日産ノートe-POWER X モード・プレミア(FF)
刺激がタップリ 2017.02.04 試乗記 シリーズ式ハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載する、「日産ノート」のカスタマイズモデル「ノートe-POWER X モード・プレミア」に試乗。高級感を演出した見た目にとどまらない、個性的な走りの質を報告する。外観よりもシャシーに注目
日産ノートe-POWERは2016年11月に実施されたノートのマイナーチェンジ(日産自身によると一部仕様向上)に合わせて追加されたバリエーションだが、そのときはe-POWERの登場に加えて、外観デザインの刷新も大きなテーマだった。
日産の最新デザイン記号(=Vモーショングリル)による新しいフロントデザインが最大のキモだが、純正カスタム業者のオーテックジャパンがそれを逆手にとって(?)発売したのが、このモード・プレミアだ。
モード・プレミアのフェイスはあえて従来のオリジナルデザインをベースにしている。ノートにVモーションを違和感なく溶け込ませたデザインもさすがの職人仕事だが、ノートのプロポーションはそもそも旧フェイスを前提に構築されているだけに、やっぱりオリジナルフェイスはおさまりがいい。オーテックジャパン自身も「新しいデザインになじめないお客さまに……」と主張。さすが抜け目ない。
モード・プレミアは基本的に純粋な内外装ドレスアップモデルなのだが、e-POWERのモード・プレミア限定で、なんともマニアックなオプションが用意されることは知っておくべきだろう。今回の試乗車にも装着されていたそのマニアックなオプションとは、8万6400円で装着できる「ツーリングパッケージ」である。
専用16インチホイールと専用タイヤ、サスペンション/車体補強/パワーステアリングと全面にわたって専用のシャシー、そして「ファインレスポンスVCM(Vehicle Control Module)」というパワートレインの専用プログラムが、その構成内容だ。
ツーリングパッケージの構成部品は、同じくオーテックジャパンが架装を担当する「ノートe-POWER NISMO」とすべて共通という。つまり、このクルマは“見た目はモード・プレミア、走りはまんまNISMO”というわけで、なんともシブいマニア物件なのである。
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ノーマル車とは別物の走り
というわけで、この原稿はあくまでノートe-POWER モード・プレミア(のツーリングパッケージ装着車)の体験記だが、ここからの表記はe-POWER NISMOとゴチャ混ぜになってしまう。まあ、どちらにも当てはまる内容ということで、今回はご容赦いただきたい。
ノートのNISMOはマイナーチェンジ以前から設定されていた。e-POWER NISMOのパワートレインもハードウエア構成は標準車と同じで、昨今のNISMOの作法にならって、「S」がつかない素のNISMOとなる。
よって、シャシーチューンは快適性にも配慮した“寸止め”をきかせたタイプだ。e-POWERは前軸荷重が大幅に増えている(非e-POWER比で100kg以上)ので再チューニングの苦労がしのばれるが、シャシーの完成度は相変わらず高い。
e-POWERのツーリングパッケージ/NISMOの走りはノーマルとは別物のように、上下左右の動きが抑制される。路面に吸いつくミズスマシ挙動だが、ズシンという重い突き上げと同時に、それをビタッと押さえつける。舗装のツブツブもリアルに伝えるチューニングカー然とした乗り心地でありながら、乗り手に鋭利な不快感をまるで与えないのは、車体補強の巧妙さも大きいと思われる。
専用VCMは“100%電動駆動”ならではの新しいチューニングである。パワートレインのピーク性能はそのままで、基本的にはペダル操作に対する出力曲線を“早開け・早閉じ”にしているだけのようだが、そこは電動駆動。純エンジンなら本体のレスポンスも上げないと成立しにくいが、e-POWERではプログラムだけでいきなり効果絶大で ある。
アクセル操作は慎重に!?
e-POWERにはもともと、3つのパワートレインモードがある。ノーマルはあえて通常のオートマエンジン車に近い特性を再現したもので、回生ブレーキもマイルド。最終的にはブレーキペダルを踏まないと停止しない。
e-POWERらしいモードは「S」と「ECO」で、どちらも強力に回生ブレーキが作動して最終的には停止にいたる、いわゆる“ワンペダルドライブ”が可能となる。専用VCMはこのうちのSのモードにのみ専用プログラムが仕込まれている。専用VCMのレスポンスは笑ってしまうほど強烈に鋭い。電動駆動なのでわずかなタイムラグもなく右足に完全リンクして、しかも供出されるトルクは背中を思いっきり蹴られるように強烈なのだ。
それこそ、無意識にタメ息をついたときの右足のかすかなブレにまで反応して、明確に加減速Gが出る。乗り手がテンションを高めて走っているときには、すこぶるつきの面白さだが、エンジン車に慣れきった体では、そのあまりに鋭い加減速レスポンスに気疲れしてしまうのも事実である。
また、専用VCMはエンジン制御にも少し手心が加わっている。具体的には、アクセルペダル操作にエンジン回転をリンクさせる制御だそうで、Sを選んだときには、速度の上昇にある程度ともないながらエンジン回転を上げていく。
その所作は純エンジン車なみ……とはいわなくとも、ノーマルのe-POWERのようにエンジンが自分勝手に回っている感は薄れており、人間とエンジンとの間に、ごく一般的なハイブリッド車程度のつながり感がもてる。
ワインディングロードで楽しめる
今回のツーリングパッケージ/NISMOを含めて、ノートe-POWERを所有して、実際にワンペダルドライブ生活をする場合、普段はECO、イザのときのみSという使いかたになるだろう。
で、ノートe-POWERのECOがなかなかの優れもので、加速側はあくまで穏やかながら、回生ブレーキは強力。慣れるとなんの気づかいなく、ブレーキペダルいらずの運転が可能となる。もちろん、周囲の状況によってはブレーキペダルを踏まなければならないが、一度身についてしまうと、そういう状況におちいると「チッ!」と舌打ちしてしまうほどワンペダルドライブは依存性が高い。
ただ、この専用VCMのSの味つけはちょっと極端にも思える。標準のe-POWERなら気分や周囲のペースに応じてSとECOとを使い分けたくなるが、専用VCMのSはそれこそドライビンググローブを装着して深呼吸してからボタンに手を伸ばす……というくらいの猛烈レスポンスになってしまっており、ECOとSの差がちょっ と激しすぎる。個人的にはその中間=標準のSに相当するモードも残してほしか ったところだが、それだとモード数がひとつ増えてしまう。今回のようなカスタム商品では、そこまで踏み込めなかったのかもしれない。
e-POWERのワンペダルドライブは前記のような日常づかいのメリットだけでなく、エンジン車にはないレスポンシブな荷重移動によるハンドリング効果も大きい。次々と迫りくるコーナーを、アクセル調整だけでクリアしていく山坂道は、素直に新鮮で面白い。
専用VCMはNISMOシャシーがあってこそ……といっていい。この猛烈な加減速レスポンスを、かりにノーマルシャシーと組み合わせたら前後の挙動変化が大きすぎて、そうとう神経質な乗り物になりそうだからだ。
前に“走りはNISMOと同じ”と書いたが、完全に同じではない。ステアリングホイールとシートがちがうからだ。とくにノーマルと同形状のシートは普段は肌触りよく快適だが、山坂道ではツーリングパッケージが発生する前後左右Gにホールド性が物足りないケースもなくはない。この点だけはNISMOのレカロシートにはかなわない。
興味深い“ジャジャ馬”ぶり
山坂道でもすこぶるつきに新鮮で楽しいe-POWERだが、あまりタイトなつづら折れはそう得意としないのはツーリングパッケージ/NISMOも基本的に変わっていない。
ステアリングは正確で、通常のグリップ性能も十分に高いのだが、いかんせんノーズが重い。Bセグメントサイズで前軸荷重800kg(車検証による)は、やはり絶対的に重いといわざるをえない。
ノートはステアリングレシオも意外にスローな設定で、それは日常の上品な身のこなしには利点となるが、山坂道ではステアリングの切り遅れによる、いわゆる“手アンダー”を誘発しやすい。
よって、小さいコーナーではしっかりとした減速が不可欠で、しかも不用意に加速態勢に入れると、電動駆動ならでは大トルクで走行軌跡がふくらみやすい。まして専用VCMだとその大トルクが瞬時に発生するので、山坂道をうまく走るには“足アンダー”を発生させない繊細な右足が必要である。
もっとも、電動駆動車に趣味的な付加価値を与える商品づくりは、やっとスタート地点についたばかり。メーカー純正の“チューンド電動駆動車”なんて今回がほぼ世界初の実例なわけで、勢いあまって演出過多になってしまうのも理解できないでもない。この多少のジャジャ馬っぷりも、後にマニア間で「刺激タップリの初期モデル!」ともてはやされる可能性もある。
いずれにしても、この専用VCMは電動駆動車の面白さと可能性をうかがわせる。e-POWERがエコかどうかについては賛否両論ある。ただ、100%電動駆動車は純粋に面白いし、プログラムひとつでこれだけ走りをガラリと変えてくれるのだから、この道を突き進む手はありだと思う。
そのモーターを電池でまわすかエンジンでまわすか(あるいは水素?)……は、技術の進歩や時代の流れ、社会状況に合わせて変わっていけばいい。
(文=佐野弘宗/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
日産ノートe-POWER X モード・プレミア
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4130×1695×1520mm
ホイールベース:2600mm
車重:1230kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:79ps(58kW)/5400rpm
エンジン最大トルク:10.5kgm(103Nm)/3600-5200rpm
モーター最高出力:109ps(80kW)/3008-10000rpm
モーター最大トルク:25.9kgm(254Nm)/0-3008rpm
タイヤ:(前)195/55R16 87V/(後)195/55R16 87V(ヨコハマDNA S.drive)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:220万7520円/テスト車=288万3569円
オプション装備:LEDヘッドランプ<ロービーム+オートレベライザー付き+プロジェクタータイプ+LEDポジションランプ付き>(7万5600円)/日産オリジナルナビ取り付けパッケージ<ステアリングスイッチ+リア2スピーカー+GPSアンテナ+TVアンテナ+TVアンテナ用ハーネス>(2万7000円)/ボディーカラー<ガーネットレッド>(4万8600円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物 検知機能付き>+スマート・ルームミラー<インテリジェントアラウンドビューモニター表示機能付き>+踏み間違い衝突防止アシスト+フロント&バックソナー+ヒーター付きドアミラー(9万7200円)/ツーリングパッケージ<専用16インチアルミホイール[切削光輝]&195/55R16 87Vタイヤ+専用チューニングサスペンション+ボディー補強[フロントクロスバー+フロント&リアサスペンションメンバーステー+センタートンネルステー+テールクロスバー]+専用チューニング電動パワーステアリング+ファインレスポンスVCM>(8万6400円) ※以下、販売店オプション ETCユニット 日産オリジナルナビ連動モデル MM516D-W、MM316D-W用(2万5920円)/日産オリジナルナビ取り付けパッケージ付き車用 MM316D-W(16万3666円)/サイドシルプロテクター<ガーネットレッド>(7万0252円)/ルーフスポイラー<ガーネットレッド>(4万3611円)/専用フロアカーペット<[ブラック]消臭機能付き+「Mode Premier」エンブレム付き>(2万2680円)/専用ラゲッジカーペット<[ブラック]消臭機能付き+「Mode Premier」刺しゅう入り>(1万5120円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:578km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:365.5km
使用燃料:26.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.8km/リッター(満タン法)/15.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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