フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT(FF/7AT)
得たものと失ったもの 2014.12.09 試乗記 運動性能と燃費性能を高次元で両立したという「フォルクスワーゲン・ポロ」のスポーツグレード「ブルーGT」の実力に触れた。いやがうえにも高まる期待
2014年もいろいろな車に乗せていただきましたが、心底「参りました!」と思ったのは8月にマイナーチェンジを受けた「フォルクスワーゲン・ポロTSIコンフォートライン」だ。
1.2リッターの直噴ターボエンジンと7段DSGを組み合わせたパワートレインは実に滑らかで、パワーも実用には十分。乗り心地もしなやかで、プリクラッシュブレーキシステム“Front Assist Plus”を筆頭とする予防安全デバイスを標準装備しながら、お値段はなんと223万9000円!? ジャパネットたかたのテレフォンショッピングみたいな口調になるほど驚いた。
というわけで、10月にラインナップに加わったポロシリーズの(現時点での)最上級モデル、ポロ ブルーGTへの期待は並々ならぬものがあった。現時点での、と書いたのは、10月のパリモーターショーで発表された新型「ポロGTI」がいずれ来日することを見込んでのことだ。
「燃費とスポーツ性能を高次元で両立した」とうたうポロ ブルーGTの概要を説明すると、まずエンジンは最高出力150psを発生する1.4リッターの直噴ターボ。このエンジンには気筒休止システムであるACT(アクティブシリンダーマネジメント)が備わり、一定の条件下でアクセルから足を離すと4気筒のうち2気筒が“休め”の姿勢をとる。
このエンジンと7段DSGの組み合わせは、21.5km/リッターというJC08モード燃費をたたき出す。この値は、1.2リッターのポロTSIコンフォートラインの22.2km/リッターとさほど変わらない。
足まわりもスポーティーに仕立てられ、標準仕様より15mm車高が低くなる専用のスポーツサスペンションと、17インチのアルミホイール、215/40R17という低偏平タイヤで足元を引き締める。ちなみにポロTSIコンフォートラインのタイヤサイズは185/60R15だから、タイヤだけ見てもかなりスポーティーな方向に振っていることがわかる。
ベーシックグレードのポロTSIコンフォートラインに「参りました」と感じたのだから、ポロ ブルーGTにはどれだけ感心するのか。機能的で清潔なデザインのインテリアに囲まれ、エンジン始動。期待に胸をふくらませて路上に出たけれど、頭に浮かんだのは「!」マークではなく、「?」マークだった。むむむ?
グランドツアラーの資質あり
「?」が浮かんだのは、市街地では乗り心地が粗いと感じたからだ。小さな段差を乗り越える時に、予想より鋭い衝撃が路面から伝わる。単に乗り心地が引き締まった、硬くなったというだけではなく、タイヤがばたつく気配もある。
おかしい、こんなはずじゃなかった、もしかしたら今日は体調が悪いのかも、とモヤモヤしながら高速道路にあがる。すると、市街地で感じた粗さはきれいさっぱりなくなった。
といってもふわふわするわけではなく、乗り心地はソリッド。4本のタイヤががっちり路面をとらえていることが、ステアリングホイールの手応えとしてドライバーに伝わる。
荒れた路面を突破する時にはショックをそれなりに伝えるのに、市街地で感じた“ドタバタ”感がないのは、高速だと屋根のてっぺんからタイヤまで、車全体がひとつの塊となっているように感じるから。衝撃を車両全体で受け止め、全体で吸収する一体感のおかげで、多少のショックなら不快に感じない。
高速でアクセルペダルを戻すと、気筒休止システムが作動して2つのシリンダーが休暇に入ったことをメーターパネルの表示が知らせる。この表示がなければ2番シリンダーと3番シリンダーが休止したことには気付かない。作動はそれほどシームレスだ。
高速で追い越しをかける場面では、TSIコンフォートラインの1.2リッターよりも1.4リッターのほうが楽。運転に自信がある方なら1.2リッターの限られたパワーを使い切ることをゲームとして楽しめるだろうけれど、多くの人にとっては1.4リッターのほうが扱いやすいはずだ。
「ブルーGT」という名が体を表すというか、この車はコンパクトではあるけれどグランドツーリングを得意種目とする。どしっとした操縦フィーリングと、しっかりとした乗り心地のおかげで、長距離・長時間の運転が苦にならない。エンジンの力に余裕があって追い越しに気を使わずに済むことも、グランドツーリングではありがたい。
グランドツアラーだと書いておいてなんですが、ワインディングロードに持ち込んでも、それはそれで魅力的なのだった。
誰にでも薦められるクルマではない
コンパクトカーなのだからワインディングロードではひらりひらりと軽快に走るのかというと、少し違う。リアのスタビリティーが高く、巌(いわお)のような安定感があるのだ。リアの安定感に全幅の信頼を寄せながら、お釈迦(しゃか)様の手のひらで遊ぶようにワインディングロードを駆け巡る。
ステアリングは正確で、自分の思い描いた走行ラインをきっちりトレースできるのがうれしい。専用のスポーツサスペンションと太くて薄いタイヤは、確かに効果を発揮している。
1.4リッター直噴ターボエンジンと7段DSGを組み合わせたパワートレインはピックアップが鋭く、アクセルペダルを踏めば間髪入れずに前輪にトルクが伝わる感触が心地いい。
いずれやってくるだろうポロGTIも大いに気になるところではあるけれど、ポロ ブルーGTの完成度も相当高い。
高速道路とワインディングロードのセクションでは、総じて「凛々(りり)しいクルマ」という印象を受けた。無駄な飾りとか豪華さはないけれど、きっちり走るという目標を掲げてそれを実現した、ブレのない車だ。
「燃費とスポーツ性能を高次元で両立した」というのもあながち大げさではないな、と思いながら都内に舞い戻る。
夕方のラッシュアワー、都心の道は混雑している。そこへ足を踏み入れると、朝に感じた違和感が戻ってくる。この程度のスピード域だと、やっぱり乗り心地が粗い。高速道路やワインディングロードで感じた凛々しさが、市街地ではとげとげしさに変わる。
ポロシリーズの最上級グレードだからといって、だれにでもおすすめできるモデルではないというのが結論だ。得たものも大きい代わりに、失ったものもある。なにより、ベーシックグレードのポロTSIコンフォートラインより約50万円高い。
ハンバーガーがおいしかったのでチーズバーガーを頼んだら、自分にはチーズはトゥーマッチだった……。そんな印象が残った。
(文=サトータケシ/写真=森山良雄)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1685×1445mm
ホイールベース:2470mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/40R17 87V/(後)215/40R17 87V(ダンロップSP SPORT MAXX)
燃費:21.5km/リッター(JC08モード)
価格:283万5000円/テスト車=322万8660円
オプション装備:ACCパッケージ(6万4800円)/バイキセノンヘッドライトパッケージ(12万9600円)/714SDCWパッケージ(19万9260円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:815km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:378.9km
使用燃料:23.8リッター
参考燃費:15.9km/リッター(満タン法)/16.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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