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ボルボS60ポールスター(4WD/8AT)

とかく控えめな狼 2016.09.20 試乗記 清水 草一 モータースポーツのテクノロジーが注ぎ込まれたハイパフォーマンスモデル「ボルボS60ポールスター」に試乗。エンジンを3リッター直6ターボから2リッター直4ツインチャージャーに変更し、さらにパワーアップした新型の走りをリポートする。 
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ライバルは「アウディS4」

ボルボといえば質実剛健・安全第一なイメージが強烈だが、80年代には「空飛ぶレンガ」こと「240ターボ」のツーリングカーレースでの活躍があり、90年代には「850 T5-R」などのスポーツモデルが四角い顔で俊足ぶりを見せつけた。おかげで今でもボルボには、「実用車(羊)の皮をかぶった狼」のイメージがけっこう濃厚だ。

その狼のイメージを引き継ぐ現在の頂点モデルが、この「S60/V60ポールスター」ということになる。

ポールスターは年次ごとの限定生産モデルで、今年(2017年モデル)は3年目に当たる。これまでは3リッター直6ターボ(350ps)が搭載されていたが、今回はダウンサイジング化の流れに沿って2リッター直4ターボ+スーパーチャージャーに変更。最高出力は367psへと逆に高められている。

生産台数は、これまでの750台から1500台へと倍増になった。ただし販売対象国に中国やインドなど新興国が加わったため、日本への割り当ては100台。内訳はセダンが35台、ワゴンが65台と、ボルボらしくワゴン優位となっているところが相変わらずシブい。

想定ライバルは「アウディS4」だ。共に4WDのスポーツセダン/ワゴンであり、価格もパフォーマンスも非常に近い。

ただし、日本未導入の新型アウディS4は、前型同様3リッターV6ターボを積む。スポーツモデルのダウンサイジング化もどんどん進んでいる中、2リッターツインチャージャーに換装したボルボがアウディに一歩先んじた形だ。もちろん小さくすりゃいいというものでもないですが、時代の流れとしてはそんな感じです。

「ボルボS60/V60ポールスター」の日本への割り当ては、S60(手前)が35台、V60(奥)が65台の合計100台。
「ボルボS60/V60ポールスター」の日本への割り当ては、S60(手前)が35台、V60(奥)が65台の合計100台。 拡大
インテリアは先代モデルからの変更はない。本革/ヌバックのステアリングホイールが装着されるほか、ドアトリムやセンターアームレストなどにもヌバックが張られる。
インテリアは先代モデルからの変更はない。本革/ヌバックのステアリングホイールが装着されるほか、ドアトリムやセンターアームレストなどにもヌバックが張られる。 拡大
フロントシートには、人間工学に基づいてデザインされ、ホールド性に優れたスポーツシートを採用。
フロントシートには、人間工学に基づいてデザインされ、ホールド性に優れたスポーツシートを採用。 拡大
ボルボは2015年7月、レース部門を除くポールスターの株式を100%取得したと発表。ポールスターはボルボ・カーのパフォーマンスブランドという位置づけになった。写真はポールスターCOOのニルス・メラー氏。
ボルボは2015年7月、レース部門を除くポールスターの株式を100%取得したと発表。ポールスターはボルボ・カーのパフォーマンスブランドという位置づけになった。写真はポールスターCOOのニルス・メラー氏。 拡大
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見た目よりも空力

試乗車のボディーカラーは鮮やかなレーベルブルー。それだけで目立ち感はかなりのものだが、それ以外の部分、特にエアロなどの武装はごく控えめで、ノーマルモデルとの差別化は割と地味である。レーシングチームであるポールスターとの共同作業で開発されたというだけに、見た目より実利すなわち空力を最優先した、ボルボらしい質実剛健な風情だ。

その中で比較的目を引くのはリアだ。レーシィなディフューザーといかにもスポーティーなマフラーカッター形状が、羊の皮をかぶった狼を主張する。抜かれた瞬間「うおおお、ポールスターよ、お前だったのか!」みたいなサーキットの狼ごっこも可能だろう。よく見ればフロントグリルにも小さな正方形のポールスターエンブレムがブルーにきらめく。「次回からは、このエンブレムがミラーに映ったら道を譲りな。フッ」と、捨てゼリフも決まりそうだ。

先代の「S60/V60ポールスター」は世界13マーケットで750台の限定販売だったが、新型は47マーケット、1500台まで販売を拡大する予定だという。
先代の「S60/V60ポールスター」は世界13マーケットで750台の限定販売だったが、新型は47マーケット、1500台まで販売を拡大する予定だという。 拡大
ABペダルは専用のスポーツタイプ。
ABペダルは専用のスポーツタイプ。 拡大
マフラーにもポールスターのロゴが刻印されている。
マフラーにもポールスターのロゴが刻印されている。 拡大

スポーツモードでワル夫と化す

ところで実際、そんな狼ごっこが可能なほど、ポールスターは速いのか?

今回の試乗は箱根のターンパイクを占有して行われた。つまり速度無制限。その上で断言するが、ポールスターはかなり激速である。

前述のようにパワーユニットは2リッター直4のターボ+スーパーチャージャーで、踏み込んだ瞬間はスーパーチャージャーがトルクを稼ぎ、その後を大径タービンが引き継いで大地を蹴る寸法だが、そんなバトンタッチを一切意識させることもなく、ひたすらトルクフルかつパワフル。イメージとしては、低い回転から十分なトルクが湧き出しつつ、中回転にかけてしっかり盛り上がり、そこから先はレブリミットまでフラットトルクでシュオーンと吹け上がる感じだ。8段ATをフル活用してマジなヒルクライムを敢行すれば、「うおおおお、ヤバいくらいの速さだぜ!」と叫ばずにはいられない。

サウンドも十分魅力的だ。ノーマルモードでは控えめながら、S(スポーツ)モードを選択すると、AMGの45系を少し上品にしたようなワイルドなサウンドが轟(とどろ)く。そこからさらに隠れキャラとして、+パドルを引きながらATレバーを2度手前に引くと“スポーツプラス”モードに入り、シフトスピードが素早くなってエキゾーストバルブは開放状態。AMG顔負けのワル夫と化す。実際にオーナーがここまで使うのはごくまれだろうと推察するが、それでも「できる」という事実は隠し味だ。

データを見ると、最大トルクの発生回転域は3100~5100rpm。つまりダウンサイジングターボ特有の「回しても回さなくても大差なし」な退屈感とは無縁ながら、むやみに回しまくりたくなるほどでもなく、なんだかんだで中速が一番おいしいという、実用スポーツモデルとしてちょうどいいところに落とし込んである。

「S60ポールスター」の動力性能は0-100km/h加速が4.7秒。最高速については250km/hで速度リミッターが作動する。
「S60ポールスター」の動力性能は0-100km/h加速が4.7秒。最高速については250km/hで速度リミッターが作動する。 拡大
「S60ポールスター」の2リッター直4ツインチャージャーエンジン。最高出力367psを誇り、同社史上最速とうたわれる。
「S60ポールスター」の2リッター直4ツインチャージャーエンジン。最高出力367psを誇り、同社史上最速とうたわれる。 拡大
トランスミッションはアイシン・エィ・ダブリュ製の8段AT。セレクターのノブにポールスターのロゴが入る。
トランスミッションはアイシン・エィ・ダブリュ製の8段AT。セレクターのノブにポールスターのロゴが入る。 拡大
ステアリングにはシフトパドルが備わる。「Sport+」モードを選択すると、シフトスピードが素早くなる。
ステアリングにはシフトパドルが備わる。「Sport+」モードを選択すると、シフトスピードが素早くなる。 拡大
リアスポイラーとディフューザーが後ろ姿をスポーティーに演出する。
リアスポイラーとディフューザーが後ろ姿をスポーティーに演出する。 拡大

ボルボの実力恐るべし

このようなワルで激速なポールスターだが、反面フツーに走ると、まったく完全にジェントルかつフレンドリーなところが、最大の特長ではないだろうか。

見た目は控えめだし、実用性も一切損なわれていないし、ノーマルモードではワルなサウンドは轟かないし、なにより乗り心地が抜群にしなやかで、「ガツン」と突き上げが来る瞬間がまるでない。スポーツモデルであることすらほとんど意識させないのだ。

それでいて、速度無制限のターンパイクを鬼のように攻めてもまったく安心。4気筒化によって軽くなったノーズを利して、バランスよく軽快に限界まで攻められる。ブレンボ製ブレーキの性能も十分だ。

それにしても、20インチタイヤをこれほどジェントルに履きこなすとは。この気取らない超高性能ぶり、ボルボの実力恐るべしと言わざるを得ない。

ボルボとしては、他の欧州プレミアムブランドに伍(ご)して、このポールスターをいずれはアウディのRSやメルセデスのAMG、BMWのMといった高みにまで育てたいのだろう。現状のブランド力ではまだそこまでは難しいが、取りあえず今、このポールスターというモデルに関して言えば、限定車というレア感も加点して、アウディS4に十分対抗可能と見た。

(文=清水草一/写真=池之平昌信)

気取らない超高性能ぶりを誇る、「S60ポールスター」は「アウディS4」に十分対抗できる、と語る筆者。
気取らない超高性能ぶりを誇る、「S60ポールスター」は「アウディS4」に十分対抗できる、と語る筆者。 拡大
タイヤサイズは前後とも245/35R20。試乗車には「ミシュラン・パイロットスーパースポーツ」が装着されていた。
タイヤサイズは前後とも245/35R20。試乗車には「ミシュラン・パイロットスーパースポーツ」が装着されていた。 拡大
新デザインのポールスターホイール。ブレーキにはブレンボの6ピストンキャリパーが装着される。
新デザインのポールスターホイール。ブレーキにはブレンボの6ピストンキャリパーが装着される。 拡大

テスト車のデータ

ボルボS60ポールスター

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1730kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:367ps(270kW)/6000rpm
最大トルク:47.9kgm(470Nm)/3100-5100rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y/(後)245/35ZR20 95Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:12.2km/リッター(JC08モード)
価格:839万円/テスト車=839万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(0)/山岳路(10)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

 

 

 

 

ボルボS60ポールスター
ボルボS60ポールスター 拡大
 
ボルボS60ポールスター(4WD/8AT)【試乗記】の画像 拡大
 
ボルボS60ポールスター(4WD/8AT)【試乗記】の画像 拡大
 
ボルボS60ポールスター(4WD/8AT)【試乗記】の画像 拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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