ダイハツ・タントX(4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・タントX(4AT) 2004.01.14 試乗記 ……113.0万円 総合評価……★★★ 室内空間において、軽規格の極限に挑むダイハツの新しい軽自動車「タント」。ファニーなスタイルのニューモデルはどうなのか? 工藤静香より(どちらかといえば)生稲晃子の方が好きだった『webCG』コンテンツエディターのアオキが報告する。
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ママさん向けというよりは……。
アグネス・ラムに続き、工藤静香を“ママ”として起用するという快挙を成した「親子にピッタント」こと「ダイハツ・タント」。「限界か!?」と思われた「ムーヴ」のホイールベースをさらに延ばして“ウルトラビッグキャビン”を実現した。
ファニーなスタイルにニンマリして乗り込めば、予想はしていたものの、グラスエリアの広さは想像以上。金魚鉢のなかのワタシ。まわりがよく見えるが、まわりからもよく見られる。
2000mmの室内長(インパネ−後席背もたれ間)は立派だけれど、1725mmの全高は疑問。頭のうえに、そんなに空気があってどうする。そのうえ、「重いガラスがいっぱい」との先入観からか、重心の高さが気になって、ステアリングを切ったときのグラリ感がコワい。
ハードウェア評価は★★なれど、斬新なデザインを商品化したことにプラス★。ライフスタイルを大切にするママさん、というよりは、日常でも笑いを取りたい芸人向け。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ダイハツ・タントは、ムーヴをベースに、さらにホイールベースを延ばして室内空間を広くとった「スーパースペースワゴン」。ムーヴより50mm長い2440mmのホイールベースと、95mm高い1725mmの全高をもつ。ノーズを短く、キャビンをスクエアにすることで、室内長は“2リッターセダン並”を謳う2000mmを実現した。2003年10月25日に開催された「第37回東京モーターショー」でデビュー。同年11月27日から販売が開始された。
エンジンは、0.66リッター直列3気筒DOHC12バルブで、自然吸気とターボが用意される。トランスミッションは3ATまたは4AT。駆動方式は、前輪駆動と4輪駆動の2種類だ。
(グレード概要)
グレードは、自然吸気エンジンが「L」「X」「Xリミテッド」の3種類、ターボが「R」と「RS」の2種類。前輪駆動/4輪駆動を問わず、この5グレードが用意される。
Xは、ベーシックなLではオプションだったABS(EBD、ブレーキアシスト付き)を標準装備とし、「オートエアコン」「電動格納式ミラー」「4スピーカーオーディオ」を奢ったモデル。足まわりも、「155/65R14+アルミホイール」となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
タン基調にグレー内装の一部を流用したタントの室内。縮緬状のシボが付けられた樹脂パーツがおもしろい。タントのインテリアには、できるだけコストをかけずに外観のイメージを損なわないよう、前向きな工夫が感じられる。
ダブルエアバッグを装備しながら、助手席側に「グローブボックス」「アッパーボックス」「グローブボックスアンダートレイ」を装備することをはじめ、モノ入れは豊富。
リアガラスが広いだけに、(法規上の規制があるのか)小さく遠すぎるリアビューミラーが残念。インパネ右端に集約された前後左右の窓用開閉レバーの操作性も疑問だ。
(前席)……★★★
「街乗り」「近場ドライブ」をメインに想定したとおぼしき疑似ベンチシート。左右は独立してスライドする。「インパネシフト」「足踏み式パーキングブレーキ」を採用しているため、左右席間の移動もラク。
ファブリックでトリムされたドア内張りの肘かけは楽しげだが、ドアポケットの使い勝手がスポイルされる。ドアを閉めていると、モノの出し入れが困難だ。
(後席)……★★★★
恐るべきスペースを誇るタントの後席。左右独立してスライド可能。ただし、シートそのものは、「格納」を第一条件にしたためか、平板な座り心地と薄い背もたれと、少々貧弱。
たとえば、シートアレンジを簡略化し、厚いクッションとバックレスト、しっかり延びるヘッドレストを装備した“後席重視”バージョンをつくったら……売れないんだろうな。
(荷室)……★★
軽自動車の限られたスペースをリアシートにとられたため、通常時のラゲッジスペースは最小限。後席が一番後ろに位置した場合は、奥行き40cm弱。床面最大幅は96cm、天井までの高さは約1m。
必要とあらば、後席を前までスライドさせるか、背もたれを倒して、さらに前斜め下方に動かして前席後ろに埋め込めば、奥行き145cmのほぼフラットな荷室が出現する。この場合は★★★★★か。「低いフロア」「バンパーとの段差の小ささ」「開口部の広さ」と、使い勝手はよさそう。
ひとつだけイチャモンを付けると、バックドアに内張りがないのが寒々しい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
音のわりに前にすすまない。遅い。……といったことは、軽自動車規格そのものの問題かもしれないが、タントの場合、外から内が見えやすいだけに、罪が重い。道行くイヤなヤツに遭ったとき、逃げにくいじゃないか。
58psと6.5kgmを発生する3気筒ツインカムは、可変バルブタイミング機構「DVVT」を備えた高度なメカニズムがジマン。テスト車のFF(前輪駆動)モデルは、「低燃費車・低公害車の普及促進税制適合車(平成16年3月31日まで)」にあたり、自動車所得税が軽減される。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
フロント=マクファーソンストラット、リア=トーションビームと、コンベンショナルな足まわりをもつタント。
走行安定性の面で、「ロングホイールベース化による恩恵」はよくわからなかった。一方、ストローク感ないアシまわりに加え、カーブで大きく傾くのは、ドライバーとしてあまり気持ちのいいものではない。
ターボモデル「RS」は「フロントスタビライザー」が装着され、ロール剛性が高められるということだが……。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年12月17-18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1495km
タイヤ:(前)155/65R14 75S(後)同じ(いずれもファルケンSN-816)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:139.8km
使用燃料:14.4リッター
参考燃費:9.7km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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