ともいえる。
昨年の東京モーターショーで、BMWデザインディレクターのクリストファー・バングル氏を取材した時に、「iDriveは操作手順が少なくなる」と強調していた。便利なことは間違いないけれど、万能ではないことも確かだ。
(前席)……★★★★
大ぶりなシートのかけ心地が素晴らしい。リクライニングや前後スライドはもちろん、ヘッドレストの高さやランバーサポートまで細かく電動調整できる。さらに、テスト車にはオプションのコンフォートシートが装備されていた。これは上記の電動調節機能に、シート長さ、バックレスト上部の角度、バックレストの幅を調節できるようにした豪華版である。ゆったり気味に座ることも、幅を狭めてタイト気味にすることも、好み通りに調節できる。
(後席)……★★★★★
L(Long)の文字が車名の末尾に付いているだけあって、後席空間は広大だ。シートポジションはもちろん、空調やAVなどを、後席で独立して調整できるのはいうまでもない。
箱根のワインディングロードをハイペースで走っても、後席の乗り心地は秀逸そのものだ。路面からのショックを吸収し、コーナリングによって乗員が左右に振られることもない。これならば、ビジネスの資料に眼を通すなり、瞑想にふける(?)なり、自分の世界に集中できるだろう。
(荷室)……★★★★★
ボディが大きな分、荷室も当然それに比例して大きい。開閉が電動アシスト付きなのも、このクラスのクルマにはふさわしい。あやまってハッチゲートに挟まれた場合は、自動的に開く挟み込み防止機能が備わる。
|
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
シリンダーへの混合気の流入調節にバタフライスロットルを利用せず、バルブのリフト量でまかなう、BMWの最新技術「バルブトロニック」付き4.4リッターV8は、あらゆる面において非の打ち所がない。レスポンスに優れ、シャープにまわる。さらに、低中回転域でのトルクが厚く、実に使いやすい。6段ATは、ハンドルを10時10分で握った裏表に変速ボタンが付いており、「フルオート」からステアリングホイール上のスイッチでモードを切り替えることによって、マニュアルシフトが可能。45.9kgmものトルクと333psのパワーは、車両重量が2050kgあるにもかかわらず、「D」ポジションのままで走ってもカッタルさを感じない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ハンドリングはBMWらしく、狙った走行ラインを外さないシャープなもの。大きく重たいクルマなのにモッサリとせず、「3シリーズ」のようにキビキビ走るのはさすがだ。
車両安定性を高める電子デバイス、EDCやDSCはもちろん、前後アクスルに備わる「アクティブロールスタビライザー」を電子制御する「ダイナミックドライブ」が標準装備される。スタビライザーを2つの電子式油圧制御バルブでコントロールし、コーナーでボディのロールを最小限に抑え、安定した姿勢を保持するシステムだ。その効果は歴然で、高速道路を頻繁に使用する人にはとても価値の高い装備だ。後席の快適性と安定性に、大きく寄与する。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日: 2002年9月26日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:3391km
タイヤ:(前)245/55R17(後)同じ
オプション装備:コンフォートパッケージII(25.0万円)/メタリックペイント(7.0万)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:高速道路(5):市街地(3):山岳路(2)
走行距離:315km
使用燃料:53.15リッター
参考燃費:5.9km/リッター

-
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】 2026.3.28 スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。
-
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】 2026.3.25 昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。
-
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】 2026.3.24 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
NEW
開発中にボツになった「素晴らしいアイデア」は、その後どうなる?
2026.3.31あの多田哲哉のクルマQ&A車両を開発するなかで生まれた良いアイデアや素晴らしい技術には、実際に製品化に生かされないものも多数あるという。では、時を経て、それらが再び日の目を見ることはあるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
メルセデスAMG GTクーペ/メルセデスAMG GT 4ドアクーペ【試乗記】
2026.3.31試乗記メルセデスAMGの「GT63 S Eパフォーマンス クーペ」と「GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション」は、同じAMG GTを名乗りながらも片や2ドア、こなた4ドアのクーペモデルだ。この両者には、どんな特徴や違いがあるのか。クローズドコースで確かめた。 -
あなたの行動範囲を無限大に 「クムホ・ソルウス4S HA32」を試す
2026.3.30毎日をアクティブにするクムホのオールシーズンタイヤ<AD>クムホのオールシーズンタイヤ「ソルウス4S HA32」は春夏秋冬の全季節に対応。その心は高いドライ&ウエット性能で夏タイヤとしての高い性能を満たしたうえで、高い雪上性能を付与しているということだ。「三菱デリカD:5」に装着した印象をリポートする。 -
第332回:クルマ地味自慢
2026.3.30カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。最近、年齢とともに地味なモデルが大好きになった。そんななか、人気の「フォレスター」や「クロストレック」の陰にひっそりと隠れたスバルを代表する地味モデル「インプレッサ」に試乗。果たしてその印象は? -
レクサスGX550“オーバートレイル+”(4WD/10AT)【試乗記】
2026.3.30試乗記スタッドレスタイヤ装着の「レクサスGX」でウインタードライブへ。クルマ好きにとってはいかにも胸がふくらむシチュエーションだが、刻一刻と変化する自然環境が相手ゆえに、なかなか一筋縄ではいかないものだ。山に分け入る際には引き返す覚悟もお忘れなく。 -
欧州メーカーもホンダも大損 EV政策はなぜ急加速から“大コケ”に至ったか?
2026.3.30デイリーコラム主要な自動車メーカーが、EV政策の見直しにより、2025年12月期または2026年3月期の決算で莫大(ばくだい)な損失を計上した。なぜEV開発はかくも急速に進められ、急減速に至ったのか。清水草一は、その理由についてこう考える。





























