ランドローバー・レンジローバー スポーツHSEダイナミック(ディーゼル)(4WD/8AT)
もうガソリン車はいらない 2017.07.13 試乗記 高級SUV「レンジローバー」シリーズの中でスポーティーなモデルと位置づけられている「レンジローバー スポーツ」に、ディーゼル車が登場。3リッターのディーゼルターボを得て、その走りはどう変わったのか? 燃費もあわせて報告する。見分けのつかないイケメン軍団
例えば近年のメルセデスは、鬼のようにモデル展開を拡大しており、よほどのマニアでないと、なにがなんだかわからなくなっているが、それが時代の流れ。ランドローバーもモデル展開を控え目ながら急拡大している。
おさらいのため、そのラインナップをスタート価格が高い順に列記すると、
・レンジローバー
・レンジローバー スポーツ
・ディスカバリー
・レンジローバー ヴェラール(秋ごろに日本で発売予定)
・ディスカバリー スポーツ
・レンジローバー イヴォーク
となる。かなりのクルマ好きでも、「どんなんだったか思い浮かばない」というモデルがありませんか? 私はありました。反省。
ランドローバーの現行ラインナップは、デザイン面で完璧な統一感を保ち、どれもこれもウルトラ精緻で美しい。全員イケメン過ぎて見分けがつかないのです。インテリアも統一感満点。パワートレインも乗り味も統一感満点。つまり違うのは、値段と広さと使い勝手だけ、みたいな感じで、どれでもだいたい同じです。そうなるともう「どれでもいーや!」という風になってしまう。いい意味で。
で、今回試乗させていただいたいのは、上から2番目のレンジローバー スポーツに追加導入されたV6ディーゼルモデルです。レンジローバー スポーツのお値段は、860万円から1648万円までですが、今回乗ったディーゼルの最上級モデル「HSEダイナミック」は、1090万円となっております。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
おどろきのV6ディーゼル
思えば初代レンジローバー スポーツは、ワルでステキなクルマだった。当時のランドローバーは、「ディフェンダー」を別格とすると、レンジローバーとディスカバリーと「フリーランダー」だけ。そこにレンジローバー スポーツが加わって、モデル数が3から4に増えたというのは、それだけでかなりのインパクトだったし、乗り味のインパクトも抜群だった。
貴族的でとっても上品なレンジローバーに比べると、レンジローバー スポーツはいかにもパワフルでイケイケで、アクセルを踏み込めばワルな重低音がとどろき、爆走フル加速→フルブレーキング→ハードコーナリング! みたいな、当時のSUVが苦手だったことを軽々とこなして仰天させられた。
ところが2013年登場の2代目は、オラオラ感が大幅に弱まって、単にレンジローバーのちょっとお安い版のようなテイストになり、「どこがスポーツ?」と、ややガッカリしました。
しかしまぁ、この見分けが難しいイケてるデザインと、レンジローバーそのままの精緻でエリート感満点な乗り味という在り様は十分アリなわけで、そこにトルキーで低燃費なディーゼルモデルが加わったのは、大いに商品力アップに貢献! なのは間違いない。
3リッターV6ディーゼルエンジンのスペックをおさらいすると、最高出力258ps/3750rpm、最大トルク600Nm/2000rpm。トルクはガソリンのV8スーパーチャージドにも迫る数値で、JC08燃費は、ガソリンV8スーパーチャージドの7.3km/リッターから12.6km/リッターにアップ。これを見ただけで、ディーゼルを選ばないのはよっぽどのディーゼル嫌いか、あるいはジャガー・ランドローバーのミャーミャー猫みたいに鳴くスーパーチャージャーがよっぽど好きなのかどっちかでは、と思ったりする。私はミャーミャー鳴くスーパーチャージャーも好きですが、燃料代のことを考えたら1秒も迷わずディーゼルです。
ということで試乗開始。音はとても静かだ。車外で聞けば辛うじてディーゼルだとわかるが、車内ではもうまったくわからない。さすがV6ディーゼル。直4とは格が違う。走りだせば、ディーゼルの太いトルクで、ただただ静かに快適に速度が高まっていく。アクセルレスポンスもシャープ。ホントにまるでガソリンエンジンだ!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
低速トルクは意外に細い
ところが、ちょっとしたことに気付いた。1500rpm以下のトルクが細いのだ。ディーゼルといえば、ぶっとい低速トルクが最大の美味。もちろんレンジローバー スポーツの3リッターV6ディーゼルもぶっとい低速トルクを持つが、ぶっといと言えるのは1500rpmより上で、そこから下は結構細い。
近年のクリーンディーゼルは例外なくターボで過給しているわけですが、排気量が小さいとタービンを回す力が弱くなり、極低速トルクは弱まっていく。私が乗っていた「フィアット・クーボ」の1300ディーゼルは、2000rpm以下のトルクが相当細くて困りました。しかしレンジローバー スポーツは3リッター。今や乗用車用ディーゼルとしては最大級の排気量だ。それにしては細いな、と感じさせる。
ZF製8段ATは、フツーに走っていると2000rpm未満でどんどんシフトアップするので、1200rpmで巡航、なんてシーンもフツーなのですが、その回転からだとほとんど加速しないのです。よってATは、アクセルを踏み込むとシフトダウンします。
ただ、そこまで超ノンビリ系の運転だと、それをATが学習してノンビリ屋さんだと判断し、アクセルを踏み込んでもキックダウンするまでタイムラグが出る。つまり、こんな排気量のデカいディーゼルなのに、「あれ、トルクが細いな」と感じるシーンが結構あるのです。
ただ、Sモードにしておけば、どんだけノンビリ流していても回転は1500rpm以上に保たれるので、踏んだ瞬間にグンと出てくれる。ちなみにATセレクターは、ジャガー/ランドローバー車でおなじみのロータリー式ではなくレバー式。その方がスポーティーだからか? ランドローバーはそう考えているのだろう、たぶん。
もちろんステアリング奥のパドル(一部グレードだとオプション)でシフトダウンしたっていい。対応策はいくらでもあるんだけど、Dレンジで何も考えずただノンビリ走ってると、「あれ、トルク細いな」と思うシーンに出くわすかも、ということです。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗り心地や燃費は文句なし
ジャガー・ランドローバーの2リッターディーゼルも、ディーゼルとしては高回転型というか、意外と極低回転が弱い面がありますが、それは3リッターV6にも受け継がれておるのですね。これが味わいなのだと考えましょう! なにせクリーンディーゼルって、どのメーカーのもほとんど変わらないフィーリングなので、なんにせよ特徴があるのはいいことです。
それを除けば、文句をつける部分は何もない。1500rpm以上回っていれば、2330kgのボディーは常に軽々と引っ張られる。高回転までブチ回してもストレスは皆無。「ビイィィィ~ン」みたいな感じで痛快に加速する。本当のホントに、こういうクルマにはもうガソリン車はいらない気持ちになる。
乗り心地はとっても快適だ。フツーに走っていると上品で快適すぎて、やっぱり「なぜこれがスポーツ?」と思ったりもするが、単に廉価版レンジローバーと思えばすべてがぜいたく。これで895万円の「SE(ディーゼル)」から買えると思えば納得だ。廉価版バンザイ!
で、燃費計は11km/リッター前後を示しました。走行条件が良かったので、街中ばかりだと7km/リッターくらいに落ちるでしょうが、なにせこのサイズだし、なによりこれはレンジローバーなんだから、タダみたいな燃料代ですね!
私もそんなにお金が惜しいわけじゃないし、そんなに環境保護派でもなく、逆に「地球には二酸化炭素が必要だ」と思ってますが(二酸化炭素濃度は10億年前との比較では1000分の1に減少。ゼロになると植物が全滅→生物が全滅する)、こういう燃費だと精神的負担が軽いのがうれしい。気兼ねなくロングドライブに出掛けられるじゃないですか! やっぱカネが惜しいだけか……。
その他、2017年モデルの変更点としては、フルスクリーンナビも表示可能なドライバー専用の12.3インチTFTインストゥルメントクラスターや、10.2インチタッチスクリーンなどを含む、インフォテインメントシステム「InControl Touch Pro」を全グレードで標準装備、といったニュースもございます。
ちなみにこのクルマ、ドアを開けるとサイドステップがせり出す仕組みになってます。すごくガッチリした金属製で、足腰が怪しくなった中高年の乗り降りを大いに手助けしてくれるのですが、ドアを開けてすぐにボディー際に立つと、弁慶の泣き所をガツンとやられる。担当者のS君が軽く血を出して泣いてました。女性は特に気をつけて! そこんとこ、オーナー男性はしっかりエスコートしてくださいね~。
(文=清水草一/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー スポーツHSEダイナミック(ディーゼル)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4855×1985×1800mm
ホイールベース:2920mm
車重:2330kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/3750rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)275/45R21 110Y/(後)275/45R21 110Y(コンチネンタル・クロスコンタクト)
燃費:12.6km/リッター(JC08モード)
価格:1090万円/テスト車=1583万4539円
オプション装備:エボニーモルジヌヘッドライニング(6万3000円)/4ゾーンフルオートエアコンディショナー(16万円)/Meridianシグネチャーリファレンスオーディオシステム<1700W、23スピーカー>(96万1000円)/21インチスタイル901<9スポーク、サテンブラックフィニッシュ>(10万7000円)/オートマチックハイビームアシスト(3万1000円)/5+2シート(26万4000円)/シートヒーター&クーラー<フロントおよびリア>(34万3000円)/360度パークディスタンスコントロール(5万7000円)/フロントセンターコンソールクーラーボックス(5万5000円)/スライディングパノラミックルーフ(31万2000円)/イルミネーテッドフロントトレッドプレート(12万4000円)/InControl プロテクト(4万5000円)/InControl セキュリティー(9万5000円)/ウエイドセンシング(5万3000円)/プレミアムフロアマット(3万2000円)/コントラストカラールーフ <ブラック>(9万8000円)/アドバンスド・パークアシスト(14万円)/10.2インチデュアルビュータッチスクリーンディスプレイ(12万4000円)/リアシートエンターテインメントシステム 8インチディスプレイ(34万2000円)/ステルスデザインパック(29万1000円)/オフロードパック(31万2000円)/ドライブプロパック(27万5000円)/InControl コネクトプロパック(5万7000円) ※以下、販売店オプション パワーサイドステップ一式(53万0539円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2074km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:205.5km
使用燃料:20.7リッター(軽油)
参考燃費:9.9km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.2 シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。
-
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】 2026.5.1 英国の名門アストンマーティンのスポーツモデル「ヴァンテージ」が、「ヴァンテージS」に進化。より高出力なエンジンと進化した足まわりを得たことで、その走りはどのように変わったのか? パフォーマンスを存分に解放できる、クローズドコースで確かめた。
-
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.29 「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ケータハム・スーパーセブン2000(FR/5MT)【試乗記】 2026.4.28 往年のスポーツカーの姿を今日に受け継ぐケータハム。そのラインナップのなかでも、スパルタンな走りとクラシックな趣を同時に楽しめるのが「スーパーセブン2000」だ。ほかでは味わえない、このクルマならではの体験と走りの楽しさを報告する。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.27 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。
-
NEW
アルファ・ロメオ・ジュニア エレットリカ プレミアム(FWD)【試乗記】
2026.5.5試乗記アルファ・ロメオのコンパクトSUV「ジュニア」にラインナップする電気自動車「ジュニア エレットリカ プレミアム」に試乗。1973年型の「GT1600ジュニア」を所有していたかつてのアルフィスタは、最新のフル電動アルファに触れ、何を感じたのか。 -
NEW
“ウインカーのカチカチ音”は、どんな理由で決められているのか?
2026.5.5あの多田哲哉のクルマQ&Aウインカー(方向指示器)を使う際の作動音は、どんなクルマでも耳にする一方、よく聞くとブランドや車種によって差異がある。一体どんな根拠で選定されているのか、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリス/GRカローラ/GRヤリスMORIZO RR プロトタイプ【試乗記】
2026.5.4試乗記進化を続ける「トヨタGRヤリス」と「GRカローラ」の、最新バージョンに試乗。硬派な4WDスポーツならではの、サスペンションチューニングの難しさを知るとともに、100台の限定モデル「GRヤリスMORIZO RR」に、そのひとつの回答を見いだすことができた。 -
業績不振は想定内!? 名門ポルシェはこの先どうなってしまうのか?
2026.5.4デイリーコラム2025年から思わしくない業績が続くポルシェ。BEVの不振やMRモデルの販売終了などがその一因といわれるが……。果たして、名門に未来はあるのか? 事情をよく知る西川 淳が、現状と今後の見通しについて解説する。 -
ランボルギーニ・テメラリオ(前編)
2026.5.3思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。「ウラカン」の後継にあたる“小さいほう”ではあるものの、プラグインハイブリッド車化によって最高出力920PSを手にしたミドシップスーパースポーツだ。箱根の山道での印象を聞いた。 -
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.5.2試乗記シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。






















































