ホンダ・ジェイドRS(FF/CVT)
通なアナタにオススメしたい 2015.07.14 試乗記 ホンダのロールーフミニバン「ジェイド」に、1.5リッターガソリン直噴ターボエンジンを搭載したスポーツグレード「RS」が登場。ユニークなシートアレンジの利便性と、走りの実力をリポートする。第一印象は“ターゲット不在”
こんな背の低いミニバン、いまさら誰が買うの? 子育て中のママは買わないだろうし。よくこんなところを狙って商品を出してきたなぁ~。
ジェイドの登場を知ったとき、そう思いました。「ストリーム」の後継、またはハイトミニバン化する前の旧型「オデッセイ」ユーザーの受け皿となるクルマだとはわかるものの、ホンダ1社で4台ものミニバンラインナップをそろえるのは多すぎるのでは。世界戦略車として開発され、中国ではかなり売れていると聞くけれど、国内専用車が断然幅を利かせている日本のミニバン市場では、正直「売れるのかな?」と。
とはいえ、同じミニバンのなかでもそれぞれ個性は違っていて、オデッセイや「ステップワゴン」をファミレスに例えるとするならば、「フリード」はファストフード店。では、ジェイドはというと、“センスのいい大人が通う一軒家レストラン”といったところでしょうか。6人乗りで、2列目が独立した2座で、基本は4人乗りという仕立てはストリーム譲りですが、ジェイドはさらに大人っぽい、贅沢(ぜいたく)な空間になっています。
ハイブリッド車につづき登場した、1.5リッターターボエンジン車のジェイドRSに試乗し、その魅力を探ってみました。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スタイリングのよさはホンダ車随一
ロールーフのスポーティーなミニバンとして登場したジェイドですが、ハイブリッドのパワーユニットを共用する「シャトル」とは、スタイルも使い勝手もかなりオーバーラップしてくるんですよね。
でも、比べてみればジェイドのほうがずっと車両価格が高いだけあって、車格の差は歴然。ジェイドRSの1.5リッター直噴ターボはシャトルにはないし、ボディーサイズもひとまわり大きく、風格を感じさせます。フロントからリアにかけて細く長く伸びるガラス面や、ふっくらと張り出した前後のフェンダーパネルなど、ホンダ車では1、2を争うといっていいほど上品で美しいデザインではないでしょうか。
さらに室内には、他のファミリー向けミニバンとは比べものにならない上質感が漂います。運転席まわりは、左右に翼を広げるように木目調パネルが伸び、先進的かつシンプルな造形のメーターにも好感が持てます。
ジェイドのインテリアの特徴といってもいいのが、2列目のVスライドキャプテンシート。ホイールハウスを避けるよう、内側から外側に向かって斜めにスライドするユニークなつくりで、2列目を贅沢なリムジン空間としながらも、3列目へのウオークスルーをも可能にするという画期的なアイデアです。2座を後方にスライドさせると足元には広々とした空間が生まれ、前方の視界も開けます。逆に前方へスライドさせると、2座の間には大人の足が1本入る程度の隙間ができ、3列目シートへの移動ができる仕組み。狭い空間のなかで、上質感を損なわずにミニバンとしても使えるようにした工夫は、なかなかのものですね。
快適に乗車できるのは4人まで
ただし、3列目シートは緊急用といっていいと思います。狭いので取りあえず座ってしまおうと腰を下ろしたところ、想像以上に座面が薄く、「痛っ!」と声を上げてしまいました。足元のスペースについては、2列目シートを一番前に出した状態では24.5cmの靴サイズがぴったり入る程度の床面を確保できましたが、一番後ろに下げた場合は足を下ろすスペースはなし。このように狭くて我慢が必要な3列目ですが、唯一の救いは頭上に専用のグラスエリアが広がっていること。夏は暑いだろうなとは容易に想像ができますが、圧迫感を軽減する工夫はされていますね。
ステップワゴンのように、あまり力を入れずに軽々とシートアレンジができるモデルもあるなかで、ジェイドのシートアレンジは2列目、3列目ともに、ある程度力が必要だと感じました。女性でもできないことはないけれど、「ステップワゴンを開発したのと本当に同じメーカーのクルマなの?」と勘ぐってしまいます。それに、2列目シートはかなりしっかりとした重厚感のある造りのわりに、調節用のレバーが華奢(きゃしゃ)で、壊れないかと不安になったり。
新開発の「わくわくゲート」でテールゲートからの出入りも可能になった新型ステップワゴンを、“快適ミニバン度100%”とすると、ジェイドのそれはせいぜい60%程度かなと。日常的に6人乗車で移動したいという方にはあまりおすすめできませんが、乗るのは基本的に4人までで、年に数回だけ5人以上乗ることもある、そんな方にはおすすめできると思います。
このハンドリングはやみつきになる
「なにこのハンドリングのよさ、気持ちいい~!」
走りだしてすぐ、興奮気味に口をついて出た第一声がコレ。ステアリングはしっかりと脇を締めて握るのにちょうどよいサイズで、かなり走りを意識したクルマだということが伝わってきます。とりわけ、ナイフのような切れ味を持つシャープなハンドリングはやみつきになるほど。こんな風に感じられたクルマは、過去にも数えるほどではなかったかと。
走行中のエンジン音も静かだし、気になる突き上げもなく、足まわりもしっとりとした癒やし系。同じ1.5リッターのターボエンジンを搭載したステップワゴンと比べると、車重は200kg軽く、走りは快適そのもの。ゆったりとクルーザーを操縦しているように感じさせるおうようさと、低重心のクルマならではの安定感やシャープさをあわせ持ち、ロングツーリングにピッタリといった雰囲気です。
「ECON」モードがオンの状態では少々穏やかに感じられた加速も、オフにした途端に鋭いものに変化。ストレスなくアクセルを踏み込んでいけます。とにかく運転がラクだし、どこまでも走っていきたい、そんな気持ちにさせてくれるクルマですね。
ただ、ひとつ気になったのはボディー前端の見切りが悪いこと。シートの高さをかなり上げてみたものの、結局把握できず。美しいデザインを優先したということで、この点については目をつぶる必要がありそうです。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「知る人ぞ知るクルマ」になる前に
「このクルマ、一体誰が買うの?」
そんな思いで運転席に座ったものの、想像以上に走りがよく、ほんの少し運転しただけで「これはイイ!」を連発していたんですよ。これには自分でもビックリ。国内では地味に登場したジェイドでしたが、かなり通好みな、いいクルマではないかと思うんですね。これを中国の人たちだけに独占させておくのはもったいないですよ!
ミニバンを買いたいという層のなかには、「広くて使い勝手がいいだけじゃ選べない。運転が楽しく、上質感のある大人な空間が欲しい」という人たちも、少数派ではあるけれど確実にいます。そんな彼らからすれば、ジェイドRSはまさにドンピシャ。デザインや走りがいいうえに、単眼カメラとミリ波レーダーによるホンダの安全支援システム「Honda SENSING」も搭載され、アダプティブクルーズコントロールの設定もアリ。安全性という点においても抜かりなしだといえます。
ボディーの見切りが悪いというネガポイントもありますが、このクルマを選ぶのは大抵クルマ好きで運転に慣れた人でしょうから、問題ないでしょうしね。
発売からまだ日も浅いこの時期に言うのは少々はばかられますが、かなり通好みなクルマだけに、日本市場では1代限りで終了になるのかな、という予感が……。でも、ジェイドRSは確実にクルマ好きにはササります。20年後にはマニアックな“レジェンド車”として殿堂入りしているかもしれません(笑)。
ストリームの後継車と考えるとちょっとお高いですが、欧州車でライバルとなりそうな「ボルボV60」あたりよりははるかに安いですし、このデキのよさであればお買い得だと思いますが、いかがでしょう?
最近、街でジェイドを見かけると、思わずドライバーの顔をガン見しちゃうんですよ。それがジェイドRSだったら、もうリスペクトですね。「この人、通だわ~!」って(笑)。
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ホンダ・ジェイドRS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4650×1775×1530mm
ホイールベース:2760mm
車重:1520kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150ps(110kW)/5500rpm
最大トルク:20.7kgm(203Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップSP SPORT 270)
燃費:18.0km/リッター(JC08モード)
価格:253万円/テスト車=296万552円
オプション装備:ナビ装着用スペシャルパッケージ(3万7800円)/Honda SENSING+マルチインフォメーションディスプレイ(10万8000円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(4万3891円)/Gathersナビ<VXM-155VFEi>+フェイスパネルキット<VXM-155VFEi用>+ナビ取り付けアタッチメント<VXM-155VFEi用>(24万861円)
※販売店オプションはいずれも工賃含む
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1598km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:190.3km
使用燃料:16.7リッター
参考燃費:11.4km/リッター(満タン法)
拡大 |

スーザン史子
-
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】 2026.7.3 俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムブラックS:HEV EX プロトタイプ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.7.2 スバルのクロスオーバーモデル「レヴォーグ レイバック」に、ハイブリッドユニットを搭載し、車高を20mm落とした「S:HEV」が登場。電動パワートレインと切り詰められた足まわりは、このクルマにどんな走りをもたらすのか? ワインディングロードで確かめた。
-
トヨタGRカローラRZ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.1 GAZOO Racingの手になる「トヨタGRカローラ」が、一部改良でさらに進化。強化されたボディー剛性にサウンドコントロールシステムの追加など、従来モデルからの変更点をおさらいしつつ、硬派で辛口なその走りをリポートする。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】 2026.6.30 アウディのコンパクトSUV「Q3」がフルモデルチェンジ。新しくなったのはすっかり押し出しの強くなったフロントマスクだけでなく、内装もすべて新設計。インフォテインメントや灯火類などにも最新のシステムを採用した意欲作だ。「スポーツバック」の4WDモデルの仕上がりをリポートする。
-
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】 2026.6.29 マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。
-
NEW
プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ(後編)
2026.7.5思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「プジョー5008」に試乗。後編ではいよいよパワートレインとシャシーの仕上がりについて深く切り込む。雨のワインディングロードで5008は、レジェンドドライバーにどんな印象を残したのだろうか。 -
スズキ・ハスラー ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2026.7.4試乗記スズキの軽クロスオーバーモデル「ハスラー」のマイナーチェンジモデルが登場。愛らしいフロントマスクにお化粧直しが施されたほか、先進運転支援装備が一段と充実。さらに走行性能の強化も図るなど、そのメニューは盛りだくさんだ。「ハイブリッドX」グレードのFFモデルに試乗した。 -
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダN-ONE e:L編
2026.7.3webCG Moviesホンダの軽「N-BOX」を高く評価する、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さん。では、軽EVの「ホンダN-ONE e:」は……? 試乗した印象を聞きました。 -
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】
2026.7.3試乗記俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。 -
あの『ナイトライダー』が現実に!? 開発が進む「パートナーのようなクルマ」の今を知る
2026.7.3デイリーコラム最新の「メルセデス・ベンツSクラス」には、クルマがパートナーのように寄り添うAI技術が盛り込まれているというのだが……その到達点は? 他メーカーの例も交え、先進技術が可能にするクルマの今と近未来を考える。 -
ハーレーダビッドソン・ナイトスター(6MT)
2026.7.3JAIA輸入二輪車試乗会2026ハーレーダビッドソンの水冷Vツインモデル「ナイトスター」に試乗。「X」シリーズのディスコンに空冷「スポーツスター」の復活と、さまざまな情報が飛び交っているハーレーの入門モデル群だが、ナイトスターの未来やいかに? 走りながら考えた。





























