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【スペック】全長×全幅×全高=4624×1811×1429mm/ホイールベース=2810mm/車重=1730kg/駆動方式=FR/3リッター直6DOHC24バルブターボ(306ps/5800-6000rpm、40.8kgm/1200-5000rpm)+モーター(55ps、21.4kgm)(欧州仕様車)

BMWアクティブハイブリッド3(FR/8AT)【海外試乗記】

これはバーゲンだ!? 2012.07.31 試乗記 渡辺 敏史 BMWアクティブハイブリッド3(FR/8AT)

2012年9月に日本でのデリバリーが開始される「BMWアクティブハイブリッド3」。「5シリーズ」に続く、6気筒エンジン搭載のハイブリッドセダンの走りとは? ひと足先にドイツで試乗した。
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一歩進んだ作り込み

BMWにとってビジネスの中核ともいえる「3シリーズ」は、ここ日本でも「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に次ぐメジャーな輸入車として大きなシェアを握っている。今年登場したF30型も商品性は盤石。セールスも好調というから、その座も当面は安泰だろう。

とはいえ、BMWとしても日本市場で攻勢の手を緩めるつもりはないようで、今年、3シリーズには興味深いパワートレインが追加されることになっている。ひとつはガソリンユニット版「320i」と同出力を誇るディーゼルユニットを搭載した「320d」。もうひとつがこのガソリンハイブリッドモデル「アクティブハイブリッド3」というわけだ。それでなくとも目を見張る効率を誇る従来モデルと併せて、環境性能を固めることで追いすがるライバルをさらに引き離そうということだろう。

そのアクティブハイブリッド3、パワートレインの基本構成は先に登場した「アクティブハイブリッド5」のそれを踏襲している。306psを発生する直6ターボユニットとZF製8段ATの間に55psのモーターを挟み込み、前後2つのクラッチで制御する1モーター2クラッチ式を採ったシステムの合計出力は340ps。搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量も変わらない。

とはいえ、アクティブハイブリッド5と比すれば、そのスペックや使い勝手は確実に向上している。EV状態での走行可能距離は最大4kmと同等ながら、最高速は60km/hに対して、アクティブハイブリッド3は75km/hまでカバーできるようになった。

また、3シリーズそのものが当初からラゲッジフロアへのバッテリー搭載を想定した構造になっていたこともあり、トランク容量は90リッター減の390リッターを確保。車格がひとまわり違うアクティブハイブリッド5に対しては、15リッター広いだけでなく、40:20:40分割の後席可倒によるトランクスルー機能も生かされているなど、その作り込みには優位点が随所にうかがえる。

トランクリッドとCピラー横には「ActiveHybrid3」のバッジが配される。
トランクリッドとCピラー横には「ActiveHybrid3」のバッジが配される。 拡大
荷室フロアの下に収納されるリチウムイオンバッテリー。
荷室フロアの下に収納されるリチウムイオンバッテリー。 拡大
荷室下にバッテリーを搭載しながらも、荷室容量は通常時で390リッターを確保。写真の40:20:40分割可倒式リアシートはオプション。(写真をクリックするとリアシートの倒れるさまが見られます)
荷室下にバッテリーを搭載しながらも、荷室容量は通常時で390リッターを確保。写真の40:20:40分割可倒式リアシートはオプション。(写真をクリックするとリアシートの倒れるさまが見られます) 拡大
 
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スポーツカー並みの瞬発力

同じエンジンを積む「335i」に対しては135kgの重量増とはいえ、そもそものマスが小さいこともあって、アクティブハイブリッド3はゼロ発進から低速域までをすんなりとモーターのみの駆動力でカバーしてくれる。もちろんバッテリーの充電状況もそこには関わってくるが、内燃機にとって最も負荷の大きな領域が楽なアクセルワークでカバーできるとあらば、いわゆる「好燃費の出しやすさ」みたいなところにも差が出てくるだろう。さらにドライビング・パフォーマンス・コントロールをエコプロモードにしておけば、EV走行が可能なアクセルの踏み込み量をグラフィカルに表示してくれる。

とはいえ、さすがに通常の交通の流れの中で75km/hまでをモーター一本で引っ張るのは難儀な話だ。振動などの違和感もなく始動した6気筒エンジンは、基本的にその大半を駆動力に回し、モーターはバッテリーの充電や減速の回生エネルギーを拾う側へと徹することになる。が、全開などの高負荷を与えた場合は例外で、この際にはモーターがエンジンと同調して駆動力を増強するブーストモードへと突入。0-100km/h加速にして5.3秒というスポーツカーレベルの瞬発力をアシストする格好となる。

高速域では、最大160km/hまでエンジンを停止しモーターが駆動力をアシストするコースティングモードが働くが、実際にモーターが車体を推し進める側へと回っていることが実感できるのは100km/hくらいまでといったところ。つまり欧州的な速度域においては、アクセルをオフにしている間、エンジンをシャットダウンさせることによって燃料消費量を抑えるという作用に意味を見いだすことになる。しかし日本の速度域での漫然とした流れならば、想定以上の効果をもたらすかもしれない。

 
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シフトレバーノブのまわりやフロントドアシルには「ActiveHybrid3」ロゴ入りアルミニウムプレートが備わる。
シフトレバーノブのまわりやフロントドアシルには「ActiveHybrid3」ロゴ入りアルミニウムプレートが備わる。 拡大
306psを発生する3リッター直6ターボエンジン。アクティブハイブリッド専用のエンジンカバーがその特徴。
306psを発生する3リッター直6ターボエンジン。アクティブハイブリッド専用のエンジンカバーがその特徴。 拡大
 
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ハイレベルなハイブリッドシステム

大型モニターに表示される、エンジンやモーターの稼働を示すエネルギーフローのグラフィックを見ていて気付くのは、充放電が実に頻繁に繰り返されていることだ。エンジンとモーターの効率的連携を常時繰り広げるトヨタの「THS」のような緻密さはない代わりに、アクティブハイブリッド3のそれは隙あらばと四六時中回生エネルギーを拾っている。中身はシンプルながらも、リチウムイオン電池の特性を最大限に生かして効率を高めようというセットアップがなされているということだろう。
もちろんパワーの伝達や遮断を繰り返すクラッチのリンケージに関しても違和感はほとんどなく、総じてシステムの完成度はかなり高いというのが試乗しての実感だった。

ちなみに全開加速や超高速巡航を幾度か繰り返した試乗時の燃費は約11km/リッター。エンジンの稼働が増えれば、さほどの伸びが望めないのは構造的に仕方がない。恐らく伸び幅が最も実感できるだろう、渋滞の続く市街路での燃費が取れなかったのは残念なところだ。

快適性や運動性能への影響もほとんど見受けられないアクティブハイブリッド3、日本での販売価格は699万円からと発表された。あらかたの快適装備が標準化された上で、先代の6気筒モデル「335i」に対して13万円のプラスにとどめたこの値付け、裏返せば直6のレギュラーモデルであった335iの純粋な後継はないというサインともみてとれる。と同時に、ハイブリッド大国である日本市場を最重視した戦略的バーゲンということにもなるだろう。

心中複雑……という方にこそ、アクティブハイブリッド3は試し乗りしてみてもらいたいクルマだ。スポーツセダンとしての価値を犠牲にせずにハイブリッドを成立させるということにBMWがいかに腐心したか、それをきちんと感じさせてくれるはずである。

(文=渡辺敏史/写真=BMWジャパン)

 
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タコメーター付近には、電気モーターのブースト機能やエネルギーフロー、エネルギー回生の様子が表示される。
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ストリームラインの18インチアロイホイールは「アクティブハイブリッド3」のみに設定されるオプション。
ストリームラインの18インチアロイホイールは「アクティブハイブリッド3」のみに設定されるオプション。 拡大
「アクティブハイブリッド3」にはマットクロム仕上げのエグゾーストテールパイプが備わる。
「アクティブハイブリッド3」にはマットクロム仕上げのエグゾーストテールパイプが備わる。 拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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