新世代「スカイアクティブ」の試金石
新型「アクセラ」からマツダのこれからを思う
2018.11.26
デイリーコラム
失敗が許されないモデルチェンジ
2018年11月26日(現地時間)に開幕するアメリカのロサンゼルスモーターショー。28日(日本時間では29日)には、新型「マツダ3(日本名:アクセラ)」の世界初公開がアナウンスされている。今回のロサンゼルスショーは、このデビューが最大のトピックと言っていいだろう。なぜなら、マツダの今後10年は、この新型アクセラの出来次第といえるからだ。それには2つの理由がある。
第1には、アクセラがマツダを支える大きな柱のひとつだからだ。2017年4月から2018年3月までのマツダの世界販売は約161万台。その中で最も売れたのが約44万5000台の「CX-5」、次いでアクセラの約44万2000台。この2車種だけでマツダの世界販売の半分以上を占める。つまり、主力モデルであるアクセラは失敗の許されないクルマなのだ。新型の評判が悪ければ、これからのマツダに暗雲が立ちこめることを意味する。
もうひとつの注目の理由は、この新型アクセラからマツダの次世代技術が採用されるからだ。振り返ってみれば、現在のマツダの好調は2010年発表の「スカイアクティブ」テクノロジーから始まった。燃焼効率を追求した高圧縮ガソリンエンジンと低圧縮のディーゼルエンジンや、人馬一体の走りを実現する新世代シャシーなどを発表し、世界を驚かせた。正直、それ以前のマツダはリーマンショックによる影響もあって不調そのもの。毎年数百億円の赤字を垂れ流し続け、倒産さえも噂されていた。まさに崖っぷち。そこで発表されたのがスカイアクティブテクノロジーであり、それがマツダの起死回生の一打となった。
2012年にはエンジン、トランスミッション、シャシーと、クルマの隅々にまでスカイアクティブテクノロジーが採用されたCX-5がデビュー。その後に続くマツダ車たちは第6世代商品群と呼ばれ、どのモデルも非常に高い評価を得た。つまり、現在のマツダの好調さの根源には、スカイアクティブテクノロジーがあると言えよう。
そのスカイアクティブテクノロジーが新世代に進化する。新世代の内燃機関である「スカイアクティブX」、新世代のプラットフォーム、新世代の「魂動」デザイン、新世代の「マツダコネクト」、それらが新型アクセラから世に送り出されるのだ。新世代技術の評判はアクセラだけでなく、今後のマツダ車すべてに影響する。だからこそ、ロサンゼルスショーで発表される新型アクセラが重要となってくるのだ。
上々の前評判に、高まる市販車への期待
では、実際に新世代技術はどのようなものなのか? 実は昨年(2017年)に、メディア向けに開発途中の次世代技術の体験会が開催され、そこで短い時間ではあったが次世代モデルの試作車のハンドルを握ることができた。
最大の注目は、次世代エンジンのスカイアクティブXだ。これは夢といわれていた予混合圧縮着火を現実のものとしたもので、燃料を非常に薄い状態で燃焼させることで燃焼温度を下げて損失を低減。燃費がよく、しかもレスポンスよく、高回転まで気持ちよく回る。点火プラグで小さな種火を作り、着火を制御するのも驚きだ。圧縮着火には点火プラグが必要ないのが特徴のはずなのに、逆に点火プラグを使うという逆転の発想だった。開発の試作車は、エンジンの振動と音がうまく抑え込まれており、まるで排気量の大きい自然吸気エンジンを思わせるフィーリング。新世代のスカイアクティブXのポテンシャルの高さを印象づけるものだった。
また、試走では新世代プラットフォームの出来の良さにも驚いた。人馬一体のハンドリングの楽しさはそのままに、よりフラットで快適な乗り心地を実現していたのだ。新世代の技術は、ボディーとシャシーだけでなく、タイヤからシートまでを一体として人間中心の走りを実現するという。新技術のスカイアクティブXがなくとも、このプラットフォームだけでも新世代モデルは十分に魅力的だと思うほどだった。
ちなみに新世代の魂動デザインは、昨年の東京モーターショーで披露された「マツダ 魁 CONCEPT(マツダ・カイコンセプト)」と「マツダ VISION COUPE(マツダ・ビジョンクーペ)」の2台のコンセプトカーの延長線にあると考えるのが自然だろう。こちらも非常に高い評価を得ており、それが新型アクセラのデザインの基本となるはず。
このように、新型アクセラに採用される新技術もデザインも、前評判は上々である。それらがどのような形で市販モデルとして結実するのか? その姿を目にすることが楽しみで仕方ない。個人的には、これほど胸躍るモーターショーは久しぶりだ。
(文=鈴木ケンイチ/写真=マツダ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
-
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞くNEW 2026.10.12 アルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは?
-
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く 2026.10.9 パナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。
-
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る 2026.10.8 スバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。
-
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか? 2026.10.7 いよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。
-
人件費不要の自動運転タクシー導入! で、料金はどうなる? 2026.10.5 運転手がいない完全無人の自動運転タクシーが、2027年中に国内で運用される見通しとなった。では、われわれユーザーが享受できる具体的な恩恵は? 望ましい料金とは? 清水草一はこう考える。
-
NEW
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.10.12試乗記ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。 -
NEW
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く
2026.10.12デイリーコラムアルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは? -
NEW
第346回:EVかいわいで辰巳かいわいへ
2026.10.12カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の「サクラ」と「アリア」、そしてホンダの「スーパーONE」と、国内メーカーがリリースする3台のEVに立て続けに試乗した。三者三様の走りを味わい、リアルに感じたことをカーマニア目線で報告する。 -
スズキ・ジムニー ノマドFC(後編)
2026.10.11ミスター・スバル 辰己英治の目利きスズキが誇る本格オフローダー「ジムニー ノマド」に、“ミスター・スバル”こと辰己英治さんが試乗。クラシックなクロスカントリーモデルの舗装路での振る舞いは、かつてスバルでクルマの走りを鍛えてきた彼の目にどう映るのだろうか? -
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション
2026.10.9webCG Moviesホンダを代表するSUV「CR-V」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきたエンジニア、多田哲哉さんが試乗。その仕上がりにどんなことを思ったのか、動画でリポートします。 -
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く
2026.10.9デイリーコラムパナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。


































