第115回:トヨタさまの猛省を促したいでちゅ
2018.12.11 カーマニア人間国宝への道カーマニアだけが知らない世界
近所の東京トヨペットで、「アクア クロスオーバー」の試乗車に乗り、「やっぱり『アクア』だ~い好き♡」と思った私だったが、担当者から「アクアからアクアに乗り換えるお客さま、多いんですよ」という話を聞いて、驚倒したところまで書いた。
いったいナゼ、多くの国民の皆さま(そんなに多くはないと思うけど)は、わざわざアクアからアクアに乗り換えるのか!?
いや、考えてみれば自分も、「フェラーリ328GTB」から「328GTS」に乗り換えたことはある。確かにあるが、あの時は日本仕様と欧州仕様のエンジンフィールのあまりの違いに驚倒し、買い換えないわけにはいかなかったのだ。
さらに言えば、現在乗ってるのも328GTS(通算3台目)。さらにさらに言えば、「512TR」も都合3台乗り換えている。
「TR」の場合、最初は赤で、半年後に白の出物があったのでそれに乗り換えたのでした。んで10年くらいしてもう一度買いました。今度はワインレッドでした。
しかしそれとこれとは違う! フェラーリは人生を賭ける対象だからして、色違いとかエンジンフィール違いだけで十分に買い換える理由になるが、アクアからアクアじゃマニアックすぎませんか!?
担当者(以下 担):ひとつには、残価設定ローンのお客さまのケースがありますね。
清水(以下 清):えっ?
クルマは慣れているものが一番
担:残価設定ローンの期間が終わった場合、残金をお支払いいただくか、おクルマをお返しいただくか、お乗り換えいただくことになるじゃないですか。で、お乗り換えいただく場合、「やっぱりアクアはよかったから」ということで、再度アクアをお買いになるお客さまが結構多いんです。
にゃ、にゃるほど~~~~~!
言われれば確かに、それはいかにもありそうだ。しかもそういうお乗り換えの場合、「月々のお支払額は、以前とまったく同じで大丈夫です!」というような感じになるのだろう。
となれば、3~5年間乗った愛車への愛着もあるだろうけど、それに乗り続けるために残額を一括払いするより、新しいアクアに乗り換えるほうを選んで当然だ。やっぱ女とクルマは新しいほうがええのうウッヒヒヒ~! みたいな感じで。別にアクアに限らず、「プリウス」でも「アルファード」でも「エスクァイア」でも!
担:あと、アクアの場合、今年から歩行者も検知できる自動ブレーキが付いたんですよ。それで、自動ブレーキがまた付いていなかったアクアから、新しいアクアへのお乗り換えが多いんです。
それもわかる~~~~~! 私も齢(よわい)五十六。いざという時は、藁(わら)にも自動ブレーキにもすがりたいでちゅから!
もちろんですね、カーマニアの場合、自動ブレーキの有無も大事だけど、どーせ買い換えるなら次は違うクルマにしようと思いますよね。同じフェラーリを3台×2組買ってる自分が言うのもなんですけど。
でも、でもでも、もしも自分がカーマニアじゃなかったら、「次も慣れてるクルマがいい」みたいなことを思うことは十分考えられる。私だって、仮に冷蔵庫が壊れた場合、置き場所の大きさとか考えて、「できればまったく同じ冷蔵庫が欲しいんだけど」ってことはありそうだから!
大トヨタにモノ申す
担:アクアからアクアにお乗り換えの場合、ボディーカラーも希望ナンバーも同じにされる方がいらっしゃいますよ。
清:えええええーーーーーーーっ!?
担:たぶん、買い換えたことをご近所さんに気づかれたくないんだと思います。
そこまでひっそりとしたクルマの買い換えがこの世に存在するとは……。世間は広い! トヨタワールドは広大だ! わしもまだまだ甘ちゃんよのう。
ただ、アクアの自動ブレーキは、まだ全車標準装備ではない。ようやく今年になって歩行者検知機能付きになったというのもメチャメチャ遅れてる。トヨタは自動ブレーキに関して、相変わらず後進メーカーなのである。
未曽有の高齢化に襲われているわが国の量販車として、アクアも早急に「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備にしてほしいものでちゅ!
それに、つい半年ちょっと前までは、アクアの自動ブレーキは歩行者検知機能のついていない「トヨタセーフティセンスC」で、やっぱ上級グレード以外はオプションだった。
新型「N-BOX」は、軽なのに全車「ホンダセンシング」標準装備(歩行者検知機能付き)で登場したわけなので、これは負けて当然じゃのう。
いや、トヨタのお客さまの多くは、自動ブレーキは自動ブレーキで全部いっしょ、みたいな感じではなかっただろうか。大トヨタが自動ブレーキの後進メーカーだなんて、夢にも思ってないんじゃないか。
ということで、トヨタさまの猛省を促したいでちゅ。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな 2025.9.22 清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている?
-
第318回:種の多様性 2025.9.8 清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。