カワサキZ900RSカフェ(MR/6MT)
あざといまでのザ・バイク感 2018.06.07 試乗記 2017年末にデビューするや、往年の名車「カワサキZ1」を思わせる姿でベテランライダーのハートをわしづかみにした「Z900RS」。今回は、一段とスポーティーなたたずまいを見せる、その“カフェレーサー仕様”に試乗した。ライムグリーンってぇのはどうなのよ
誰も口には出さないが、「まぁ、いいから乗って書け」がこの項におけるwebCG編集部の意向、および車種選択の方針だ。それに不満はない。いずれにせよ自分がすべきは、「とにかく書く」以外にないからだ。けれど今回のカワサキZ900RSは、こちらから「書かせてくれ」というか「乗せてくれ」とリクエストした。
なぜそんな願いを出したかというと、カワサキのあざとさを糾弾したかったからだ。いや、人聞きの悪い言葉をわざわざ持ち出さなくてもいいとは思っている。それでも大声で言わねばならぬ時がある。カワサキのZ1を30年近く所有し続けた者として。
一方的な主張を展開する前に、まずは当該車種の客観的情報を。Z900RSが発売されたのは2017年12月。それ以前から「Z1っぽいのが出るぞ」というインフォメーションが出回ったことで注文殺到となり、聞くところによると発売から半年を経ても相当数のバックオーダーを抱えているらしい。
そんな大人気を受ける形で2018年3月にリリースされたのが、ビキニカウル等のカスタマイズパーツが追加された「Z900RSカフェ」。つまり例のごとく、「いいから乗って書け」とあてがわれた今回のモデルだ。ほかに相当シブい色彩のパールストームグレーと呼ばれるボディーカラーも用意されているが、もう1色が“ヴィンテージ”という前置詞が付きながらもライムグリーンってぇのはどうなのよと、いくらがまんしようと思ったところで心の中に浮かんだ言葉が外に漏れてしまう。
さすがにいまどき2本ショックは……
Z900RSとZ900RSカフェの相違点は、基本的に外観のみ。ビキニカウルの装着に伴いハンドル位置が下げられ、なおかつ前部をタックロール仕上げにしたシートによって、Z900RSカフェの方がいくらか前傾姿勢を強いられそうだ。乗り比べる機会を与えられていないので正確なことは言えないが。
それにしてもハンドル位置を下げるために、ハンドルバーを昔懐かしいスワロー型にねじっているのを見たら、明石家さんま大先生が得意な引き笑いを押し殺せなかった。
さて、動力性能。Zというより「ニンジャ」をほうふつとさせるデザインのエンジンは、トルクたっぷりで扱いやすい。トップギアの6速に入れたままでも楽に街中を流せる。カタログの最高出力は110psなので、張本 勲師匠のごとくむちゃを正気で喝を入れれば、それなりにデンジャラスな速さを見せるだろう。
前後17インチホイールは、長めのホイールベースなのにも関わらずクイックな旋回性に寄与しているし、フロントフォークにも現代的な倒立タイプを用いているから、例えばサーキットでも満足できる走りを披露するのではないか。ちなみにリアサスペンションは、ショック本体を車体の中におさめる方式で、「外付け2本ショック? さすがにいまどき、それはないでしょう」という設計者の声が聞こえてくるようだった。
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誰がZ1を幽霊に仕立てたか?
以上を踏まえ、何に最も感心したかというと――今日的カワサキの技術をふんだんに盛り込みながら、無駄に攻撃的ではなく、または安易に守備的でもなく、あるいはそれらを足して2で割ったような中庸性とは別のところで、乗り心地を含めた振る舞い、またはたたずまいに落ち着きが感じられたところだ。
それは、「街中からロングツーリングまでオールマイティーに対応する」というような有り体の枠におさまるものでもない。では何だ。安心感? 信頼感?
言いたくなかったが言おう。“ザ・バイク感”だ。丸目のヘッドライト。長いフューエルタンク。比較的フラットなシート。そして十分なパワーとトルクを有するむき出しのエンジンにふさわしい軽快なハンドリング……。
すべては今から50年近く前に登場したZ1が持ち得ていたものだった。いくつかの二輪を乗り継いだ末に自分がZ1にたどり着いたのも、そうしたザ・バイク感に魅了されたからだ。それをカワサキはZ900RSで表現した。ほとんど復古する形で。しかし、そのザ・バイク感に普遍性があるならZ1のイメージから離れることはできないし、離れる必要もないだろう。何しろ原本はカワサキの手中にあるのだ。
だからカワサキのあざとさの本質とは、往年の名車によく似た新車を造ったことではなく、もはやエンジンがなくなろうとする時代に、「やっぱりこういう形が好きですよね?」と真顔で問い掛け、ザ・バイク感に縛られた者たちをざわつかせたことなのだ。自分に限って言えば、おそらく心のどこかでZ1に代わるものを求め続けていながら、Z1を超えるものなどないと半ば妄信的になっていたのだろう。そこにZ900RSが現れて、ものの見事に動揺した。これは、誰がZ1を幽霊に仕立てたかという話でもある。
何というか、カワサキにしてやられたようで悔しい。でも、この30年で初めてZ1を手放すことを想像した自分もいて、実に複雑な気分だ。何なら自分にしか見えない幽霊と決別して、この際、してやられちゃってもいいのかな?
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2100×865×1150mm
ホイールベース:1470mm
シート高:820mm
重量:217kg
エンジン:948cc 水冷4ストローク直列4気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:111ps(82kW)/8500rpm
最大トルク:98Nm(10.0kgm)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:28.5km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/20.0km/リッター(WMTCモード)
価格:135万円

田村 十七男
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