日産ティアナ 230JK(FF/4AT)【ブリーフテスト】
日産ティアナ 230JK(FF/4AT) 2003.08.13 試乗記 ……289.8万円 総合評価……★★★★ 元気のないわが国のセダン市場において、ひとり気を吐く感のある「日産ティアナ」。モダンリビングを謳うインテリアがジマンの「大人のための高級セダン」(by日産)に、モータージャーナリストの生方 聡が乗った。
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“ピンとくる”セダン
従来日産には「ローレル」と「セフィーロ」というセダンがあった。しかし、FR(後輪駆動)のローレルは室内の狭さ、FF(前輪駆動)のセフィーロは高級感不足という課題を抱えていた。それぞれのウイークポイントを解消するために生まれた新しいセダンには、まったく別の名前が付けられたが、実際、ローレルともセフィーロとも違うクルマに仕上がったティアナを見ると、それで「よかったなぁ」と思う。
なかなか“ピンとくる”セダンが見あたらない日本車のなかで、ティアナは数少ない印象的なモデルだ。上品ですっきりとしたエクステリアだけを見ても、いままでの日本車とは違う。日本車離れした雰囲気を放っていて、威圧感はないのに存在感があるデザインに好感を抱いた。
セダンが売れないのではなく、魅力的なセダンが少ないのだ。このティアナが、日本のセダン市場を刺激してくれるのを期待する。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ティアナ」は、2003年2月3日に発表された日産の4ドアセダン。「ローレル」「セフィーロ」の後を継ぐ。アジア地域でも販売され、日産の経営計画「日産180」プランの目標「2004年までに100万台の販売増」に寄与することが見込まれる戦略車である。
コンセプトは「洗練された大人のための高級セダン」で、和のテイストを現代風にアレンジした「モダンリビング」のようなインテリアがウリである。北米で販売される「アルティマ」と同じ「FF-L」プラットフォームに、新開発の2.3リッターV6「VQ23DE」と、3.5リッターV6を搭載。4WD仕様は、2.5リッター直4を積む。トランスミッションは、3.5リッターが「エクストロニックCVT」、ほかには4段ATが組み合わされる。グレードは、いずれにもベーシックな「JK」と、豪華版の「JM」を設定。2.3リッターモデルにのみ、シート生地などが豪華仕様になる「M-コレクション」が用意される。
(グレード概要)
「230JK」は、ティアナのシリーズ中もっともベーシックなグレード。主な違いはインテリアにあり、シートは手動度調節式で、生地は織物のダブルラッセル。ステアリングホイールはウレタン製を装着する。オーディオは、「JM」の7スピーカー「ホログラフィックサウンド」に対し、4スピーカーのCD付きとなる。標準でアルミホイールを装着しないのは、230JKのみ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
エクステリア同様、すっきりとしたデザインがインテリアの特徴である。インパネは水平基調のデザインで、柾目の木目調パネルとメタル調パネルとが、モダンな雰囲気を醸し出す。センタークラスターの下に空間を設けることで、重々しさを感じさせないところも巧い。木目調パネルがもっと本物っぽかったら……、もっといってしまうと、本物のウッドだったらよかったのに……。
試乗車にはオプションの「インテリジェントキー」が採用されていた。エンジンをスタートさせたり、ドアを開閉する際にいちいちキーを取り出さずに済むのは便利だ。
(前席)……★★★
日産が「贅沢なソファのようなシート」と自慢するフロントシートは、一見、サイドのサポートが不足しているように思える。が、実際は身体を包み込むように支えてくれて、座り心地はよい。試乗車はファブリック地のシートだったが、他のグレードにはスエード調の“パールスエード”が用意されており、こちらのほうがよりティアナのキャラクターに合っている。運転席まわりには大型のセンターコンソールボックスやカップホルダーなど多くの収納スペースがあり、小物の置き場には困らない。
(後席)……★★★
フロントシート同様、美しいデザインのリアシート。座り心地もまずまずだが、シートバックがやや寝過ぎている印象で、なんとなく落ち着かなかった。FFらしく、リヤの居住空間は余裕たっぷり。頭上にも膝の前にも十分なスペースが確保される。アーチを描くルーフのおかげで、後席に座ったときの視覚的な広さも上手に演出される。
(荷室)……★★★★
FFのティアナは、トランクの広さも自慢である。内部に出っ張りが少なく、奥行きや幅はもちろん、十分な高さが確保されている。さらに、トランクリッドを支えるヒンジが荷室に侵入しないタイプなので、荷物に干渉する心配がなく、ラゲッジスペースをフルに使えるのがうれしい。インテリジェントキーを身につけていれば、トランクリッドをワンタッチでオープンできるのが便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
パワートレインは、2.3リッターのV6DOHCエンジンと4段オートマチックの組み合わせ。173ps/22.9kgmのスペックを誇る新しいVQ型エンジンは、2000rpm以下でも十分な力強さがある。アクセルを踏み込んだときのレスポンスにも優れるから、街なかでも高速でも扱いやすい。4500rpm付近でトルクの盛り上がりを見せるため、高速で追い越すような場面でも余裕の加速を見せる。巡航時にはエンジンからのノイズは気にならないが、3000rpm以下で多少アクセルを踏み込むような場合に、多少ざらついた音が発せられるのが気になった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
一般道では、やや硬めに思える乗り心地だが、十分快適なレベルで、落ち着いた挙動は好印象。ハーシュネスの遮断性にも優れており、高速走行時にもおおむねフラットな乗り心地だ。直進安定性に優れており、それでいてボディの大きさを感じさせない軽快感があるのは、さすが日産。エンジンノイズや風切り音に比べてロードノイズが目立つのは減点の対象に。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年7月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:5299km
タイヤ:(前)205/65R16 95S(後)同じ(いずれもTOYO トランピオ J41)
オプション装備:16インチアルミロードホイール(7.0万円)/VDC(10.0万円)/キセノンヘッドランプ(6.0万円)/SRSカーテンエアバッグシステム+インテリジェントキー+イモビライザー(9.5万円)/カーウイングス対応TV+ナビゲーションシステム+バックビューモニター(29.0万円)/フロアカーペット(3.3万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:280.0km
使用燃料:34.4リッター
参考燃費:8.1km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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