第202回:“ファン”がなけりゃ意味がない!
フォルクスワーゲン初の量産EV「e-up!」などを試す
2013.09.25
エディターから一言
拡大 |
2018年までに年間販売1000万台を達成して、世界ナンバーワンを目指すフォルクスワーゲングループ。同グループは今回のフランクフルトショーで、もうひとつ野心的な目標を掲げた。その目標とはすなわち、同じく2018年までに「e-モビリティー」(エレクトリックモビリティー)の分野でナンバーワンになること。ショー会場では、発売を目前に控えたフォルクスワーゲンとアウディの次世代車2台がわれわれを待っていた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
静か、上質、パワフル!――フォルクスワーゲンe-up!
フランクフルトモーターショーのプレスデイを利用して、フォルクスワーゲンが開催したのが「e-モビリティー・ワークショップ」。その目玉は、ここで発表されたばかりのEVの「フォルクスワーゲンe-up!(イーアップ!)」や、プラグインハイブリッド車の「アウディA3 e-tron(イートロン)」などへの試乗である。
まず乗り込んだのは、フォルクスワーゲン初の量産EVとなるe-up!だ。さすがEVだけに加速は滑らかで、また静粛性も高いというのが第一印象。何せベースとなるup!といえば、3気筒エンジンにシングルクラッチ2ペダルのASGの組み合わせだから、その差は歴然である。はるかに上質で、高級なクルマという感覚なのだ。
力強さも十分。4名乗車でも加速感はup!より格段にパワフルで、チョイぬれの路面では不用意に踏み込むと一瞬空転するほどだった。
セレクターレバーをDレンジから左右に振ると、回生ブレーキの強さを3段階で調整できる。一番強力な設定では、ブレーキペダルを踏まずとも車両を停止まで導くことが可能。これはエンジン車では絶対に得られない感覚である。
e-up!のドイツでの販売価格は2万6900ユーロ。日本円では350万円といったところとなる。「日産リーフ」などと同等の補助金が出ると仮定すれば、実質的には270~280万円となるだろうか。それなら一考の余地ありといえそうだ。
130km/hまでEV走行可能――アウディA3 e-tron
続いてはプラグインハイブリッド車のA3 e-tronに乗る。最高出力140psの1.4リッターTSIエンジンに電気モーターを組み合わせ、満充電状態から50kmのEV走行を可能とし、トータルでの燃費は1.5リッター/100km(約66.7km/リッター)と上々。一方で最高速は220km/hと、アウトバーンでも通用する動力性能をも両立させている。
発進は当然、モーターだけ。130km/hまでエンジンをかけずに走れるから、つまり日常のほとんどの領域をEV走行でカバーできる。一方、バッテリー残量が少なくなってきたり、あるいはキックダウンさせたりした時にはエンジンも始動する。
面白いのは走行モードがいくつか選べること。通常のハイブリッドモードのほかに、遠く離れた町に到着した時にEVモードで走れるだけの電力を残しておくエンジン主体の走行モードや、早期に充電を行うモードなど、その日の使い方に合ったモードを選択できる。これは良いアイデアだ。
TSIやTDIを進化させてエンジンの効率向上に注力する一方、ハイブリッドなどの電動モビリティーに関しては、やや後れをとっていた感のあるフォルクスワーゲングループ。しかしながら今回の2台の完成度を見ても、彼らはすでに日本勢に追いつき、追い越そうとするほどの勢いがあることは間違いない。
特にうれしくさせられるのは、いずれも走りのよろこびを犠牲にするどころか、逆に新しい、今までにないかたちで実現していることである。これらが続々と日本に上陸すると考えたら、来年以降がにわかに楽しみになってきたのだった。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン、アウディ)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ! 2026.5.15 「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。
-
第869回:思わぬサプライズもいっぱい! クルマ好きのための祭典「シン・モーターファンフェスタ2026」で“最旬ニューモデル”に触れる 2026.4.24 日本最大級の“クルマ好きのための祭典”「シン・モーターファンフェスタ2026」に、発売を間近に控えるさまざまな注目モデルが終結! 会場の様子や、そこで得られた最新情報をお伝えしよう。
-
第868回:ウエット路面での実力は? ブリヂストンの新スタンダードタイヤ「フィネッサ」を試す 2026.4.22 2026年1月に発表されたブリヂストンの「FINESSA(フィネッサ)」は、次世代の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する最新のスタンダードタイヤだ。ドライ路面での試走報告に続き、今回は自慢のウエット性能をクローズドコースで確かめた。
-
第867回:ハイエースオーナー必見! スマホで操作できる可変ダンパー「KYBアクトライド」を試す 2026.4.22 KYBからスマートフォンのアプリで操作できる可変ダンパーシステム「ActRide(アクトライド)」が登場。まずは「トヨタ・ハイエース/レジアスエース」用からの展開となるこのシステムの仕上がりを、実際に試乗して確かめた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ編
2026.6.5webCG Movies三菱の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」が多くの人に支持される理由は、個性的なルックスだけなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが、人気の秘密に迫る。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。
