第134回:東北中央道を知ってるかい?
2019.05.28 カーマニア人間国宝への道ツギハギだらけの東北中央道
皆さん、高速道路は好きですか。私は大好きです。クルマと同じくらい好きです。カーマニア兼高速道路マニアなのです。
マニアなのでいろんな高速道路を走りたい。海外の高速道路もかなり走ってるけど(確か合計20カ国)、母国・日本の高速道路に一番関心がある。まだ走ったことのない路線は当然走ってみたい。高速道路の構造なんて数パターンしかないのでそんなに代わり映えしないけど、それでも一応走ってみたいのです。
今回私は東北地方に所用があり、自家用車で参りました。で、その帰路。フツーに東北道で帰ってもよかったんだけど、せっかくなので東北中央道を走ってみることにした。なにせまだ東北中央道を走ったことがなかったので!
東北中央道ってなあに? と思われる方も多いでしょう。東北中央道とは、福島県相馬市で常磐道から分岐し、福島市、米沢市、山形市、新庄市、湯沢市と通過して、横手市で秋田道に合流して終点となる高速道路です。マイナーなローカル線だけど、268kmのうち現在199kmが何らかの形で開通していて、全線開通する日もそう遠くはないのですよ。
ただ、実情はものすごいツギハギ。バイパスあり高速ありで、有料区間(3区間計74km)と無料区間(残りの区間)が混在するまだら高速だ。
有料道路事業としては採算が取れないので建設が後回しにされ、地元の要望により税金でとびとびにバイパス(無料の自動車専用道路)を造っているうちに、道路公団民営化によって、05年から「新直轄」という新たな税金で造る無料高速の枠組み(国と地方の建設費負担割合は3:1)ができ、東日本大震災の復興道路(相馬~福島間。全額国費で建設し料金無料)も加わって、それらが混在した結果こうなったという、マニア的には非常に興味深い路線なのです。
暫定2車線の不条理
東北中央道は無料区間が長い。一方東北道は全線有料。つまり横手から東京(細かく言えば、川口JCT)まで走る場合、秋田道&東北道経由(ETC利用で普通車1万0700円)よりも、東北中央道を通ったほうが安上がりになる(同8400円)。
といってもまぁ大した差ではない。それに東北中央道は全線暫定2車線(片側1車線)なので、制限速度は基本的に時速70km。途中に目的の観光地があるとかなら別だが、そうじゃなかったらわざわざ通る価値はない。だからこそマニアは走るのだ。
ということで、横手ICから東北中央道へGO!
まずは湯沢横手道路だ。東北中央道なのになぜ湯沢横手道路? というと、もともとは湯沢横手道路だったのを東北中央道に組み入れたからとでも申しましょうか。湯沢までは有料(460円)なので交通量が非常に少ないが、湯沢から無料になるのでかなり増える。そりゃそうだろう、こんなド田舎(失礼)でわざわざ高速走ったって、大して時間短縮なんかできないんだから。地元の人は「タダなら走るけどカネ取るなら走らないよ」となって当然だ。
雄勝こまちで湯沢横手道路は終点となり、バイパスをはさみつつ、国道13号線で秋田・山形県境を越える。交通量はごく少ないので特に問題はない。でもそれなりに時間はかかる。
新庄北から再び東北中央道(別名新庄北道路&尾花沢新庄道路を含む)だ。再度終点となる大石田村山までは料金無料。国道に比べるとやっぱり高速はラクで疲れが少ないっす!
で、大石田村山から14kmほど国道になり、東根北ICから再び高速。東根ICから米沢北までは、NEXCO東日本の有料高速道路(1840円)だ。構造的にはなんら変わらない暫定2車線なんだけど、無料区間と有料区間があるってのは本当に不条理だ。しかも暫定2車線でも4車線と料金水準が同じなんだからヒドイ。日本の高速道路は、総延長の約3割がこの暫定2車線なんだけど、この不条理はなんとかしなくちゃならん。
使われないなら安くすべき
有料区間に入ると、再び交通量はガックリ減った。使われない公共施設ほど無意味なものはない。少なくとも料金を大幅に下げないとダメだ。3分の1くらいが適当ではないか。そうすりゃ交通量は5割くらい増えて、料金収入の減少は5割に抑えられるはず。というかもともと料金収入なんて微々たるもんなんだから、タダにしたほうがいいのは間違いない。しかしタダにするためには税金の投入が必要。税金の使い道は他にも山ほどあるし、コレにわざわざ使うのも意味が薄い。結局そのまま放置ということなる。無念。
山形上山から南陽高畠までは、この4月13日に開通したばかりなので道路はピッカピカ! 暫定2車線だけどセンターラインにガードロープを設置した区間もある。暫定2車線は正面衝突事故が多いのでその対策なのですが、これはないより絶対にあったほうがいい。まぁこれだけ交通量が少ないと、正面衝突のリスクも低いっちゃ低いですが……。まさにムダな高速道路そのもの。
が、米沢北から福島JCTまでは、新直轄の無料区間なので、途端に交通量が増えた。
この区間は、17年前、高速道路が必要か否かを実感するために、国道13号線を走って平均速度を割り出したが、国道でも平均時速67kmで走れてしまった(違反です)。つまり制限速度70kmの高速道路なんざまったく要らないという結論になりました。
でも、料金がタダならこうしてそれなりに使われる。税金の使い道としてはコスパは低いけど、有料でまるで使われないよりははるかにイイ。
このようにして不肖ワタクシ、東北中央道を横手ICから福島JCTまで走破しましたが、なんだか疲れた……。やっぱりツギハギの暫定2車線は疲れるなぁ。
福島JCTから東北道に合流したら、4車線高速のラクチンさに涙が出そうになった。やっぱり高速道路は4車線ないとイカンね! 少なくとも高いカネ取るんだったらさ。タダなら完成2車線(最初から2車線の設計)でも可。できればどっちかにすべきだ。
ちなみにこの前日には、三陸道と釜石道を走ったんだけど、復興道路として税金で造ったこともあり、大部分が料金無料の完成2車線(一部中央分離帯付き)だった。これは非常に合理的。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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