第1回:お手ごろ価格でも楽しさは満点
輸入車チョイ乗りリポート~アンダー300万円編~
2017.02.14
JAIA輸入車試乗会2017
インポートカーの魅力はお値段に比例しない!? 年に一度の輸入車の祭典「JAIA合同試乗会」が、今年も神奈川・大磯ロングビーチで開催された。まずは300万円以下のエントリーモデルのなかから、webCGメンバーが注目した3台の魅力をリポートする。
懐かしいにおいがした
ルノー・トゥインゴ ゼン……171万円
運転席のwebCG折戸が言った。「思わず大黒摩季を思い出しちゃいますね」 記者は即座に悟った。「『ら・ら・ら』ですね。♪なっつっかっしっいにおいっがしったぁ~」 「音程違います」
記者が同僚の言わんとしていることをすんなり理解できたのには、訳がある。2人とも、元「ローバー・ミニ」乗りだったからだ。
すんごい暴論だけど、「トゥインゴ」のMTはあのミニに似ている。ラブリーでライブリーな小排気量4気筒自然吸気エンジンのガンバりっぷりも、シフトダウンしてアクセル全開をくれたときの遅さも。
減速からの再加速でシフトダウンをサボると、ノブをプルプルいわしてドライバーに不満を垂れるが、プルプルしつつもクルマはちゃんと前に進もうとする。けなげである。筒内燃料噴射と過給機の台頭によって失われてしまった大衆車用実用エンジンの愛嬌(あいきょう)が、しっかり残されている。思わずニヤニヤである。
そりゃあトゥインゴは現代のクルマだし、“国籍”はフランスだし、駆動レイアウトはRRである。ステアリングの軽さも含め、違うと言われりゃ全然違う。でも、この際そんなへ理屈はどーでもいんだよ。とにかく心象風景が一緒だったのだ。元ミニオーナーが2人そろって言うんだから、間違いない。
撮影場所の大磯ロングビーチに戻り、編集部の皆でとっかえひっかえ試乗。「お金があったら親に1台買ってあげたい」やら「今日一番の“癒やし系”」やら、皆いろいろな言葉でトゥインゴを表現しようとする。いろいろな言葉で表現したくなるクルマなのでしょう。
オタッキーな話をすれば、特別な技術なんてなにも使われていない、なんの変哲もないただのベーシックカーである。それでも、この時代にこんなクルマ(しかも新車)に乗れたことに、感謝感謝である。
(文=webCG ほった/写真=田村 弥)
脱・スピード至上主義
ルノー・カングー ゼン……259万円
運転席のwebCG折戸が言った。「ああ、いいっすね~」 記者はいたく満足した。そうなのだよ折戸君。このクルマはいいクルマなのだよ。何というか、解放系。乗れば乗るほどリラックスしていく。シートに高額なマッサージ機能なんて付いていなくても癒やされる。
……前ページの「トゥインゴ」に続いて、「カングー」でもこんなことを書いていたら読者諸兄姉にしかられそうなので、そろそろ真面目な話をさせていただきます。
まず「日本市場の要望に応えて搭載した」というデュアルクラッチ式ATだが、全然デュアルクラッチ式っぽくない。キチキチした感じや、ヒアルロン酸が足りていない感じがなく、変速もゆったりのんびり。微低速域でギクシャクしないのも◎である。直前に「ルーテシア」のデュアルクラッチ式AT車に乗っていたwebCG藤沢いわく、「制御が全然違う」とのこと。
ブレーキもストロークや踏力に応じてじんわり制動力が増していくタイプで、ドライバーを威嚇するみたいに、踏みはじめでいきなりガーンと利くようなマネはしない。扱いやすい。
乗り心地に関しては、折戸いわく「後席はけっこうゆすられる。要改善」らしいが、前席については文句なし。ストロークが大きい割にタイヤが路面をつかんでいる感覚もしっかりあって、「加速して左車線に割り込んだら減速しつつ高速の出口へ」といった、本当はやっちゃいけないけど時にやらざるを得ないドライバーの操作にも、落ち着いた挙動でついてきてくれる。
webCGメンバーの中ではカングーに触れる頻度の多い記者であるが、乗るたびに「ぶっ飛ばすことに傾注しなかったら、こんなにいいクルマができるんですね。ルノーさん」と感服してしまう。
せまい日本、そんなに急いでどこへ行く?
(文=webCG ほった/写真=峰 昌宏)
ほほ笑みを運ぶクルマ
スマートBRABUSフォーツー エクスクルーシブ リミテッド……297万円
見ただけでおかしさがこみ上げるクルマの筆頭が「スマートBRABUSフォーツー」である。エアロパーツやらでそれなりにキメちゃってるけど、ま~ぁ小さい、というか短い。全長2785mm×全幅1665mm×全高1545mm。先代よりも10cm近く幅が広がったけれど、最小回転半径は90cmも小さい3.3mに収まった。広めの2車線道路なら一発でUターンが決められる、驚きのスペックだ。
スマートBRABUSフォーツーは、見ると欲しくなるクルマの筆頭でもある。本革のスポーツシートや専用のダッシュボードなどインテリアのしつらえも上質で、各所に「B」のマークが誇らしげに輝く。B印のレブカウンターが備わるのもうれしい。キーをひねると「ぷるるん」とエンジンに火が入る。スゴぶらないのがかわいい。だけどスポーツエグゾーストのせいか、サウンドそのものはなかなか勇ましい。そんなに頑張らなくてもいいのに、といとおしくなる。
パワートレインは、ルノーと共同開発した0.9リッター直3ターボエンジンと6段デュアルクラッチトランスミッションの組み合わせ。BRABUS専用のチューンを施し、「フォーツー ターボ」比+19psの最高出力109psと、同+3.5kgmの最大トルク17.3kgmを発生させる。シフトスピードの向上(最大40%)や、ゼロ発進に効くローンチコントロール機能の追加も自慢だ。控えめな数値がほほ笑ましい。暴力的な加速が自慢のクルマは、ほかにたくさんある。
撮影のために「クルン」と回ると、笑いがこみ上げた。まるでコマネズミ!? 周りのスタッフも指をさして笑っている。“無駄にシフトしたくなる”クルマはあっても、“無駄にターンしたくなる”クルマって、めったにない。
(文=webCG こんどー/写真=田村 弥)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
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