アウディS6(4WD/7AT)/S8(4WD/8AT)【試乗記】
走りも装備も最上級 2012.09.30 試乗記 アウディS6(4WD/7AT)/S8(4WD/8AT)……1262万円/1921万円
アウディの「A6」「A8」シリーズに、新しい「Sモデル」が登場。最新テクノロジーの採用により燃費効率の高さをうたう、スポーティーセダンに試乗した。
フラッグシップも燃費を意識
アウディは標準型の「Aシリーズ」でさえ高品質を誇る。だから、「Sモデル」はさらなる上質な仕上げと高性能ぶりを見せつけなければならない。「A6」や「A8」のSモデルは代々“セダンの形をした高級スポーツカー”なのだ。価格も相応で、今回乗ることのできた「S6」で1180万円、「S8」は1580万円もする。ユーザーの期待も当然高まる。
同社のダウンサイジング戦略にのっとってSモデルもエンジン排気量を縮小。これまでの5.2リッターV10に代えて、4リッターV8ツインターボエンジンを搭載し、「S6」と「S7スポーツバック」は420psに、「S8」は520psにチューンされる。
当然ながら省燃費にも熱心で、走行条件がそろえば8気筒が4気筒へと気筒休止する「シリンダーオンデマンド」のプログラムが組み込まれ、もちろん今の時代必須の「スタートストップシステム」も装備される。これらにより旧型と比較してS6で25%、S8で23%の燃費節約(欧州仕様の場合)が可能になったと説明されている。
S6とS8の主な違いはまずボディーサイズ、S6の全長は4930mmと5メートルを切るのに対し、S8は5145mmと長い。しかし車両重量はS6の2020kgに対しS8は2080kgとあまり変わらない。軽量化されているのはこれまでのS8と同様にボディーがアルミでできているからだ。ただし今までのようにオールアルミではなく、側面衝突時の安全性を高めるためにBピラーのみスチールとなった。
またギアボックスはS6がSトロニックの7段なのに対しS8はティプトロニックの8段。パワーステアリングのアシストはS6が電動、S8は油圧。サスペンションはどちらもエアーサスペンションとなる。
いつの間にか節約!?
乗ってみて取りあえず言えるのは、2台ともすこぶる速いクルマだということである。もちろんクワトロ(四輪駆動)であり駆動系も洗練されている。同類の高級車と呼ばれているクルマと比べても、単なる二輪駆動とはスムーズな走行感覚において一線を画する。小さい子供やお年寄りのいる家庭では特に歓迎される特性だろう。
新機構の「シリンダーオンデマンドシステム」に関しては、メーターパネル内のモニターに“4気筒モード”の文字が現れ、瞬間燃費を示すベースの帯が白から緑に変化する。それが切り替えを示す情報であって、振動とか音とか体感できる変化のようなものは何もわからない。
故意にその切り替えをやらせてみようと、「水温30度以上」「3速ギア以上」「エンジン回転数950rpmから3500rpm」 という条件下でスロットルを一定にしてみたり、わずかに放したりしてみても、うまく切り替えられない。場所が勾配の多いところやカーブであったりするとダメで、高速道路でためしたら即座にグリーンに点灯させることに成功した。普通にクルーズしていて知らないうちに燃費節約になるなら万々歳である。
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車重がもたらす影響
サイズの割に軽いとはいえ2トンを超す重量がもたらす影響には、功罪の両面がある。良い方に味方するのは安定性と乗り心地、そしてブレーキ能力だ。悪い方は加速やヨー慣性などの運動性能だ。停止からの動きだしはもっさりしているが、多段ギアの恩恵もあり、いったん動きだしてしまえば暴力的と言っていい加速が待っている。
ターボは負荷が大きいほど過給圧に対して敏感に反応する。だからスロットルの踏み込み方しだいでお望みの加速力を手に入れることができる。大きくて重いクルマが速いとその爽快感は倍加する。事実上、日本では意味を持たないが、最高速度は重量と無関係で、むしろ重いほどトラクションは増す。今回の場合、差は少ないとはいえ、やはりS8の方が体感加速は一階級速い。
減速に関しては、このクルマも最近流行の危険を察知し自分で止まってくれる安全システムが組み込まれている。同様のシステムでも、途中で気がついてブレーキを踏んでしまうと、そのプログラムがキャンセルされてしまうものもあるが、アウディの「プレセンスプラス」と呼ばれるシステムは高度で、音や信号で回避行動を促すことはもちろん、途中で踏むとさらに減速度が強まる。
いずれにせよ、クルマ自体止める能力はあるのだから、システムは気にせずに、ブレーキはシッカリ最後まで踏み込めばいい。重量はロック点を上げる意味があるから、ロックする心配なしに心おきなく踏み込める。
コーナーではどうかと言えば、重量の分布が中央に寄っているというか、アウタースキンはアルミであるから重い外套(がいとう)ではなく軽いシャツ気分で動きは軽い。
上級モデルらしいレスポンスが欲しい
運転していて鈍感と感じる箇所は他にある。最近のドイツ車の傾向でもあるが、操作系に電気を使う例が増えた。それによるレスポンスの遅れが気になるのだ。昔、レバーやロッドなどメカでやっていた部分は、今では電気を通じてモーターやソレノイドスイッチやリレーなどを介して行う間接的なものに置き換えられている。
そうなると単に通電するだけであって、ドライバーに作動させている実感はない。S8のATセレクトレバーを例にとると、スッとDに落とせば昔は直接動いて油道を開けていたのが、今ではまずスイッチのロックボタンを解除して、スイッチを引いてランプの点灯を確認し、モニターの動きを監視してそのポジションに入ったことを見極めたころになってやっと動きだす。
狭い場所での車庫入れなどの際にあまりレスポンスがいいと危ないから、前進後退の切り替えなどをゆっくり作動させることは間違いではないが、すいた場所で切り返してUターンする時など急いで動かしたい場合には多少ストレスも感じる。
あんな小さなスマートフォンでさえ操作性や作動レスポンスの向上に力をいれている時代においては、今後はクルマの操作系のレスポンスの速さも追求する必要はあるだろう。
エンジンパワーを強大なものにしていけば取りあえず直線では速い。が操作系はそれに見合ったレスポンスが得られないと、操作している実感に乏しい。自分で運転しているのではなく、乗せられている感覚となる。
でもこのクラスの顧客にとっては、そんなことはどうでもいいのかもしれない。スイッチ表面の金属や、プラスチックの指に触れる形状や感触を楽しむこと自体が快感なのかもしれない。外観の手の込んだデザイン処理などみても、高性能を追求したカタチというより、外で埃(ほこり)にまみれることを嫌う美術品のような造りでもある。それをフツウのクルマのようにガンガン使うのがリッチなユーザーの特権なのかもしれない。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
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