第79回:日本の国民車はなぜダサイ
2018.02.27 カーマニア人間国宝への道スイフトスポーツ最高!
いま日本で売られているクルマで、一番いいクルマはどれか!?
そう問われて即答できるカーマニアは、多くはないだろう。
そもそもいいクルマとは何か。価格をどう考えるか。カーマニア的にも大変な難題だ。
が、実際いいクルマに乗ると、そういった小難しいことは吹っ飛んで、「これはイイ! めちゃめちゃイイ!」と直感してしまう。恋のようなものである。
実は先日、久しぶりにそういうクルマに出会った。
スズキの「スイフトスポーツ」だ。
何がいいかを説明するのももどかしいのだが、サイズよし、デザインよし、居住性よし、インテリアよし。
このあたりはあくまで「よし」、つまり合格ライン超えで、突出ではない。
すばらしいのは走りだ。軽量な割にとてもしっかりしたボディー。スポーティーながらガチガチではない足。そしてトルクフルでパワフルでレスポンスもよく、なにもかもがしっくりくる1.4リッターターボエンジンと、扱いやすくて操作が楽しい6段MT。燃費も適度によく、現代のクルマに必須な安全装置もしっかり付いている。
新型スイスポが出たのは昨年の9月。もうずいぶん前なのだが、年が明けるまで乗る機会がなく、先日初めて乗って衝撃を受けた次第である。
その時の試乗は6段MTのみだったが、スイスポにはトルコンの6段ATもある。CVTでもAGSでもなく、トルコンだ。
国民車になれるデキ
「このクルマは日本の国民車になれる! カーマニアから一般ピープルまで誰でも満足させられる国民車にいぃぃぃぃぃ!」
ハイオク仕様のスポーツハッチを国民車に推すなど、カーマニアのひとりよがりではあるだろう。ただ、このクルマの良さを、カーマニアだけに独占させておくのはもったいない! 広く国民に知ってもらいたいし、その果実を享受してもらいたい! そのような、さらにひとりよがりな思いが湧き上がってしまった。
不幸なことに、過去日本で国民車と呼ばれたクルマの多くは、カーマニアにとっては軽蔑の対象であった。
その典型が「カローラ」だ。「レビン」や「トレノ」は別だが、カローラという車名自体が「凡庸」の象徴で、大いに軽んじられてきた。
いまでもカローラと聞いて思い浮かぶのは「役には立つけどつまらないクルマ」というイメージではなかろうか? 少なくともオシャレさんとかイケてるとかキラキラしてるねとか、そういった単語は出てこない。「カローラみたいな男」「カローラみたいな女」。そう呼ばれて喜ぶ者はまずいまい。
個人的には、『港区ではベンツがカローラの6倍売れている』(扶桑社新書)という本を出したことがあるが、これはカローラの「最もありふれた凡庸なもの」というイメージを利用した、インパクト重視のタイトルであった。
一方、欧米の国民車はどうか?
ダサイ国民車にNO!
例えばドイツ。元祖国民車は「フォルクスワーゲン・ビートル」で、その後を継いだのが「ゴルフ」。平凡どころか非凡のカタマリで、今でもカーマニアのみならず、全人類の尊敬を集めている。
フランスでは、「2CV」や「ルノー5」、「プジョー205」といった車名が思い浮かぶ。これは私が50代だからですが、どれもこれもオシャレで合理的。パリジャンの粋とでも申しましょうか? シャンゼリゼの路駐がよく似合う。もちろんカローラには似合いません。景観破壊だとすら言われかねない。
イギリスでは「MINI」。イタリアでは「チンクエチェント」。言うまでもなく名車である。今見てももちろんステキだが、現役当時も間違いなくキュートな存在だった。アメリカは「フォードFシリーズ」。これはちょっと別枠ですな。
もちろんカローラだって、初代がいま街を走っていたら、「キャー! ちっちゃくてカワイ~イ!」とはなるだろうが、それはもはやクラシックカーだからで、少なくとも私が免許を取った80年以降に限ると、街にあふれる過去10年くらいの間に生産されたカローラたちに対して、そういった褒め言葉はまず聞かれなかった。
考えてみれば、悔しいじゃないか!
欧州の国民車は名車ぞろいだけど、日本の国民車はダサイ。これは由々しき問題である。日本の国民車もオシャレでカッコよくて走りも楽しくあってほしい!
別にそんなことをずっと思っていたわけでは全然ないが、スイスポに乗って突如、そのような思いが湧き上がった。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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