BMW 540i xDriveツーリング Mスポーツ(4WD/8AT)
驚きだらけのワゴン 2017.09.06 試乗記 2017年春に世界初公開された新型「BMW 5シリーズ ツーリング」のデリバリーが国内でスタート。その走りや使い勝手はどれほどのものか、最上級モデル「540i xDriveツーリング Mスポーツ」で確かめた。快適さに「隔世の感」
実にスムーズで快適な中型ステーションワゴン。走り屋たることを自らに課していたバイエルンの高級車メーカーも成熟したもんである。昔はもうちょっと硬かった。ランフラットタイヤを採用し始めた初期はなおさらだった。それがいまやなんということか……。技術の進歩に目がくらむ。
先般、お台場で開かれた試乗会において新型「BMW 523dツーリング」と「530eセダン」にチョイ乗りしていたので、新しいG30型世代が往年の、近年でいえばエアサスのメルセデス・ベンツを思わせるほど快適なクルマであることは知っていた。けれど、「短いサスペンションスプリングとハードにセッティングされたダンパーを組み合わせ」ている「Mスポーツ」にしてから、こんなになめらかだったとは! びっくりしたなァ、もう。故三波伸介のギャグを思い出すほど驚いた。
ランフラットだから硬い、という方程式はもはや過去のものである。ここまで過去のものになった以上、定式として成立しない。穴を掘って埋めよう。ワゴンというのは後ろに荷物を積むのでリアのサスペンションが硬くなっていて、居住空間と荷室が一体のため、音の侵入を許しやすくなる、という常識も過去のものといわねばならぬ。むかし話ばかりで恐縮です。
実用性に富むハンサム
2017年2月に国内発売された新型5シリーズのワゴンであるツーリングが登場したのは6月のこと。5のツーリングとしては第5世代となるこれは、2リッターのガソリンとディーゼル、それに3リッターのガソリンと、日本仕様はいまのところ3種類のパワーユニットからなる。
筆者が試乗したのは「540i xDrive」、すなわちバイエルンの伝家の宝刀、ストレート6と、フルタイム4WDの組み合わせを持つ最もぜいたくかつスポーティーなモデルである。あいにくテスト当日は雨が午後から関東地方を襲うと予想され、目的地を箱根ではなくて、木更津方面にとらねばならなかった。残念だけれど、世の中、箱根がすべてではないこともまた確かである。
ツーリングの試乗記であるから、まずはカーゴルームについて語らねばならない。最大のライバルである「メルセデス・ベンツEクラス」の「ステーションワゴン」より、はっきり申し上げて狭い。現行Eのワゴンが640~1820リッターであるのに対して、5のツーリングは570~1700リッターである。ここにBMWのBMWたるゆえんがいまもある。荷室の広さより、カッコウがいいほうがいいでしょ、という主張である。
といって実用性が無視されているわけではない。新型では先代より容量が増え、使い勝手のよいフラットでスクエアなフロアが実現されている。ガラスハッチのみ開くのは初代以来のツーリングの伝統で、このガラスハッチがいかほどの役に立つのかは別として、ガバチョとテールゲートを大きく開けるのと、ガラス部分だけチョコッと開けるのと、選択肢がふたつあるのはよいことであろう。
ポルシェもたじたじ!?
BMWのストレート6はいまも神話である。そのなめらかなこと絹のごとし。3リッター直6 DOHCツインパワーターボは最高出力340ps/5500rpm、最大トルク450Nm/1380-5200rpmを発生する。車重はテスト車の場合1940kg。車重2t近くのヘビー級のはずだけれど、アンビリーバボーである。カタログによれば、0-100km/h加速5.1秒。「ポルシェ718ケイマン」のマニュアルと同タイムという速さを誇る。マニュアルゆえ、あっちが名人の技を必要とするのに対して、こちらは右足に力を込めるだけでよい。
車検証に見る前後重量配分は前950kg:後ろ990kgで、リアのほうが重い。ステアリングの設定が若干重めであることもあって、鼻先が軽い印象はないけれど、この重量配分に加えて四輪操舵、BMWでいうところの「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(前後輪統合制御ステアリングシステム)」の恩恵だろう、運転していてホイールベース3m弱、全長5m弱の巨体を感じさせない。
それでいて、冒頭記したごとく乗り心地が、シルキー6のごとくにスムーズなのだ。エンジンと同質のなめらかさを足まわりが持っている。重量物をカーゴルームに載せたときに対応すべく、ツーリングのリアサスペンションにはエアスプリングがおごられている。セダンのリアは通常のコイルである。ワゴンの快適性はセダンに劣る、という常識が覆されているのは、テクノロジーを積極的にそのように使っているからなのである。
唯一の悩みはプライスタグ
「いかなる状況においても、最大限のトラクション、走行安定性という四輪駆動の長所と、俊敏性を引き出すインテリジェントな四輪駆動システム」で、オーバーステアやアンダーステアの兆候を察知すると「電子制御式多板クラッチを制御し、前後の駆動力をスムーズかつフレキシブルに再配分」するとカタログで表現されるxDriveは、その文言通り、4WDであることを意識させない。箱根のような山道は試せていないけれど、曲がることをいとわない。後輪駆動のごとしである。
それでいて安定性は高い。帰り、館山自動車道を走行中、ワイパーが間に合わないほどの大雨に出くわした。キャッツ・アンド・ドッグズ、バケツをひっくり返したようなスコールで、アッという間に路面に水がたまった。それでも540i xDriveツーリングは、まるで前輪駆動車のように、という表現は明白に間違いであるけれど、気分としてはそんな感じで走り続けた。
この素晴らしき万能スポーツワゴン。問題があるとすればお値段である。車両本体価格1069万円とイッセンマンエンを超える。「E400 4MATICステーションワゴン」の1050万円よりも高い。あるところにはあるので、いらぬ心配は無用であるにしても――オプションの「メディテラニアン・ブルー」というメタリックのボディー色だけで9万円もする。
「BMWディスプレイ・キー」なる、iPhone以前にもてはやされたブラックベリーぐらいの大きさの、自動車用としては特大サイズのカギでもって車外から動かすことのできるリモートパーキングを目玉とする「イノベーション・パッケージ」が29万9000円。「電動パノラマ・ガラス・サンルーフ」が22万9000円、「ナイト・ビジョン」が30万6000円……などでテスト車は合計1169万5000円に達している。
う~む……。筆者の場合、「523dツーリング」746万円がなにかの間違いで買えちゃったりしたら、ボカぁ、幸せだな。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
BMW 540i xDriveツーリング Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1870×1500mm
ホイールベース:2975mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/5500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1380-5200rpm
タイヤ:(前)245/40R19 98Y/(後)275/35R19 100Y(ミシュラン・プライマシー3 ZP)
燃費:11.9km/リッター(JC08モード)
価格:1069万円/テスト車=1169万5000円
オプション装備:メタリック・ペイント<メディテラニアン・ブルー>(9万円)/イノベーション・パッケージ<BMWディスプレイ・キー+リモート・パーキング+BMWリモート・サービス+コネクテッド・ドライブ・サービス[BMWオンライン、BMW Apps、その他機能/ローカル検索〔Send to Car〕、Send to Phone機能、Gracenote〔MusicID〕]+BMWジェスチャー・コントロール+BMWヘッドアップ・ディスプレイ>(29万9000円)/電動パノラマ・ガラス・サンルーフ(22万9000円)/BMWナイト・ビジョン<歩行者検知機能付き>(30万6000円)/harman/kardonサラウンド・サウンド・システム(8万1000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:3606km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:232.3km
使用燃料:30.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.7km/リッター(満タン法)/8.1km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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